見出し画像

Webtoonシナリオ・企画を考える時のポイントを考察する

韓国発祥の縦スクロールマンガ、Webtoonのシナリオ・企画をやりたくて試行錯誤中です。これまでのトライアルや編集者さんとのやりとりで、Webtoonのシナリオ・企画をやりたい場合は、ここらへんの意識をもつとよさそうだなーっていう現段階の考察を、自分の思考整理のためにまとめておきたいと思います。

1)縦スクマンガのテキストはグローバル展開を考えて横書きすべき?

・・・とその前に昨日気になった「日本語の縦スクマンガも文章は横書きにすべきでは」問題について、『結婚商売』の本国版と比較しながら考えてみたので、そこから書いていきます。

マンガって右から左に進行していく、コマは逆Z型の順番で読んでいく、みたいなフォーマットがありますが、これって世界の人にとっては難しいんですね。他の国の本はだいたい左から右に進行していくので、みんな左からページを開きがちです。英訳されたマンガとかを読むと、一番左のページに「こっちから読むんじゃないよ!マンガは右から、コマの順番はこうやって読むんだ!」みたいな説明書きページが入ってたりする。

日本生まれでマンガを読みなれていると忘れがちですが、マンガって世界標準からするとちょっと読みにくいフォーマットなんですよね、きっと。そんな中出てきたのがWebtoon。スマホの画面に合わせて縦にスクロールしながら読んでいきます。読み方が分かりやすく、スマホ世代にとって自然な動きになっていたりします。

外国語って英語圏だと左から右に進むのが普通ですが、日本語や韓国語、中国語っておもしろいことに縦でも横でも読みやすいんですよね。日本語のマンガはWebtoonでも横読みでも文章は基本、縦書きですが、韓国のWebtoonってざっと見た限りぜんぶ横書きみたいなんです。(全部調べたわけじゃないから違うのもあるかもですが)

ちょっと具体例を見ていきます。

『結婚商売』の22話です。本国版はこちら。

日本語版はこちら。(アプリで見るのがいいです)

ちょっと切り出しながら比較してみると、、


吹き出しの位置、けっこう変わってるんですよね。確かに、翻訳した言語によって適切な吹き出しのサイズが変わるので、とても合理的です。とはいえ、日本語は縦書きも横書きもできるから、韓国に合わせて横書きで文章を書いてたほうが、横書き言語の国にローカライズされるときに楽なんじゃないかと思ったんですが、、そこは気にしなくていいなという結論に達しました。理由は

・中国人の人口も多い
 中国は政府の意向が強いが、中国人が中国語翻訳されたWebtoonを読むとしたら、縦書きでも読みやすそう
・日本のマンガファンは縦書きのほうが読みやすそう
 日本のマンガは基本、縦書きなので、縦書きだったほうが日本のマンガファンにフレンドリーそう
・どちらにしろ吹き出しごと直すんだったら横書きだろうと縦書きだろうと関係ない

みたいな感じです。ただ、作品をつくる時に、絵と文章はきっちり分けて、絵の上に文字をかぶせるみたいなことはしないほうがよさそうです。既出のWebtoonも文字は背景っぽいところの上にのってたり、コマの上に出てたりすることが多いですが、これは「翻訳」を意識したつくりだなと思っています。

日本の横読みマンガで文字が多いやつとか、海外にそのまま翻訳すると、文字がぎっちぎちでめちゃくちゃ読みにくくなってることが多いんですよ。横読みマンガは画面に無駄なく配置されてる分、コマもテキストに合わせた分量しか確保されていなくて。もともと縦書きで文章が入ってたコマに、無理やり横書きで文章を突っ込むので、ほんとぎっちぎち。

そういう意味でも、Webtoonは「翻訳される」ことを意識したつくりになってるなぁって思います。今後、もしかしたら、テキストだけ読んだら「消せる」みたいな機能ができて、無駄な余白の少ない画面になってきたりもするかもしれないですが、現状は、重要な絵とテキストはほとんどかぶってない印象です。

