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不信感が拭えないパトロールくん

「人は裏切るものだ」「監視の目を緩めてはいけない」「油断すると痛い目にあうぞ」と思って、人を心から信じることが出来ない人がいます。
人と親しくなるということは、同時に猜疑心で苦しむことの始まりを意味するので、警戒心が強く、秘密主義で、なかなか人に心を開くことが出来ないのです。
このようなタイプの人を、ここでは「パトロールくん」と呼ぶことにします。

パトロールくんは、プライドが高く、仲間と親しい関係を和気あいあいと楽しむこともないし、気心知れた関係を持つこともありません。
なぜなら「人は裏切るものだ」と心のどこかで信念めいたものを持っているため、常に人の心の動きに対して、パトロールに余念がないのです。
セキュリティも万全にしなければ気が済まないし、常にガードを固くしているため、やりとりをしていても、緊張した硬さを感じさせます。

パトロールくんの心の中はいつも猜疑心でいっぱいなのですが、その中をさらに深く見ていくと、実は「幼い子ども」が眠っているのです。
ですから、一旦心を許すと、今度は眠っていた「幼い子ども」が一気に活性化され、相手は自分のためだけに存在する、自分の所有物だと思い込むようになるのです。

所有物は、意志を持ってはいけません。
されるがままでなければならないのです。
仕事関係であろうとも、プライベートであろうとも。

仕事関係であれば、どんな要望にでも応じることを求めますし、プライベートであれば、相手が自分の知らない世界を持とうものなら、嫉妬の炎がメラメラと燃え出し、どこで何をしているのかを逐一知ろうとしてきます。
パトロールくんにとって愛と憎しみの壁はほとんど無いに等しいので、双方を激しく行ったり来たりするのです。
つまり、心を許した瞬間から「いつか裏切るんじゃないか」という疑いが心を支配するようになり、目を光らせて相手の素行を監視しようとする、これがパトロールくんの心の姿なのです。

「人と親しくなるということ=猜疑心で苦しむことの始まり」を意味するということは、常に人の言動の中から「この人は自分をどう見ているのか」「背信はないか」と疑わなくてはいけません。
小さな懸念事項も全て炙り出そうとするため、些細な行き違いは、全て自分に向けられた「攻撃」と受け取ってしまう。
そして「自分を否定した」「馬鹿にしている」と感じて、激しい怒りがこみ上げてしまうのです。
この激しさは、実は「傷つきやすさ」の現れでもあるのです。

ですので、どうしても気分の波を持ちがちになります。
調子がよく妄想的な思いつきに火がつくと、気分も高揚して妄想に拍車がかかり、過度に行動が増えます。
ところが、思いつきをすぐに実現させたい衝動に駆られるものの、それは不可能だとわかると気分は落ち込み、全く行動が起きない「うつ状態」に入るという、アップダウンの激しい極端な波を抱えることになるのです。

不信感を抱く理由

絶望

そこまで人不信に陥るのには、理由があります。
これまでの人生のかなり早い段階で「人を信用したら大変なことになる」「他人は恐ろしいものだ」と感じる体験を、何度も記憶に深く刻み込んできた過去を持つからなのです。

信頼したいのに、信頼を築けない。
人との関係を、愛情や信頼でつなぐことは難しい。
それならば、上下関係をベースにした「力の関係」だと理解しよう。
そして権力を手にして、全てを支配できるようになろう、と考えます。

権力への執着が強いのは、多くの場合、父親を求める思いの裏返しだとも言われています。
父親を権力の象徴だと捉えている節があり、父親に認めてもらいたい、認められたいけれど恐れている、父親に愛されていると感じたいなど、父親との関係にたくさんの傷ついた記憶が眠っていて、父親へのこだわりが、権力志向を生んでいるというのです。

許すことが唯一の道

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頂点に立ちたいという願望を持つので、自分を諫める人を持たないパトロールくんは、たくさんの勘違いを抱えたまま生きています。
本来、人の心を支配するとか、操るなんてことは出来ないし、してはいけないこと。
一見、支配することに成功しているかのように見えたとしても、それは同時に裏切りに怯え続けるというのは、数々の独裁者の生き様からも見て取れます。
そうなっては、不幸な末路しか待っていません。

どうしても、人生の大半を憎しみの感情に支配されてしまうパトロールくん。
でも、人生は有限です。
粘りと、ガッツと、勇猛果敢な強みに加えて、正反対にある「許容」を手に入れられたら、多くの人から信頼を得る指導者になれるのです。
パトロールくんの一番苦手とするのは「人を許す」こと。
これが出来たら、劇的に人生が変化していくはず。
どうかあきらめないで、挑戦し続けて欲しいです。

鶯千恭子(おうち きょうこ)








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