ゔぉーぐ

これ以上ファッション誌を休刊させないために

「お洒落したい!と刺激を受けるものは何ですか?」

 私は中学時代から変わらず、紙媒体の「ファッション誌」です。というより、以前は雑誌しかお洒落の参考になるものなんてありませんでした

 少しだけ私の経験談を。中学2年の時、電車の吊り広告で表紙を見て一目惚れし、初めて「Zipper」(祥伝社)を買いました。1ページめくってみると、目に入ったのは資生堂の広告。その時“ファッション誌を読んでいる”自分が少しだけ、いやかなり大人になったと嬉しく思いました。その時の感情は、今でもよく覚えています。

   (服を好きになるきっかけをくれた「Zipper」 2009年12月号)

  当時の原宿系の女の子の間では、読者と距離の近い「読者モデル」が憧れの的でした。だから当然、読者モデルの私服を見るためにファッション誌を買う。彼女らの、環境のためでも誰のためでもない“自分のためのお洒落”を楽しむ姿に憧れ、いつも食いつくように読んでいました。それから、自分も女の子に影響を与える読者モデルになりたい!そんな未来像を描いていたものです。

 ところが、大人になった今の時代はどうでしょう。


  ファッション誌の売上は年々低迷し、有名ファッション誌が次々と休刊。(「JILLE」「SEDA」など)歴史のあるファッション誌でさえも月刊から季刊に。(「DRESS」「Gina」など)その他の雑誌は、豪華な付録やサイズのバリエーション別販売など、売れる方法を試行錯誤しながらなんとか生き残っている状態です。

 ファッション誌が読まれなくなった原因。

   それは、紛れもなくインターネット/SNSの普及ですよね。


 今や、編集チームが労力と時間をかけて作り上げた“ファッション誌の1ページ”より、個人がほんの数秒間で撮影しアップした“SNSの投稿”の方が需要が高いのが現実。実際に、“スタイル抜群なモデルがハイブランドを着こなしたスタイル”よりも、SNSの投稿による“ごく普通の一般人が発信したプチプラブランドを高見えさせるスタイル”の方がよっぽど参考になるという意見が周りでも多いです。

 その脅威となるSNSの中でも、特にファッション誌にとって関連性が高く大敵となるのが、人気が根強いInstagram。最近ではファッション誌であるのにも関わらず、「インスタ映えスポット」「映える写真の撮り方」といったインスタありきの特集がよく組まれているのを目にします。そればかりか、雑誌の付録は盛れるライトや撮影する際の背景シートなど、インスタ映えするためのツールが増えています

  (OLのファッション雑誌のはずがインスタの特集が多い「CanCan」2017年7月号)


 つまり、今のファッションメディアのパワーバランス
(あくまで極論ですが…)


 Instagram>ファッション誌


 といえます。

 大手出版社が次々とWebメディアなどのデジタル事業に注力しつつあるのも、当然のことでしょう。しかし、「Webメディア」の部分だけを抜き取ると、IT企業によるメディアにはまだまだ叶わないような気がします。

 例えば、女の子向けのWebメディアで人気の高い「MERY」。その情報発信のスピードと量を見てみると、一目瞭然。また、ファッション誌のようにメインターゲットやコンセプトにこだわらず、常に読者の目線から企画を考えられるのも大きな強みです。



 それならば、出版社はWebメディア事業に完全移行せず、“紙媒体”のファッション誌を盛り上げることに尽力すべきなのではないでしょうか。つまり、InstagaramやWebメディアと対等になろうとせず、ファッション誌の長所を生かして復活を遂げよう!ということです。

 そのためには、今すぐコンセプトを考え直すことが必要です。そのが、以下の3つになります。

①雑誌の世界観を重視。イメージでの差別化


 「オリーブ」の専属モデルであった市川今日子さんは、2018年6月号の「GINZA」のインタビューで、雑誌についてこんな風に話しています。

「わたしは、雑誌にはちょっと夢を見たいんです。実用的な雑誌もいいけど、夢を見られる雑誌があってほしいなって、ずっと思っています」

  

