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紫野高校 2021年インターハイへの挑戦

すべての高校生が目指す最高峰の試合、インターハイ。
2021年。紫野高校は、強いタンブリング力を生かした攻めの構成で府大会に挑もうとしていた。

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同じ京都府内には網野高校という好敵手がおり、さらに近畿ブロックには大阪の清風高校や尼崎西高校など全国大会常連校がいる。知る人ぞ知る男子新体操の激戦区なのだ。2019年には、尼崎西高校と紫野高校がインターハイの切符をかけて争い、わずか0.050という僅差で紫野高校は涙をのんだ。そして翌2020年。コロナ禍により、インターハイは中止された。

2021年の紫野高校団体を牽引するのは、キャプテンの山本光輝選手(3年)。双子の兄の直輝選手をはじめ、他のメンバーも全員が3年生である。府大会の公式練習では、ほぼ完璧な仕上がり具合を見せた。今年こそは。

今年こそは、インターハイへ。

ところが、本番の演技中、キャプテンの光輝選手がタンブリング の着地で前十字靭帯断裂。演技は中断され、紫野高校団体のインターハイへの夢は三たび絶たれることとなった。

近畿ブロック大会では、光輝選手の代わりに2年生の忠岡泰太郎選手が入り、見事優勝を飾る。

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同じ怪我を経験した舘山楓弥さん(青森山田高校出身)に映像を見てもらった。

【怪我について】
僕と全く同じ怪我なので、見た瞬間分かりました。ハーフ繋ぎ(伸身半分捻り)をした後、横に着地してしまい、脛骨(すねの骨)が前に移動しています。この脛骨を抑えているのが前十字靭帯なので、それを抑えきれずに切れてしまいました。

本来であれば靭帯の断裂と関節内のズレがあるので激痛が走ります。他の競技で受傷シーンを見ると分かるのですが、受傷した瞬間膝を抱えて悶え苦しむくらい痛いです。それでも演技を数秒続けていたのはかなりの精神力があって、めちゃくちゃ凄いです。

受傷した後(21秒)で膝崩れという症状を起こしているので、そこで恐怖感と痛みを再度自覚したのだと思います。

【タンブリングについて】
これはめちゃくちゃ強いです。
第一タンブリングは「テンポ、テンポ、バック、伸身2回半捻り」という技です。
テンポは出来るとすごい、というレベルで。
2回半捻りは結構強い人がやる技の部類です。
それでいてあの高さは強いです。

ラストタンブリングですが、これはめちゃくちゃ凄いです。鹿1回捻り、後方スワン足ばらしハーフ です。(たぶん…)

鹿倒立の足で1回捻りをして、その着地の瞬間後方に宙返りするのはめちゃくちゃ強いです。パワータンブリングでしかやらない事をやってます。しかもラストに。すっごく強いと思います。

タンブリング力もそうですが、体力精神力が本当に強い選手なんだなと感じました。」

これだけの実力がありながら、3年間で一度もインターハイ出場が叶わなかったというのは、一体どういう運命のいたずらなのか。スポーツの世界に「もし」は存在しないのだけれど、紫野高校ほど「もし」と言いたくなるチームはないかもしれない。

おりしも、アニメ「バクテン!!」では、怪我の末にインターハイの切符を掴む物語が展開されたけれども、現実の世界では、紫野高校のようなチームが他にもあるかもしれない。何かを美化したりするつもりはないが、夢を絶たれてもなお、努力を続けた彼らをただただ素晴らしいと思う。

動画には、府大会の公式練習(山本光輝選手が怪我をする前)、近畿大会優勝の演技をカットなしで入れた。どちらも素晴らしい演技だ。そして選手たちのコメントもまた、素晴らしい。

インターハイの道が閉ざされ落ち込んだのは1日だけ、あとはみんなでやり切ろうと決めてから、いつもの紫野高校の明るさが戻り、笑顔で練習に励む毎日だった。ここまで引っ張ってきてくれた光輝のためにも、そして先輩として後輩達へ繋ぐためにも、この近畿大会で優勝を掴めたことが本当に嬉しい。

全部で9分ほどの動画になった。
どうか、皆様の9分間を紫野高校のために割いていただけないだろうか。
インターハイの夢は叶わなかったけれど、多くの人に演技を見てもらいたいと、彼らは願っていると思う。

個人では、藤本太陽選手が8月21日から新潟で行われるインターハイに出場が決定している。

紫野高校の挑戦は、今日も続く。

2021年近畿大会優勝 京都府立紫野高校

団体
井之口 将功
岡本 慶次郎
稲葉 春駆
岩崎 隼大
山本 直輝
忠岡 秦太郎
石田 天星
キャプテン:山本 光輝

個人
藤本 太陽(インターハイ出場決定)

マネージャー:溝杭千夏

監督:木學 健

大会や取材の交通費、その他経費に充てさせていただきます。皆様のお力添えのおかげで少しずつ成長できております。感謝です🙏