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2021年 社会人選手権(団体編)

レジェンド級の選手たちが、この大会に数多く参加した。2020年のジャパンを制した髙橋稜さん(名取高校-国士舘大学卒)であったり、常勝軍団・青森大学で主将を努めた廣江壮太さん、同じく青大の団体メンバー木牟禮詢さん。福永将司さん(鹿児島実業-国士舘大卒)は、個人ではなく団体で出場。また、西村統真さん、平尾竜太郎さん(花園大学卒)、馬越太幾さん、稲岡逸生さん(国士舘大卒)、福岡大学出身の岸本龍典さん、八木さんら懐かしい顔ぶれも。仙台大のOBたちや清風高校のOBたちもそれぞれ団体チームを作り、参加してくれた。まあなんと華やか、かつ多様な顔ぶれだったことか。

「国糸リベンジャーズ」

あの真っ赤な衣装で「糸」の団体を。メンバーは、国士舘大の同期である一戸・河野・佐藤・山口(聖)、山本、福永という、国士舘ファンなら感涙ものの顔ぶれである。

2018年のジャパン直前に取材したこの動画は、「応援!男子新体操」が初めて本格的に取材・編集したドキュメンタリー映像だ。ゆえにどうしても、この時4年生だった彼らの世代に対する思い入れは強い。当時、キャプテンだったけれども団体メンバーではなかった佐藤守弘さんが、楽しそうに団体をしている姿。そして、個人だった河野純信さんは現役時代と変わらぬ表現力でソロ部分を情感たっぷりに演じていた。一戸佑真さんは現役時代よりも短髪になり、凛々しさが増しただろうか。山本悠平さんは体が一回り大きくなったが、筋トレの成果だという。山口聖士郎さんは、やはりそれと一目でわかるほどに体のこなしが美しい。そして、退場する時にきっちり直角にお辞儀をする福永将司さん。

多くのファンが、彼らの演技を生で見たいと思ったに違いない。言葉で伝えられるもの、写真で伝えられるもの、動画で伝えられるもの。それぞれに貴重な資料ではあるけれども、生観戦の空気は生観戦でしか味わえないものだと、今回つくづく思った。

「リメイク」

国士舘大学で2020年度にキャプテンを務めた池谷海都さんが登場。宮川健太郎さん(光明学園相模原高校-花園大学出身)によると、「光明・国士舘の申し子のような彼を、どうしても試合に出してあげたかった」という。池谷さんは国士舘団体のレギュラーメンバーになっていたが、試合直前の練習で怪我。その後は主将としての役割に専念した。そんな彼に大先輩が晴れ舞台を用意してくれた。演技開始前、コールに応えて手をあげたのが池谷さんだった理由は、そこにある。

宮川さんは二児の父となり、仕事をしながらも試合に出続けてきた。また、同チームには山口夏史さんも。「国糸リベンジャーズ」で参加した山口聖士郎さんの弟である。兄弟揃って、別の団体で社会人大会に参加。なんて素晴らしい👏 そしてタンブリング達人の斎藤嵩さん、ミスター社会人の大原朗生さんに田邊浩仁さん。毎年の「Re:」は、もはや社会人団体の代名詞的存在であった。「今年で最後」と言うが、「引退詐欺」はいつでも大歓迎だ。

「伊東研究所」

このネーミングは、いつかの年の国士舘カップのチーム名からと思われる。リーダーの伊東研さんは、山形県の遊佐高校出身。国士舘大学に進み、個人選手となった。彼は「けんぱち君」という通称で我々ファンにも馴染みが深い。今回のチームは、けんぱち君が「インスタでメンバーを募集」して集まったメンバーなのだそうだ(!)まさに時代の申し子というか、今時だなぁと感心する。そして、こちらのメンバーもめちゃくちゃ豪華である。甲府工業を卒業後、サムライ・ロック・オーケストラや舞台で活躍する奥村等士さんは、均整が取れた体を持ち、非常に美しい脚を持つ。馬越太幾さんは、井原高校から国士舘大学へ進んだ、いわば男子新体操界のエリート的存在であるが、奥村さんとは舞台で共演した実績がある。そこに、2020年のジャパンで団体優勝した髙橋稜さんが加わり、さらには髙橋雄人さん、木牟禮詢さんの青森大学ガチ勢も。個人的には、花園大学の団体の要として活躍した中村大雅さんの参加をとても楽しみにしていたが、都合により出場されなかった。来年はぜひ!

