オープンハウスの営業を語る王騎

オープンハウス(以下OH)の勢いが止まりませんねェ。確かにOHの営業力は圧倒的に見えます。しかしそれはあくまで表向きの評価に過ぎません。OHの家が売れているからといって、全ての住宅をOHのように売れば良いかといえば、そう簡単ではありませんよォ?今のOH営業マンは、OHの家しか売れぬ可能性があるからです。
https://twitter.com/oukirealty/status/1692870161605537905?s=20

OHが高い利益率を誇る理由は明白です。市場最安値の商品を開発・供給できたからですよ。うまい棒が小さくなった時、皆一様に残念がりましたが、じゃあ買わないかといえば結局買うでしょォ?それ以上に安い競合商品が存在しないので、多少利益を乗せても相対的に安ければ選ばれる。それは家も同じというわけです。

それまで新築戸建業界の最安値市場を席巻してきたのは飯田GHDでした。その中でOHは、売れ筋の間取りが到底作れそうにない超狭小の3階建住宅を、「駅近&エリア最安値」という一点突破で既存の住宅市場に挑んだのです。

しかし前述の通り、とにかく売れ筋の間取りが作れぬほど狭いわけです。
これまでの常識で考えれば、売れるはずのない家。
売れたとしても、販売長期化が必至の家。
常識では売れぬ家を売るには、常識外の営業を仕掛ける他ありません。

そうして生まれたのが、OHを一躍有名にした、駅近立地を活かした路上キャッチ=源泉営業だったのです。家選びで重視されてきたはずの「住み心地」という、個々の感覚に委ねられた定性的な優先順位を真っ先に放棄し、「駅近&最安値」という定量的に推せるものだけに振り切った家を〝 完成前〟に売る。

ンフフフ完成品を見せてしまっては、定性的な個々の感覚に寄り添う隙を与えてしまいますからねェ。それではOHのような家は売れません。定量的に優位な情報だけで売り切ることを販売戦略の主軸としているので、大半を完成前に売ってしまい、完成後は圧倒的な価格優位性を前面に出しながら押し切ってしまうというわけです。

定量的な情報は営業に説得力を持たせる一方、全ての家が損得勘定のみで選ばれるわけではありません。むしろ我が国のOH以外の住宅メーカーの多くは「住み心地」のように基準が曖昧な、人の感性に訴える定性的な部分にこそ商品開発の基軸を置いてきました。そこで営業を知らぬ童はこう考えがちです。

「OHのように住み心地を無視した家でも売れるぷん族の源泉営業マンなら、商品のグレードが上がればもっと楽勝に売れるのでは?」と。

ンフフフフところがそうはならないのですよ。新築住宅に限らず、あらゆる商品には、そのブランドの購買層ごとに〝売って欲しい売り方〟というものがあるからです。

つまり「レクサスの購入層がドンキで買いたいか」ということです。真の営業力とは、単に『販売力』だけを意味しません。相手が”買いたいように”買っていただくための場づくりという『空間構築力』の意味も大きいのですよ。定量情報だけでは満足できない層には、やはりそれ相応のサービスと、そこに付随する物語が必要となります。

OHの営業マンが売れているのは、"OHの家の売り方"として正しいからです。最安値以外の選択肢もある多くのミドル層以上に対して、路上キャッチはマイナスイメージの方が大きいかも知れません。ですがそれで良いのです。OHは源泉営業で、定量的な優位性で押し切れるお客様だけに焦点を絞り、掘り起こそうとしているのですから。誤解を恐れずに言えば、情弱ビジネスの側面もあるということです。

”住宅業界のうまい棒”ともいえるオープンハウスの家を求める層は確かに厚い。しかし売る家のグレードが上がれば購買層の質も変わります。これまでと同じ販売手法が正とは限りませんよォ?トヨタがレクサスをなぜ同じ販売網で売ろうとしなかったのか。今回の三栄買収劇の後の体制がどうなるのかに注目ですよ…ココココ

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