ところで、日本産のWebtoonで、長いテキストがダーッと画面中央に一文だけ出てくる、みたいな表現があって、おもしろいなって思ったことがあったんです。おもしろいなって思ってたんですが、これは英語とかになった場合は画面を傾けて横にスライドさせて読む、みたいになるので、手間がかかる分、縦読み言語と同じ効果が出せるか分からないなと考え始めました。ごくたまに使うならいいかもですが、少なくとも頻繁にやるのはやめたほうがよさげです。スマホを横に向けるって面倒だしね。

2)企画を通すためのログライン

次にログラインについてですが、自分の場合は本当に企画とシナリオしかできないので、「絵を描いてプレゼン」という裏技が使えないんですね。もともと描ける人はそこは絶対使って「ネームまで描きました!」でプレゼンしたほうがいいと思うんですが、自分の場合はそれができない。なんとかテキストだけで企画のおもしろさを伝えないといけないですが、そこでやっぱり重要なのがログラインです。

一言でおもしろそうって思わせるのはめちゃくちゃ難しい、、ネームが描けるなら、自分だったら1話のネームまで描いて提出してしまいますが、それが無理なので、なんとか一文でおもしろさを分かってもらえるようにしないといけないです。ログラインをどれだけコンパクトに魅力的に書くかだけで軽く数か月ぶっ飛びますね、びっくり。

このへんは、ソラジマさんのnoteが分かりやすいのでご参考に。

3)第1話で伝えるべきこと

1話がつまらないと簡単に離脱されてしまうので、とても重要な1話目。自分が伝えないといけないなって思うのは

・主人公は誰か
・主人公の行動原理
・主人公の行動原理の理由
・世界観

かなと思っています。主人公がどんな立場の人で、なんらかの目的をもっており、なんでそれを達成したいのかっていう理由が分かるのがマストだと思っています。世界観は絵の雰囲気と場所でだいたい分かります。

中世っぽい服装で主人公と家族が処刑されて、逆行転生して悪役に復讐を果たす、みたいなつくりの作品がとっても多いのですが、逆行転生だと主人公の行動原理とその理由がめちゃくちゃ分かりやすいです。

自分や家族が死んだ→逆行転生してやり直せるので、家族を死に追いやった人に復讐して家族を生かしたい

これのバリエーションとして、ゲームや小説の世界に入ってしまった!みたいなのもありますが、この系がとても多いのは、行動原理とその理由を端的に伝えやすいからだろうかと思っています。

主人公の行動原理が明確だと、話がちょっとばかし分からなくてもけっこう読めちゃうんですよね。主人公の全体目標じゃなくても、主人公が今、やろうとしていることが分かると、それが「うまくいってない」ことが分かって、ハラハラしながら物語を楽しめる。

これは「人狼ゲーム実況」を見てて思ったんですが、めちゃくちゃ高度な人狼ゲームって、プレイヤーが話してることが全然分からないんです。でも、「ピンチ」なのは分かる。それは、それぞれの陣営が、自分の陣営勝利のために勝とうとしているっていうプレイヤーの行動原理が明確だからですね。行動原理が明確だと、そこに障害があるのが分かる。話してる内容がぜんぜん分からなくても、目標に近づいているか遠ざかってるかが分かるからおもしろく感じる。

そんなわけで、1話目で主人公が何がしたいかをちゃんと伝えられると、かなり読者に親切、おもしろさを伝えやすくする土壌が整う気がします。

4)シナリオを書く時に考えること

さてさて、通常時のシナリオを書くとしたら意識したほうがいいなって現段階で自分が思っているのは、「おいしい要素をちゃんと入れる」ってことかなって思います。

Webtoonってチーム制で作る分、めちゃくちゃコストがかかるんですね。なので、リリースして人気がないとすぐ打ち切りになります。本国のWebtoonは作者がアシスタント入れるくらいの少人数でつくってるところや、1人でつくってるものもあるらしいんですが、ガチでつくると、ドレスデザイン担当までいたりするので、めちゃくちゃお金がかかる。なので、「雰囲気を伝える」みたいなコマが使えないと自分は思っています。横読みで例を出すとしたら、あだち充先生の作品にあるみたいな風景の雰囲気ゴマみたいなやつ。

