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マチアプ男が紹介してくれた女の子と親友になって3年後に結婚を祝った日の話

最も完璧な週末を過ごした。4月の3週目のおはなし。

土曜日

私は友達が少ない。少ないことにコンプレックスはない。数少ない友達は、私になんらかの魅力を感じ、離れないでいてくれる。それだけで充分満たされている。

そんな数少ない友達の1人、ナオちゃんは、社会人1年目の3月に出会った。

マッチングアプリ芸人全盛期だったあの頃、ちょっと変な男とマッチした。
サバンナの八木に似た、頭のネジが17本くらい外れた男。

当時の私が贈るいいねの絶対条件は、プロフィールが面白いことだったから、きっと奴のプロフィールも面白かった。

毎回信じがたい量のお酒を飲み、元カノへのねっとりした未練を延々と唱え、顎マスクではなくつむじマスクをしたり(まじで隣を歩きたくなかった)、突然服を脱ぎ出したり、おとなしくなったかと思えば、タバコを2本鼻に刺して昇天していたり、隣テーブルの熟年夫婦と親しくなって4人でカラオケに行った夜もある。翌日「ちゃんと帰れたか?」と送ったLINEに1週間既読がつかなかった。

少しだけ心配した。

結局そのあと「解散後道端で寝ちゃってスマホも財布も無くしたけど、ついに復活‼️」と痛快な連絡をよこしてきたのも懐かしい。「あと仕事辞めたわ」と「あと」に繋げていいはずのない補足をしてきたのも懐かしい。

字面だけみると面白い男、けど実際話すと結構つまらない男。

つまらないけど、そのつまらなさが心地よくて、およそ3ヶ月間、週に1回くらい飲みに行ってた。
って言っても、週5で誘われての1回だから、当時はそんなに多いと思ってなかった。

私とその男の間に、共通の話題なんて何もないから、話すことといえば「あれ美味い」「これは不味い」「俺の元カノが」「しょーもな」くらい。

そいつがある日「あんたに紹介したい女がいる」と言った。

「Tinderでマッチした女の子が、あんたと気が合いそう」

え、何それ。
会いたい。

そうして出会ったのが、ナオちゃんである。

男の読みは的中して、私とナオちゃんは恐ろしく気が合った。「あいつ、めっちゃつまんないよねー」と盛り上がったのが一番最初の最初で、それからほぼ毎日LINEして電話して「てか今日暇?」で電車に飛び乗って落ち合ったりする。
住んでる場所は割と遠かったけど、そんなの気にならないくらい心の距離は近かった(と私は思っている)。会ったら公園でずっとくだらないおしゃべりして、マッチングアプリ用の写真を撮り合ったりして、幸せになろ〜な〜〜〜って肩を組んで大声で笑ったりした。

例の男とは自然と会わなくなった。
ナオちゃんと遊ぶ方がずっとずっと楽しかった。

ふたりで散々バカな遊びをし尽くした後、ナオちゃんには彼氏ができた。

彼氏になる前、いい感じの人がいるって言われたときは、正直とてもとても寂しかった。
会ってほしいって言われて、のちに彼氏になる男の同僚も交えて4人で会った。

この人にならナオちゃんを取られても仕方ないなーと思った。

私の目の前でナオちゃんは「で、どうするの?付き合うの?」と聞いて、のちに彼氏になる男は「付き合って」と言った。

ナオちゃんとはそれまでみたいに遊ばなくなった。

でも私は毎日、フォロワーがナオちゃんしかいないTwitter(現:X)に、戯言をずっとずっと垂れ流していたから、ナオちゃんは常に私の近況を知っていたし、時々アドバイスをくれたり、時々一緒に怒ってくれたり、時々私のために悲しんでくれたりした。

そんなナオちゃんが、先日結婚した。
そして4月はナオちゃんの26回目の誕生日だったから、盛大にお祝いをしたくて、代官山・自由が丘ぶらぶらプランを立てた!

