有りそうで無かったコンパス(円規)
こんにちは。
ounLab.ウユンビリゲです。
僕は学生の頃はもちろん、現在でも仕事の関係でコンパスと円形テンプレートを使います。
普段はコンパスで大きな円を、円形テンプレートで小さめの円を描くと言ったように円を描く道具を使い分けていました。
それが当たり前になっていましたが、ドイツの事務用品メーカーであるprover(プロバー)社の製品piusと出会い、ドイツ国内では児童向けの商品として販売されていますが、大人でも充分に使えるのではないかと思い、半年ほど前に購入しました。
今回はこの製品の魅力を皆さんにご紹介したいと思います。
1. 意匠
この製品はパッと見、普通のコンパスより少し複雑に見えますが、実は二本の脚と、円形テンプレートと一体化された中心機構の3パーツで構成されています。
■ プラスチック製の脚ですが、針側の脚の色はブラックで、中心と重さを表現し、クランプ付きの脚の色はグレーで細めの形状になっており、回転させる時の重心を色で表現しているのだろうと解釈しています。
■ コンパスを裏返して見ると、中心機構と背面の円形テンプレートが一体化された面白い設計となっています。
■ ツマミと一体化された中心機構のカバーは半透明で、両脚が歯車で噛み合うのが見えるようになっており、ちょっとした遊び心も感じます。
2. 機能
このコンパスは針以外はプラスチックで作られているので製図用コンパスのような精度は期待できませんが、非常に軽いのでメインターゲットである児童にとっては使いやすい仕様となっています。
背面に付けられた半透明のΦ2~Φ10mmのテンプレートがこの製品の一番大きな特徴です。
普通のコンパスでは描きづらかった小さい直径の円も、別で円形テンプレートを用意しなくても直ぐに描けるので作業がスムーズに進みます。
この製品の唯一の金属パーツである針は子どもたちが安全に使えるように収納式になっていて、ダイヤルを回す事で針を出し入れできます。
(左)黒色の滑り止めが付いたクランプによって、Φ6~15mmの範囲でシャープペンシルや鉛筆、ボールペンまで挟むことが可能です。
(右)軸脚の一段折曲がったスペースを利用すれば90°の角度をすぐに描けます。
3. 使い勝手
この製品を使用した上で、メリットとデメリットをまとめておきます。
■メリット
・別で円形テンプレートを用意しなくても小さめの円形も楽に描ける
・プラスチック製で軽い
・ダイヤルを回転する事で針の開閉が可能で、子どもがケガしないように工夫されている
■デメリット
・小型円形テンプレートが付いている為、一般的なコンパスよりもスペースを取る
・児童向け製品なので製図用としては不向き(あくまで図形を描く用途)
4. コスパ
公式サイトでは€7.95(約¥1,150)と、日本の児童向けコンパスより少し高めなお値段となっています。
使い勝手を考慮した「コンパスにテンプレートをつける」という発想の面白さと、モノクロで幾何学的造形の格好良さは児童向け製品の枠を超え、大人でも欲しいと思ってしまう道具になっているのではないでしょうか。
所有欲を満たしてくれる製品としてはお手頃な価格帯です。
日本ではweboなどの販売代理店で購入する事ができます。
https://www.webo-kobe.com/items/stationary/pius/prover.html
5. oun view
プロダクトデザインの仕事において製図は必要不可欠な要素ですが、今の仕事環境では2DCADを使っていて、製図作業においてはコンパスの必要性がそれほど無かったのにも関わらず、僕はこのコンパスを購入してしまいました。
「コンパスで小さい円が描きづらければ、円形テンプレートと一体化しよう」というスマートな解決策はまるでショートカットキーのような疾走感を覚え、更なる便利さを体感させてくれたのがpiusでした。
可愛らしい雰囲気を演出する日本の児童向け製品と違い、理性的であることを子どもの頃から教えるドイツらしいデザインランゲージは、年齢や属性の垣根を超えた共通言語のように感じます。
そんなデザインが評価され、国際的に権威のあるデザインアワードであるiF Design Award 2007を受賞しています。
6. まとめ
私たちは日頃から自分でも気付かない内に大小様々な不満や不便を感じています。
コンパスと円形テンプレートを使い分けるのは当たり前と思い込んでいましたが、潜在的に感じていた不満を顕在化してくれたのが本製品です。
素材の特徴を活かしつつ、道具のギミックまで楽しめるデザインランゲージは、円形テンプレートとコンパスを組み合わせる事で小さな不満を解決してくれる道具として昇華されていて、有りそうで無かった発想に「ハッと」させられました。
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