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スピッツで蘇る記憶(vol.1 冷たい頬)

ずっと書いてみたかった

わたしとスピッツ

わたしにとってのスピッツとは

人生の、ある地点でのスピッツ

そのときに聞いていた曲が持つ意味

そしてゆらゆら蘇る記憶


冷たい頬

何から書こうか、と思って一番先に思い浮かぶのが、やっぱりこの曲

スピッツで何の曲が好き?って聞かれたら、大体「冷たい頬」って答えてる

映画を観たら、本を読んだら、分かりにくい絵を見たら すぐに解釈を求める

自分はこう思った

みんなは?

検索して、誰かの「解釈」を読んで、納得したり、腑に落ちなかったり、その過程で作品をさらに好きになったり、嫌いになったり そうしてこうして消化する

自分の感覚が間違っていないか確認する

その誰かの「解釈」を自分のものとして腹落ちさせる

まあそんな不純な動機でやたら解釈を求めがちな自分だけど、スピッツの歌詞だけは、極力、そのままにするように、している

壊れながら 君を 追いかけてく
近づいても 遠くても 知っていた
それが全てで 何もないこと 時のシャワーの中で

冷たい頬 歌詞

21歳の春、カラオケバイトの飲み会解散後、終電は多分まだあったけど、歩いて帰ることにした。そのまま帰るにはちょっともったいないような気分だったし、調べたら1時間ちょっとで帰れるみたいだったし、なんだか今日ならいけそうな気がしたから。バイトの後輩(スピッツ好き)が、近所に住んでて、一緒に歩いちゃいますかーてなって、一緒に歩き出した。

悩んでいた。その時わたしはとても悩んでいた。悩み過ぎて、壊れかけていた。だから久々の飲み会で、ふわっとなって、そのまま帰るにはちょっともったいないような気分になってしまった。

壊れながら、追いかけたことが、わたしはある。

追いかけてはいたけど、それはわたしの一方的なものではなくて(ないと思っていて)、お互いに、壊れながら追いかけていた。でも結局、それが全てて、何もなかった。何も残らなかった。そして完全に、壊れてしまった。

波の音を聞きながら、歩いて、歩いて、大した相槌も打たれなかったけど、それはそれでよかった。どうせ正論は聞いてられなかったし。
山を越えて、歩いて、歩いて、ズボンは泥だらけになってたけど、それはそれでよかった。心はもっと汚れてたし。

1時間ちょっとで着くはずだったのに、夜明け前、3時くらいになっていたかな。わたしの家と、後輩の家のちょうど真ん中らへんにある公園にはシロツメクサがわんさか生えている。かわいいシロツメクサ。

さよなら僕の かわいいシロツメクサと
手帖の隅で 眠り続けるストーリー

冷たい頬 歌詞

後輩に、冷たい頬の、この歌詞が好きなんだよね、と言うと、意味分かんないです。と返ってきた。意味分かんなくてよかったーと思った。そして、意味分かんないことを意味分かんないですと伝えてくれる人でよかった。

シロツメクサって要は雑草なのに、壊れながら追いかけちゃうくらい大切な人を「かわいいシロツメクサ」と呼ぶその歪みが、わたしは好き。わたしもそんな風に愛されたい、歪んだ愛が、ほしいと思った。

この時から、私の理想のプロポーズは、公園の原っぱで、シロツメクサの花束と、もしくは、四つ葉のクローバーと共に、となった。

翌朝、母に「なんでこんなにズボンが泥だらけなの!?」と怒られたことまで、ちゃんと覚えてる。

スピッツって、すごいな。

不安になったら頬を触ってみる。大丈夫、あったかいよ。

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