見出し画像

マニピュレーター(心を操る人)の正体

パーソナリティー障害やその被害者を対象にした治療・調査・研究を行い、全米で啓蒙活動を展開している心理学者ジョージ・サイモンさんが書かれた本。
「あなたの心を操る隣人たち〜忍びよるマニピュレーターの見分け方・対処法〜」(草思社)をご紹介します。

「マニピュレーター」とは、人当たりがよく、うわべはとても穏やかに振る舞うけれど、内面は全く違う顔を持っている人のことで、自分の望みを手に入れるために相手に対して容赦無く立ち回り、常に好戦的で、手口は巧妙。
関係操作(マニピュレーション)に長けた攻撃性人格障害の人を指すそうです。
しかも、本人が「罪悪感」を感じることは『ない!』と明確に断言しており、悪かったと見せかけることはあっても、心から感じることがないというのがこの病の特徴のようです。

画像1

精神分析では見誤る関係操作への執着

本の中では、従来の精神分析的な視点だけで相手を理解しようとすると、大きく間違えると指摘しています。
相手の問題行動の意味を読み解こうと、心の背景を斟酌したり、生い立ちを深く分析して人格を理解しようとしても、人を操作しようとする貪欲さには歯止めがかからないそうです。

とにかく巧妙で、弁がたち、自分が犠牲者だと熱弁を振るい、周囲を自分のペースに巻き込んでいくのが特徴で、常に自分が主導権を握り、相手を自分の支配下に置く関係性を作っていくことが目的なんだそうです。
参考サイトも併せてご紹介しておきますね。

攻撃性パーソナリティーが求める関係操作

実はこの病の中心にあるのは「関係操作(マニピュレーション)」。
相手を思う通りに操りたいという強い欲求を持っていることで、ベースにあるのは、支配欲であり、攻撃性。
欲しいものを手に入れるためには何でもするという貪欲さがあり、手に入れるためには周到に考え、相手との関係をも思いのままに操作しようと執着していきます。
その特徴をまとめてみますね。

画像2

<矮小化(わいしょうか)>
「自分のやったことはそんなに悪いことじゃない」と言い、自分の悪事を「ありきたりなもの」と見せる事で、自分への非難を防いだり、例え非難を浴びても「確かにそれはひどすぎる」と周囲に思い込ませようとする。

<虚言>
事実を巧妙に歪曲し、意図して意味を曖昧にしておくことは、マニピュレーターが好んで用いる策略。ストーリーは念入りに組み立てられているので、聞かされた方は話の全貌を知り得た印象を持つが、肝心なことが抜け落ちているので、気づかず、知る術もない。

<選択的不注意>
相手が申し出ていること、して欲しいと願っていることが何かはわかっていながら、わざと無視することで拒否。そうすることで自分の目的を果たそうとする。

<話題を転換する>
巧妙に話をすり替え、問題をはぐらかしたり、大切な問題を話し合うつもりで臨んでも、いつの間にか肝心な話題から遠ざかり、結局、結論を先送りされる。

<はぐらかし>
ズバリの質問に対しては、的外れや不適切な返事で応じ、マニピュレーターが窮地に追い詰められるのを避けたり、問題を意図的に回避する。

<暗黙の威嚇>
相手に頻繁に揺さぶりをかけ、不安を煽って、自分より低い地位に留めておこうとする。「ああ言えばこう言う」という弁別に長けているのが特徴で、熱弁を振るい、難なく相手を追い詰めることに慣れている。

<罪悪感を抱かせる>
相手に罪悪感を抱かせるのはマニピュレーターの好む手口。相手が良心的に優れていればいるほど、その良心につけ込んで不安を揺さぶり、自分の意に従わせておくという手口に長ける。

<羞恥心を刺激する>
皮肉やあてこすりで揺さぶり、相手の能力や価値観に疑問を持つように仕向け、自分の意に従わせようとする。

<被害者を演じる>
相手の同情を得ようと、自分が被害者だと演じて相手の感情を掻き立て、目的のものを手に入れようとする手口。「傷ついた」「心が折れそうだ」と口にし、自分が苦しめられている、と周囲に思わせる。良心的で感情が豊かで心優しい人は被害に遭いやすく、たやすくその同情心につけ込まれてしまう。

<犠牲者を中傷する>
被害者を演じることと同時に使われる手口。被害を受けているのは自分で、自分を守るためにはからずも闘いに応じているをだと見せかける。

<忠実なるしもべを演じる>
世の中のために使命を果たすなど、崇高な理念に奉じているように見せたり、他人のために一心不乱に働いていると見せかける事で、密かに抱いている、権力や地位を手にしたい渇望や野心といった下心を隠蔽することができる。

<責任転嫁する・他人のせいにする>
自分に向けられた非難を転嫁できる先を常に探している。犠牲となる相手を探し出すことに秀でていて、実に巧妙に行うため、その企みを見抜くことは容易ではない。