「ユニクロ・GUの着こなし」や「プチプラメイク」などの実用的な特集は、確かに需要はあります。しかし、情報社会となった今、そんな情報はインターネット上に溢れるほどあります。だったら視点を変え、「モノとして残る」紙媒体の特徴を最大限に生かす方法を考えるのはどうでしょう。例えば、ファッション誌を永久保存版のものにさせるために、写真やディレクションのクオリティを上げることも1つの手だと思います。

 その成功例として挙げられるのが、2018年5月に隔月刊化した「装苑」(文化出版局)です。「装苑」は、月刊から隔月刊化にすることで、これまでのオリジナリティを強化し世界観を確立させています。つまり、これは愛読者にとっての“長く見続けられる夢”そのものなったと言えるのではないでしょうか。

  (新しい“ファッション写真”を生み出した「装苑」2018年7月号)


②読者の声を重視。体験を通したコミュニティ形成を


 これは、読者による読者のためのファッション誌を作り上げるという方法。インターネットの普及とともに情報の選択肢が増えた今、読者の声に沿わない広告記事ばかりだと、読者はどんどん離れていきます。では、読者に寄り添ったファッション誌にするにはどうすれば良いのでしょう。

 例えば、お洒落ママ雑誌の「nina's」(祥伝社)では、誌面作りの協力・SNAP撮影参加・お試しモデルなどを一般人から募集しています。

 この方法は「nina's」以外の雑誌でもよく見かけますが、イマイチ盛り上がりに欠けているように感じます。それは、募集という形の受け身体勢をとっているからだと思います。「私たちの雑誌に載ってみたいでしょ?」みたいな。まずはファッション誌の世界観にふさわしい一般人をあの手この手で探し出し、多くの意見を聞き入れることが必要だと思います。

 次の方法として挙げられるのが、雑誌の世界観を「読む」から「体験する」ことに変え、読者の定着を図れるイベントです。
 先日、「FUDGE Holiday Circus」というイベントに行きました。これはお洒落なフードや雑貨・洋服などに1つの場所にまとめ、「FUDGE」の世界観を体験できるというもの。前の記事で、人々の関心は「ファッション」から「ライフスタイル」に変化していると書きましたが、まさにこういうことかと実感。お洒落な空間にいることで得た充実感は、中学の時に雑誌を初めて読んだときの喜びとすごく似ていました。


    (2日間大盛況となった「FUDGE Holiday Circus」の様子)

 よって、何が言いたいかというと


 出版社のイベントは、もっと定期的に開催すべきです!

 

 月に1回、いや毎週に頻度を増やして読者のライフスタイルの1部にしてしまえば良いのです。また、イベントを通して読者同士のコミュニティを形成させるのも良いでしょう。まだまだWebメディアよりもネームバリューが高いのがファッション誌の強み。魅力的なイベントで読者をかき集め、新しい読者参加型のファッション誌を作っていくことも方法の1つとして考えるべきです。



③取材力・編集力を重視。情報の質を高める


 ファッション誌の一番の強みは、やはり圧倒的な取材力・編集力だと思います。今でこそ培ってきたそのノウハウを生かし、インターネット/SNSによる情報との差を見せつけるべきだと思います。

 編集力の差を見せるためにはまずは企画。企画を作る上で忘れてはいけないこと。それは、人々の関心は常にSNSの情報に向けられていること。よって需要のある特集を作るためには、「SNSから企画を生み出す」ことが絶対条件であるといえます。

 例えばガーリーな女の子向け雑誌の「bis」(光文社)では、人気のアイドルだけでなく、インスタで有名な一般人をモデルにし、モデルの幅を広げています。SNSの人気者を直ちにキャッチし特集に取り上げることは、光文社の編集者の取材力が生かされているのではないかと思います。

 ただし、「bis」の人気の高さはそれだけではありません。「bis」では可愛い洋服だけでなく、ダイエットやモテ方法といった読者のお悩み解決系のリアルな特集も充実しています。

 このように、1冊の中にギュッと質を高い情報を盛り込むことで、インターネット/SNSとの差別化を図ることも重要です。


 以上3つ上げていきましたが、まずは書店までファッション誌を買いに行き、貴重な時間を使ってまでも読む価値を今一度提示しなければ何も始まりません。

 そして時代の流行ばかりにとらわれず、「ファッション誌のアイデンティティ」に溢れた企画を生み出していくことが大切だと思います。


ファッション誌の終焉を迎えないために


こちらもとても参考になるので読んでみてください。


続く


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