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一つならず、"心の住民票"を持って生きる

私は日本人であり、日本国籍だ。
では、どこに住んでいたかと言うと、生まれ落ちて中学生までの中能登町(石川県)から始まり、金沢市(石川県)〜杉並区(東京都)〜目黒区(東京都)〜文京区(東京都)〜川崎市(神奈川県)〜目黒区(東京都)〜神戸市(兵庫県)〜中野区(東京都)〜船橋市(千葉県)〜調布市(東京都)〜札幌市(北海道)〜船橋市(千葉県)と転々とし、現在の港区(東京都)に至る。
[OUEN Japan]を立ち上げてから[OUEN 塾]を福岡県と石川県で開催していた時は、それぞれ月に1週間は福岡市と金沢市に住んでいたから、今の港区(東京都)の前に、福岡市(福岡県)と金沢市(石川県)が加わる。

この全ての市区町に住民票を登録していたわけではない。
大学卒業までは、中能登町のままであり、高校生の時の金沢市や、大学生の時の杉並区〜目黒区〜文京区には住民票は移していない。仮の宿だった調布市と福岡市と金沢市も然り。
しかし、日本人であるからどこか一つの住所に住民登録していた。二つはしていない。しようと思ってもすることができないのが日本のルールである。これは日本のみならず世界のルールでもあろう。

では、国籍はどうだろうか。私は日本だが、外国で生まれた人の中には、国によっては二重国籍を認めているところがある。成人になってどちらか一つを選択することになる。

最近、何冊か地方創生に関する本を読んでいる。
日本に住んでいる人は、日本人であれ外国人であれ、どこか一つの住所に住民登録している(なかには、稀にどこにも登録していない風来坊もいるが、正常に生活をしている人は必ずどこか一カ所に登録している)。一つしか住民登録はできない。だから、自治体では人の奪い合いをする。
「こちらがそちらよりこんなところが優れている。だから、こちらに移ってきたら如何ですか」と言うことになる。

[ふるさと納税の歴史]

ふるさと納税制度の設立に向けた最初の一歩は、2006年10月に「故郷寄付金控除」の導入が提案されたことでした。これは、当時の福井県知事であった西川一誠さんからの問題提起で、大都市集中の傾向が強い日本で、地方は将来を担う子どもに未来を託し、コストを費やしていても、その子どもたちが納税前に大都市圏へと流出してしまうことを懸念してのことでした。つまり、ふるさと納税は、都市と地方の行政収支のバランスの悪さを是正することを目的として、「故郷」に寄付することで、自治体は育てた子どもたちからのコスト回収を期待する制度だったといえます。

その後、2008年にふるさと納税が開始されますが、すぐに世の中に浸透したわけではありませんでした。ふるさと納税が注目され、利用者が急増したのは2011年の東日本大震災以降になります。今でこそ、返礼品を目的としてふるさと納税を利用する人が多いですが、この震災を機に、ボランティアでも募金でもない新しい震災支援としてふるさと納税が利用されたのです。これを機に故郷だけでなく、応援・支援したい自治体に寄付する傾向が強くなり、利用者が増えるきっかけとなりました。

今でこそ、"ふるさと納税"は生まれ育ったところ以外でも寄付をしようと思ったところに寄付をすることができる。そして、寄付をすると、自治体から"寄付していただいたお礼"としてその地方の名産品を送ってきてくれる。
その名産品を欲しいと思って寄付をする人が圧倒的に多い。思いではなく、利が先行している。人間は利で動く動物だから、生まれ育ったところでなくても、思い入れのあるところでなくても、欲しい返礼品を送ってくれるところに寄付する人がどんどん増えてくるのだ。
それはそれでいい。切っ掛けはそれでもいいが、やはり生まれ育ったふるさと、お世話になったふるさとに寄付することが本来のふるさと納税だろう。
お世話になったところでなくても、東日本大震災や能登半島地震の被災地に寄付をすることも人間の素晴らしい本性だろう。

私は今は東京に住んでいるが、日本の至るところに住んでみて、その至るところには思いは深かったり浅かったりするが、それぞれの思いがある。
そして、今回の能登半島地震で、3月から毎月ふるさと中能登町に行っているが、その思いは少しずつ変わってきた。「私は東京の住人であるが、私は能登の住人でもあるんだな」との思いだ。そんな思いが反映することがあれば、それは嬉しいことだ。準住民として一層中能登町を愛することができる。

住民票を移すか移さないかという問題ではない。思いの住民票は一カ所に限らないほうが心が豊かになり、優しくなり、人間は幸せになるのではないかと思うのだ。

いつもは東京に住んでいるが、ある期間は能登に住んで能登のために生きる。思いは"ところ構わず"だから、東京と能登がダブルで心の中にあれば、"2倍の人生を生きる"ということになる。
この2カ所に限ることではない。他にもあったら、なお幸せになるかもしれない。

心の住民票を一つならず持っていることが、人間の心を豊かにする。2倍の人生を生きるほうが愉しいではないか。

そんな見方・考え方で地方創生を考えたら、もっと地方創生は明るく前向きなものになっていくのではないか。

不動院重陽博愛居士
(俗名  小林 博重)

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