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現代アート書道の祭典「天作会」出展のドイツ人アーティストの作品から色と言葉による文化交流について考える

2019年の年末頃、ありがたいことにちょうど帰国中のタイミングだったので、「天作会」という展覧会を見に行ってきました。

2011年に美術批評家の海上雅臣さんの勧めで初めて見に来たのがきっかけで、当時、「テンカー」って書いてある作品が廊下に並んでたり、ラ・ラ・ラ・ラ・ラ みたいな作品が並んでいるのを見て、目がゴマになったのをよく覚えています。海上さんと書家の山本さんが対談してたのを「わからなさみ」って思いながら聞いてたことをよく覚えていて、じんわりします。

天作会とは?

書家・井上有一に捧ぐ「書の解放」展、と題されている「天作会」。副題にあるように井上有一に影響を受けた書家さんたちがメインの展覧会です。そんな中、今回一人だけピックアップして取り上げるのはドイツ人アーティストのトーマス・バウムヘルケさん。カタカナで名前を検索するとなぜかカブトムシっぽいのが出てくる、、なぜだ。。資料によれば、消防士として働いたのちにペインティングとグラフィックデザインを学んだそうです。

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100種類の和色伝統色をその名前とその色が使われている切手とともに掲載してる作品なんですね。とても好きな作品だなぁと思ったのでご紹介しますよ!

まず文字の感じがいいなと。書き慣れていないわけじゃないけど、めちゃめちゃ漢字慣れしてるような感じもしない筆致なんですよね。韓国で漢字の読み書きができないけど、自分の名前だけ漢字で書けるよ!っていう子の文字は、本人は大人なんだけど、すごく子供っぽいあどけなさが出てて、とても愛らしいと思ったんですよね。頑張らないと二本足で立てなくて、足がぶるぶるしてるけど、頑張って立ってるみたいな感じ。

それから切手がドイツのものなのかな、海外のものがすごく多いのです。日本の切手もちょっとあったけど、ほとんどは海外のものなんですよね。

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言葉は文化や風土を表す

その国で発展した言葉って、その国の文化や土地柄をしっかり反映してるんですよね。やっぱり「言葉」って他者に物事を伝えるのに便利なツールではあるので、必要なものがちゃんと言葉として生まれてきてる。

どっかの国で牛に関する名称がすごく多くて、牛Aのお兄さんは〇〇、牛Aのおじいさんの妹は△△、みたいにめっちゃ分かれてるところがありましたが、そんな感じ。そういう国では牛の名称を細かく分ける必要があったんだろうなっていうのが分かる。

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「洗濯機」みたいに日本が開発させた「新しいもの」は、そのまま韓国や中国に「言葉ごと輸出」されているので、韓国でも「センタクキ」で通じます。中国語翻訳してみたら、「洗衣机」でしたねw なんか分かるw 日本にも、たとえば「アイデンティティー」みたいにもともと日本になかった概念が言葉と一緒に輸入されてきてますよね。

日本にこれだけ色の名前が発展してるっていうのは、それだけ多くの色が使われていたってことですし、「これが高貴な人が着る色」など意味をもたされているものは、ちゃんと「高貴」っぽい名前が付けられている。

✓ 参考リンク  伝統色のいろは

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もともとの伝統色はカラーコードまでなかったはずで、割とあいまいな「色の範囲」を指していたと思いますが、現在はカラーコードがきっちり決まっているよう。しかし、本作だと、近似値の色合いが主に海外の切手(時に使用済)で表されているので、あいまいさが許容されています。

図録を見ると、色名にドイツ語訳らしきものもつけられているんですよね。これらは全く同じ色合い(色名)がドイツで定義されているとは思わない(たとえば柿は「カキ」っていう名前のままバルセロナに輸入されていた=バルセロナでは採れない)ので、「センタクキ」に近い感じで日本から輸出された「色の概念」になってくるわけです。

こうして並んでいるのを見ると、食べ物、植物、動物などから名がつけられているものが多く、色名はそのまま日本の自然を表しているよう。自然を描くわけでもなく、写真を撮るわけでもなく、「日本の伝統色の名前」を通じて文化や風土が海外に伝わっていく様子がすごく美しいなぁと思ったのです。同時に、日本という国の美しさを、これらの色の名前から鮮やかに感じ取ることもできる。

そんなわけで、今回の天作会では一番好きな作品でした。

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▼現代アーティストになりたい人のための~初心者の第一歩から海外展開まで役立ち記事まとめ
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