<無実を装う>
周囲に、自分はどこから見ても不誠実なところはない、信じて欲しいといい、相手に信じ込ませようと無実を装う。

<これ見よがしに威嚇する>
入念に練られた計画に基づき、怒りを意図的に表明。人を威嚇して支配するという人間関係操作の手段として用いる手口。

画像3

従来の心理学的手法では手に負えない人々

「どうしてこの人はこんなことをするんだろう・・・」
相手の本性が理解できない
相手の問題に詰め寄ってもやり込められてしまう
相手の振る舞いを正そうとしても『自分は正しい』『間違っているのはそっちだ』と押し切られてしまうなど、わかりにくいマニピュレーターとの関係に苦しんでいる人たちを助けるために、この本を書かれたのだそうです。

また、従来の精神分析をベースに、マニピュレーターの人格を理解しようとしても限界があると伝えています。
古典的な人格理論とその治療法では、かつてのような目覚ましい回復を期待できないのがマニピュレーターだと。しかも知識のある優秀な心理士でも巻き込まれてしまうことがあるというから驚きます。
では、攻撃の被害者になる人たちは、なぜ自分が犠牲者になっていることに気づけなかったのでしょう。その問いにも、本書では丁寧に書かれています。

<なぜその正体を見抜けないのか?>
1.自分が攻撃されていることに気づけない
自分を追い詰めて支配下に置こうとしている事には薄々気づいているが、なぜそうするのかという問いに答えが見つからず、直感に耳を傾けることをしないため。

2.傷ついているのは相手だと思い込む
本当は心が傷ついているからそんな行動を取るのだと勘違いをし、結果的につけ込まれてしまうため。

3.自分でも意識していない弱点を突いてくる
誰もが持つ不安や弱点を、見事に見抜いて突いてくるのがマニピュレーター。
心の負い目を見抜かれ、つけ込まれてしまう。

4.問題があるのは自分だと思い込まされる
「自分が悪い」「自分にもっと力があれば」と思い込まされるから。

画像4

怯まず立ち向かう

本当にこんな人たちがいるの?と疑いたくなるマニピュレーター。
被害に遭う人たちは、とてつもなく不快で、明確に説明できない不可解さと気味の悪さを抱えます。
でも、こうして最新の心理学で学術的に解説されると、胸のつかえが取り除かれるという声もたくさん耳にします。なるほど。関係性に苦しんでいる方は、マニピュレーターという視点で紐解きをしてみるのも大切かもしれませんね。
それには、以下のことが大切なんだそうです。

*人格を正確に判断する目を養う
従来の人格障害に関する全般の知識は、よく熟知しておくことが必須だと伝えています。
オオカミの正体を見抜いて何を企んでいるのかを予想することが、関係操作の被害を免れるための最初の一歩だと力説しています。

*自分の性格を知る
過度に良心的であったり、繊細であったり、自信に欠けていたり、依存的であったり、理詰めで考える傾向のある人は、被害に遭いやすいと書かれています。
マニピュレーターは、相手の弱点や特徴をじっくりと時間をかけて調べ上げているので、どう刺激すれば、どの程度効果的なのかも知り尽くしているのだとか。
自分のことを守るためには自分をよく知ることが不可欠です。

*駆け引きの土俵にのらない
動揺して相手のペースに乗らないこと。相手の動揺もすぐに察知するのがマニピュレーター。大切なのは、凛として、正しいと思える当然の要求をすること、たじろがずに自分の欲求に従って応対し、自己主張することなんだそうです。
間違っても「私のせいで」などと捉えてしまうと、相手の思うツボなんだとか。

*振る舞いから判断する
とにかく弁が立つのがマニピュレーターの特徴で、雄弁で自信たっぷりに話すので、聞いている方も釈然としないまま言い含められてしまうことが多いそうです。
でも、真実は起きている事実の中にあります。
起こっている事実や、相手の言葉よりも振る舞いの中に「本当」があるので、冷静に観察したり、詳細なメモを残し、検証することをお勧めします。

*自分の考えをはっきりと示す
何を望んでいるのか、何が嫌なのかをはっきり表明し、曖昧な言い方は避けるようにと書かれています。相手から曲解されることを防ぐことが大切なんだそうです。

*反撃に備える
何かの理由で自分の負けを意識した時、自分の正当性を主張し、名誉挽回に乗り出そうと、何らかの行動に打って出てくる可能性があります。
いざと言うときに備えて、これまでの経緯を細かく記録し、いつでも弁護士に相談できるように資料を用意しておくことも必要です。

私を育ててくれた精神分析医の先生は、よくこんなことを言っていました。
「言葉ではなく行動を見ろ。人は口ではなんとでも言えるが、真実はその人の振る舞いの中に現れる」と。
マニピュレーターとの関係で苦しんでいる人がいたら、一人で抱えないで、是非、弁護士や専門家の力を借りてほしいと思います。
誰もあなたの尊厳を奪うことは出来ません。
正々堂々と闘い、自信に満ちた人生を手に入れてほしいと思います。

マニュピレーター について、もっと学びたい方、関係を改善させていくための手立てについて学びたい方は、以下の記事をご参照ください。
具体的な方法をお伝えしています。

鶯千恭子(おうち きょうこ)

SFRのHP①

スクリーンショット 2021-06-14 18.05.19

画像6



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?