会場に行くことが叶わなかった多くのファンの方々には申し訳ない思いでいっぱいであるが、「"Counting Stars"が試合会場で流れる」ということが、どんなに破壊力のあることか、想像していただけることと思う。この作品が試合会場で初めて演じられた当時、その選曲の斬新さ・振り付けのカッコよさに衝撃を覚えた。会場全体を圧倒的な空気感で一体化するこの傑作を、彼らは実に楽しそうに演じきった。特に、上下肢でうっすらと微笑む髙橋選手は、やはり上下肢で微笑んでいた「リメイク」の宮川選手同様、現役時代にはなかった楽しみを社会人で見つけたかのようで、見ている方も心が温まった。

インスタに投稿した「国士舘バランス」の写真。たったこれだけのこと…すなわち、片足をあげ、右手で支え、左手は肘を曲げて顔の前に出す。これだけのことに、何時間も何時間もつぎ込んできた人たちの、その体の感覚は1年や2年では失われないのだなと、彼らのポーズの美しさに畏敬の念を覚えた。

「祇園勝者」

こんな豪華メンバーが結集した社会人団体を制したのは、その名の通り「祇園勝者」であった。ネーミングは、選手たちが京都出身だからと思われる。稲岡逸生さんは国士舘大、岸本龍典さんと八木洸征さんは福岡大、西村統真さんと平尾竜太郎さんは花園大、廣江壮太さんは青森大と、それぞれ出身大学は違うが、いずれも団体で活躍した名選手たちだ。

中でも特に、西村さんは印象に残る選手だった。花園大学の練習風景の中で、彼のリーダーシップが素晴らしいのが素人目にもよくわかった。明るく花大団体を牽引する姿と、試合後に目を真っ赤にして、それでも「応援ありがとうございました!」と挨拶する姿がいつまでも忘れられなかった。インスタに写真を投稿後、彼がこんなコメントを寄せてくれた。

「あの時は自分のミスもあって悔しい思いをしましたが、同じ演技でリベンジ出来てすごく嬉しかったです」

私の記憶も、数年の時を経て、笑顔でお辞儀をする姿に上書きされた。

「仙台大RG」

4名での出場だった。特筆すべきは、前黒島智之さんと村上拓海さん。彼らはなんと、個人にも出場していたのだ。高校生でもキツいだろうに、社会人で個人団体両方に出場するだなんて、特別賞をあげてもいいんじゃなかろうか。仙台大学は東日本にある。東日本には国士舘大学・青森大学があり、全日本インカレ、そしてジャパンへの競争はシビアだ。そんな厳しい環境を経験してきた彼らが、たとえ4名でも社会人大会に出場しようと思ってくれたことが嬉しい。

「清風RG」

名前からして清風高校のOBさんたちだと思うのだが、5名で出場。まず彼らは、フロア練習の時からして、えもいわれぬ雰囲気を醸し出していた。なんというかこう、「アスリート」っぽくないのだ(決してネガティブな意味ではない)。髪型や髪の色や、その他もろもろ…。皆さんご存知の通り、清風高校は非常に偏差値の高い学校である。しかし、勉学に勤しむかたわら新体操をやっているにしては、その体操の美しさ、レベルの高さが並大抵ではない高校だ。そしてOBの彼らもまた、仕事(あるいは勉学)のかたわら、「ちょっと新体操がしてみたくなって」というには、タンブで切り返しするわ、3つバックスワン揃えてくるわ、組みも綺麗に決めるわで、あまりにもガチな新体操人たちであった。あまり選手の情報がなくて感じたままを書いてしまったが、非常に興味のそそられるチームであったことは間違いない。

社会人の皆様、お疲れ様でした。個人については、またいずれ。


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