世界観を伝えるために風景は必要だけど、読者が見たいのは「ヒーローとヒロインの恋愛模様」だったり「ヒーローの無双アクション」だったりするので、そっちを早めに描いたほうがいいかなと思います。

読者にとっておいしいと思える要素は下記。

<男性向け>
・主人公の無双アクション
(冒頭のみ:・主人公の不幸境遇・絶望)

<女性向け>
・胸キュン・溺愛要素
・主人公の美貌見せ(ドレスやかわいい衣装など)
・ヒーローのかっこよさ見せ
・主人公の不幸境遇・絶望

<共通>
・主人公の賢さ・強さを見せる
・悪役のヘイト・やりかえし

男性向けはあまり研究してないのでまだ分からないんですが、男性向けファンタジーだと、主人公が絶望状況なのは冒頭のみかなぁという印象です。強くなり始めてからはずっと無双しつづけてるような気がしてるので、「無双」が男性読者にとって一番気持ちいい要素なんだろうなって気がします。

女性向けはちょいちょい主人公の「絶望」が入ってくることがありますが、それは女性向けの場合はヒーローとの恋愛がマストなので、主人公が絶望することで恋愛が引き立つからかなと思っています。

なので、自分がシナリオを考える時は、上記の要素を最初に並べて、整合性をつけてくみ上げる、みたいな感じで考えています。おいしいところしか入れないので、削るものが最初からない感じに組み立てる感じですね。

5)女性向け作品は主人公の絶望状況が分かる設定だとつくりやすい?

ここまで描いてて思ったんですが、女性向けファンタジーの場合は、主人公が「絶望的境遇」であることがすぐに分かる状況になってたほうが、恋愛も引きたつし、それに抗う主人公の強さみたいなのを見せやすいのかもなぁと思いました。

単に周りからいじめられているだけだと、何回か相手にやりかえしをしちゃった段階でネタがつきてしまう気がするんですよね。なので、主人公がピンチであることを分かりやすくする要素があるといいのかもしれません。
そしてその要素は「主人公が悪いわけではない」状態だといい。なので、殺人犯として追われていて絶望、だとダメ。無実の罪を着せられていて絶望ならOK、みたいなイメージです。

・正体がバレると狩られる魔女
・無実の罪を着せられて追われている
・真犯人を目撃したので犯人に追われている
・奴隷として売られた
・めちゃくちゃ身分が低くて虐げられている
・親の借金をかぶせられている

とかですかね。命を狙われざるを得ない状況、どう考えても絶望だよね、みたいな状況を一言で説明できる設定を入れると、話をつくるのもけっこう楽になりそうな気がします。

6)謎はどこまで引っ張るか

秘密を抱えた主人公・ヒーローって結構出てくるんですが、現時点では、Webtoonではあんまり謎を抱えすぎないほうがいいと思っています。というのも、謎で引っ張ってると飽きちゃうんですね。謎で引っ張ってる作品のレビューをいくつか読んだんですが、15話くらい引っ張ってると「早くしろよ」「引っ張りすぎで飽きた」みたいなコメントが出始めたりする。

秘密っていうのはたとえば、ヒーローが主人公を好きな理由とかですね。女性向けファンタジーは、ヒーローが最初から主人公を好きなことがほとんどなんですが、その理由が後から出てくることがあります。そこを謎にすることで読者に「気にさせる」感じなんですが、やりすぎると読者が飽きてくる。読者的には「分からなくて気になってる」状態より、「謎が明かされてすっきり」するほうが気持ちいいと思うので、一つの謎を引っ張るよりは、謎を次々出して次々明かしていくか、読者は秘密を知ってるけど、登場人物は知らない状態にして「分かった状態でやきもき」させたほうがおもしろいのかなと思っています。