11:30 代官山駅で待ち合わせ

バカおしゃランチ。カジュアルなフレンチコース。こんな店でも変わらず私たちはずっと下品な会話をしてた。

パンを2つおかわりすればよかったって嘆くナオちゃんがとても可愛かった。1つでよろしいですか?って聞かれて、いや2つくださいって言える人はなかなかいないよ。私のを1つあげようとしたら、全粒粉のやつがいいからいらないって言われて最高だった。ナオちゃんのこういうところが好き。

14:00 代官山周辺の雑貨屋巡り

最近カラフル雑貨にハマってる。
手のひら2個分の牡蠣の置物が可愛かった。
(紙粘土で作れそう)

ナオちゃんと私はていねいな暮らしへの解像度が同じで、雑貨屋巡りがとてもたのしい。目に入るあらゆるものにあーだこーだ言いながらどんどん巡る。

ピン留めしてなかった店もいくつか立ち寄った。

15:00 自由が丘へ移動、パン屋へ


甘いのとしょっぱいの3個ずつ買って、近くの自由が丘公園へ。
全然映え公園じゃなかったけど私たちはそんなの気にしない。だって下世話な話をするだけだもの。

桜は咲いていなかったけど、桜の塩漬けが乗ったデニッシュパンを食べたから、これもお花見かな。気づいたら1時間半経ってた。

16:45 自由が丘周辺の雑貨屋巡り

刺さった・・・。お香立てを買った。落ちる灰を、意味あるものにしてくれるところに惹かれた。

人生でいちばん最初に買った、ノワゼットのお皿が売っていてアガった。同じシリーズのひとまわり小さいやつも欲しくなったけど、それ以上に心を鷲掴みにされた六角形のお皿を2枚買った。無意識に2枚手に取ってたけど、一緒に使う誰かのことをこんなにも自然に思っていることに笑ってしまった。

あーほしいかも、いやでも使うか?ってもので溢れたお店。ナオちゃんはここで小さいカゴを買ったんだけど、付いてた値札とお会計の金額が違う!って嘆いてた。いつもは毒吐くのにこういうときは怒らないのが本当に彼女の魅力。優しくて可愛い人。

代官山2件目のザパディドゥと同じものが多かった。ここでロッカーの魅力に気づく。家にロッカーあったら面白いよなーというアホな理由でめちゃくちゃロッカーが欲しくなる。家に帰ってジモティーを漁ったけどあんまりピンと来なかった。Amazonもみたけどもっとピンと来なかった。

新品じゃダメなんだよな。ちょっとした傷や凹みがほしい。人間と同じ。

17:45 食前のデザート


アイス魔人であるナオちゃんチョイスのアイスクリーム屋で、私は日向夏のジェラート、ナオちゃんはミルクのアイスを食べた。
アイスの写真を撮りながら、画角に婚約指輪が映るのが嫌なんだよな〜とナオちゃんは言っていた。
私なら絶対敢えて映したりするだろうなと恥ずかしくなった。

ナオちゃんはインスタで入籍報告をしないしするつもりはないと言う。自分のいない場所で、昔同じコミュニティにいた人たちが「そういえばあの子結婚したよね」と話されるのが嫌だと言っていた。面白い感覚だと思った。

私は、結婚したら半年後くらいにしれっとそういえば結婚してました、みたいなことやりたい。ちょっとダサいか・・・。

18:00 スペアリブともち米のリゾット

今はスマホで注文の店が多くなってきたし、その方が便利だと感じる一方で、紙のメニューを廃止するのはどうなんだい?!やっぱりメニューは一緒にめくりたいよね???!!!!頼むから併用してくれ!!!!!

サラダとスペアリブともち米のリゾットを食べた。そして酒1杯と水5杯くらいで2時間半居座らせてくれた。

野毛で飲む時はいつも5軒ハシゴしたり、とにかく体を張って飲酒してたあの頃がはるか昔に感じる。実際3年前というのは、はるか昔のことなのか。

本当におめでとう。友達でいてくれてありがとう。結婚して、友情の形がまた少し変わってもいい。これからも偏差値0の会話をたくさんしようね。

その夜、PayPayに通知が来た。


(解約済みユーザー)さんから受け取り

130円

アカウント変えるから余ったのあげる



それは3年ぶりの、例のつまらん男からだった。

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