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人称について~あなたは○人称で物語を書きますか?~

人称、ってありますよね。一人称とか、三人称とか。あなたは小説を書く時、どちらを主に使っていますか?

意外とわかっているようで、実は体系立てて理解出来ていなかったりする、人称の種類と、そのメリットとデメリット。

小説における人称の選び方は、物語の語り方や読者の体験に大きく影響します。この機会に、いま一度整理してみましょう!

一人称 (First Person)

特徴

  • 語り手が「私」や「僕」「俺」といった形で自身の視点から物語を語ります。

  • 読者は語り手の内面や感情に直接アクセスできます。

  • 相性がいいジャンルは、ラブコメとかミステリーとかです。ラブコメの場合は主人公視点で、ミステリーの場合は探偵の助手(ワトソン役)視点、といったところでしょうか。そのキャラの感情をダイレクトに表現できるので、上手く書けば没入感が半端ない上に、語り手以外のキャラクターの考えていること等がわからないので、謎を孕んだまま緊張感やドキドキ感を保つことが出来ます。

  • 書き手としては、自分自身が語っているつもりで書けばいいので、人によっては三人称よりもずっと書きやすい、という特徴もあります。

メリット

  1. 親密感: 読者は語り手と強い感情的な結びつきを感じやすいです。

  2. 内面描写の深さ: 語り手の心情や思考を詳細に描写できるため、キャラクターの深い理解が得られます。

  3. 信頼性の操作: 語り手が信頼できない場合、その視点から物語を読み解く面白さがあります(いわゆる「信頼できない語り手」というやつです)。

デメリット

  1. 視点の制限: 語り手が経験しない出来事や他のキャラクターの内面を直接描写することができません。

  2. 情報の偏り: 語り手の主観により、物語の全体像が歪むことがあります。

三人称視点 (Third Person Perspective)

特徴

  • 語り手は「彼」「彼女」といった形で物語を語りますが、特定のキャラクターの視点に限られません。

  • 読者は様々なキャラクターの行動や出来事を客観的に観察します。

  • 体感的には、多くの作品が、この三人称視点を使っているのではないでしょうか。全てのジャンルで活用可能な、非常に便利な視点です。柔軟に、色んなキャラクターの内面を書けるので、制約無く書けるのが特徴です。

メリット

  1. 視点の自由度: 特定のキャラクターに限定されず、複数のキャラクターの行動や出来事を描写できます。

  2. 全体像の提供: 物語全体を把握しやすく、複雑なプロットにも対応できます。

デメリット

  1. 感情的距離: キャラクターの内面に深く入り込むのが難しく、読者が感情的に結びつくのが難しいことがあります。

  2. 過剰な説明のリスク: 語り手がすべてを説明しすぎると、物語の神秘性や読者の想像力を奪う可能性があります。

三人称一元視点 (Third Person Limited)

特徴

  • 特定のキャラクターに焦点を当てて物語を語ります。読者はそのキャラクターの視点を通して物語を体験します。

  • 基本的には三人称で書きます。そのため、一見すると普通の三人称と比べて違いがわかりにくいですが、よく読めば、あるキャラクター以外のキャラの感情が書かれていないため、非常に視点が限定されているということがよくわかると思います。

  • ジャンル的には、一人称と同じで、ラブコメやミステリーと非常に相性がいいです。ポストアポカリプス物的なSFとか、ファンタジーとかでも、特に世界の謎に迫るタイプの物語だと、この三人称一元視点は活きてくることでしょう。

  • 単なる三人称視点との違いは、三人称でありながら一人称の特徴も活用できる、というところです。上手く使えば、単なる三人称では実現できない没入感を読者に与えることが出来ます。一方で、一人称と同じようなデメリットもあります。