エンタメが氾濫している現代で、謎を楽しめるのは、その物語にじっくり浸かれば場合のみなんじゃないかと思うんです。読者がついてきてくれそうだったら、後で重い謎を出すのは引きになるかもですが、基本的には謎で読者をひきつけるのは序盤はきついのかなと今は思っています。

ちなみに、レビューを読むっていうのは、読者が喜ぶポイントを掴む上でけっこう大事だなと思っています。LINEマンガさんが読みやすいですね。

7)縦画面が映えるシーンをつくる

他にシナリオ側の注意点としては、意図的に「縦画面が映える」シーンにするっていうのがあるかなと思っています。

スマホで見るので、縦長のシーンのほうが、画面映えするんです。具体的には「何かが落下している」とか、「人物の立ち絵」とかですね。抽象的なイメージで人物の表裏を表すのに、トランプのカードみたいに上と下に頭がくる絵で見せてたシーンがどこかの作品にありましたが、そういうのはとてもおもしろいなと感じました。こんな感じで、Aと見せかけといてスクロールしていくとBみたいな見せ方を色も含めてつくれるのはおもしろいなと思っています。

シナリオを作る時に、シーンとして「縦絵が映える」シーンをつくれてると、作画段階でうまく見せやすいっていうのはあるかもしれないと思っています。立ち絵やアクションがとにかく引きにはなるんですが、それ頼みだとシナリオ側の工夫がないので、「縦絵が映えそうなシーン」を入れ込めると、シナリオ担当として貢献ができそうな予感がしますよ。

8)テキストの量は短く凝縮

小説みたいな設定説明テキストが意外と多いWebtoonですが、これによって「世界観を早く伝える」というのができると考えています。横読みだとシーンで伝えようとする部分が、縦読みだとこの国にはこんな人たちがいて~みたいな語りによって数コマで終わらせてたりする。

ただ、全体的にテキストは短め、セリフとかもかなり絞ったほうがいいだろうなと今は考えています。というのも、やっぱり「画面が動いている状態で読む」ものなので、長い文章だと頭にぜんぜん入ってこないんですね。短く凝縮されたテキストを大きい文字で見せて分かってもらうほうが、作品の離脱を防ぐためにも有利なんじゃないかと今は思っています。そんなわけで、登場人物の名前も割と短め(あるいは短いニックネームがある)のほうがいいんじゃないかなと思っています。

9)冒頭にハッピーエンドの結論を見せる

女性向けWebtoonだと主人公の悲劇がつづいている状態から始まって、そういう状態にした悪役たちに制裁を加えていく展開が多くあります。やなやつに復讐してスカッとする気持ちを味わえる作品構造なわけですが、悲劇がつづいていると、読者としてしんどくなっちゃうんですよね。なので、悲劇がしんどい作品ほど、プロローグでハッピーを見せておくと、読者が「今は辛いけど、将来的にはハッピーになるんだ!」と分かって安心しながらハラハラできるんじゃないかと思っています。

あと、悲劇展開であっても、グロイ表現はなるべく避けること。ホラージャンルなら別ですが、そうじゃなければカラーで処刑シーンをしっかり描くと、めちゃくちゃ怖すぎるんですよね。なのでだいたい、処刑されるシーンでも、血しぶきが飛ぶとか、ギロチンの絵だけとかまでになっていて、首がスパッと切れて落ちる、みたいな表現はされてなかったりします。『外科医エリーゼ』っていう作品では、外科医なのに外科手術のシーンがほとんどなく、、リアルな見せ方が難しいっていうのもあるかもですが、グロさをなくすっていう意味もあるんじゃないかなって思います。そもそも読者はリアルな外科シーンを見たいわけじゃなくて、主人公の活躍とヒーローとの恋愛を見たいわけですからね。

そんな感じでした!現段階での考察なので、また変わるかもしれません!

ここまで読んでくださってありがとうございます! スキしたりフォローしたり、シェアしてくれることが、とてもとても励みになっています!