国家戦略特区

▼〈加計学園の新学部「総理のご意向」 文科省に記録文書〉(2017年5月17日05時00分朝日新聞デジタル)

〈安倍晋三首相の知人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)が国家戦略特区に獣医学部を新設する計画について、文部科学省が、特区を担当する内閣府から「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向だと聞いている」などと言われたとする記録を文書にしていたことがわかった。/野党は「首相の友人が利益を受けている」などと国会で追及しているが、首相は「加計学園から私に相談があったことや圧力がはたらいたということは一切ない」などと答弁し、関与を強く否定している。/朝日新聞が入手した一連の文書には、「10/4」といった具体的な日付や、文科省や首相官邸の幹部の実名、「加計学園」という具体名が記されたものもある。加計学園による獣医学部計画の経緯を知る文科省関係者は取材に対し、いずれも昨年9~10月に文科省が作ったことを認めた。また、文書の内容は同省の一部の幹部らで共有されているという。〉

※この加計学園の問題そのものは、3月にすでに週刊誌が報道し、国会で質問されている。森友学園とは動いたお金の桁が違う。朝日新聞の報道は「文科省関係者」が証言しているところがポイント。加計学園の加計孝太郎理事長は安倍晋三総理が「腹心の友」と呼ぶ40年来の友人だそうだ。

ここでは「月刊日本」5月号の特集「国家戦略特区に群がる政商たち――平成の官有物払い下げ事件」の要旨を紹介しよう。まずリード文から。

〈今治市は獣医師養成系大学の誘致を目指し、2007年から2014年までの間に15回にわたって申請したが、結局設置は認められなかった。/ところが、2015年6月に今治市と愛媛県が共同で、国家戦略特区諮問会議に「国際水準の獣医学教育特区」を提案した途端、流れが変わり、加計学園が経営する岡山理科大学に獣医学部を新設する計画が、今年1月20日の国家戦略特区諮問会議で決まったのである。〉(30頁)

次に「加計学園・獣医学部新設の闇」(フリージャーナリストの高橋清隆氏)から。今治市が提出した特区申請の書類は、実際には加計学園が作っていた、という証言。

〈村上氏(村上要・愛媛県議=社民、引用者註)によれば、特区申請のための書類は加計学園が作成しているとのこと。職員から聞いた話として、「出すのは表向きは市だが、加計が作り、市に提案していた」と話す。元衆院議員で日本獣医師会顧問の北村直人氏も同様の証言をする。「裏で全て資料を作ってきたのは加計学園」と述べた上で、「こういうふうな資料を持って来いと指導したのは官邸でしょ。今井さんが先頭に加計に獣医学部を創らせるための戦略を作ったんですよ」と続けた。「今井さん」とは、総理首席秘書官の今井尚哉(たかや)氏。「彼が『上がやれと言ったから』と言えば、文科省も農水省も従わざるを得ない」と指摘する。〉(34-35頁)

また、愛媛県議の福田剛氏(民進)は

〈決定の速さについても首をひねる。約37億円の土地の無償譲渡と最大96億円の債務負担行為について、「この二つだけ朝10時に特出しして、約6時間後に130億円を決済した。市の年度予算の七分の一くらいの額を。三週間くらいかけて審議するのが普通なのに。スケジュールありきでやっている」と批判する。〉(35-36頁)

文中には〈そもそも、なぜ今治市が応募できたのか〉〈案内がどうやったら来るのか〉(36頁)という疑問も投げかけられている。どれももっともな指摘だと思う。

※これは筆者の印象だが、数年前から、同じニュースでも、新聞によって明らかに異なる報じ方をするし、そもそも各紙で扱うニュースそのものが異なってきた。これは加計学園の問題に限らない。現在は、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞の論調と、読売新聞、産経新聞、それに日本経済新聞の論調との違いを読み比べることで、マスメディアの役割について考えるいろいろな材料を得ることができる。


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