メリット

  1. キャラクターの深い描写: 特定のキャラクターの内面を詳細に描写でき、読者はそのキャラクターに感情移入しやすいです。

  2. 一貫した視点: 特定のキャラクターの視点を維持することで、物語の一貫性が保たれます。

デメリット

  1. 視点の制限: 一つのキャラクターの視点に依存するため、他のキャラクターの内面や視点に直接アクセスできません。

  2. 情報の偏り: 特定のキャラクターの知識や経験に制約されるため、物語の全体像が見えにくいことがあります。

三人称多元視点 (Third Person Multiple)

特徴

  • 複数のキャラクターの視点を切り替えながら物語を語ります。

  • 読者は様々なキャラクターの内面や視点を体験します。

  • この三人称多元視点と相性がいいのは、もちろん、大勢のキャラが登場する作品です。歴史物や、群像劇といったところになります。しかし、二人だけで進行する作品でも、あえて多元視点にすることで、物語に幅を持たせることも出来ます。例えば対立する二人がいて、それぞれ違う主義主張を持っている場合、一方だけを書くのではなく、もう一方の内面や視点も書くことで、どっちが正しいのかの判断を読者に委ねることが出来ます。政治系のフィクションとも相性がいいでしょう。

  • とは言え、後述するように、かなりの難度を誇る書き方であります。慣れないうちは手を出さないほうが無難かもしれません。

メリット

  1. 多面的な描写: 複数のキャラクターの視点を通じて物語を描くことで、より多面的で深みのあるストーリーを提供できます。

  2. 複雑なプロットの処理: 複数の視点を使うことで、より複雑な物語やテーマを描くことができます。

デメリット

  1. 視点の切り替えの難しさ: 視点の切り替えがスムーズでないと、読者が混乱する可能性があります。その他にも、文体そのものを変える、等の工夫を施す必要もあったりします。ずっと同じ文体ですと、いつ視点が変わったのか、わかりにくかったりしますので……。

  2. 感情の分散: 多くのキャラクターの内面を描写するため、特定のキャラクターに対する感情的な結びつきが薄くなることがあります。

二人称 (Second Person)

特徴

  • 読者が主人公となって物語が進行する形式です。

  • 読者自身が物語の中に直接引き込まれることとなります。

  • これは非常に珍しい形式です。相性がいいのは、ファンタジーとかでしょうか。小説では滅多にない書き方ですし、これを上手に活用できる書き手はプロでもそうそういないでしょう。逆に、この二人称は手垢がついていないので、もし上手に書き切ることが出来たら、パイオニアになれるかもしれません。茨の道どころではないですが。

  • というか、おーみはこの形式の文章って、ゲームブックでしか読んだことがないです。「あなたの目の前に城が現れた。入る→36へ 入らない→72へ」みたいな感じで。

メリット

  1. 没入感: 読者は自分が物語の中にいるような強い没入感を得られます。

  2. ユニークな体験: 他の人称では得られない独自の体験を提供できます。

デメリット

  1. 読み手の制約: この形式に馴染みがない読者には違和感を覚えることがあります。

  2. 普遍性の欠如: 読者全員に同じような感情や経験を共有させるのが難しいです。

まとめ

以上、様々な人称を紹介しました。いかがでしたでしょうか。

人称の選択は物語のスタイルやテーマ、キャラクター描写に大きく影響します。どの人称を選ぶかは、物語のジャンルや、目的、伝えたいメッセージによって決まります。

メリットやデメリット、相性のいいジャンルは何か、を理解した上で、最適な人称を選ぶことが重要です。

さて、あなたは、いまどんな人称で書いていますか? この次の作品は、どんな人称を使おうと思っていますか? 何であれ、一番いいのは、自分が楽しく書けることです! 読み手のことを意識するのも重要ですけど、あまり深く考えず、どういう人称であれば楽しく書けるか、それを大事にして書くと、長続きして書けることでしょう。

あくまでも人称に関することは、知識として蓄えておいて、とにかく、楽しんで書いていきましょう!


逢巳

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