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温泉のような人

「あのね、夢でみっちを見たよ。
 ほっぺがピンクで温泉あがりみたいで
 次に何しようかなってワクワクしてた。」

友人との電話。

わー、いいな。
そんな風になれるかな。

実際は肌ツヤが気になるし
行動するまで時間がかかる。

それでもイメージできるなら
なれる可能性があるんだろう。
素直に嬉しかった。


* * *


素敵な歳の重ね方をしている女性で
時おり思い出す人が居る。

15年ほど前に診て頂いた、婦人科の女医さん。おそらく当時70代位。

ビル内の小さな一室。
女医さんは優しく芯のある雰囲気。
看護師さんはテキパキ、さりげない気遣い。
静かな連携と信頼。

緊張気味だった私の話をゆっくり聞き、丁寧に説明してくれて。
その流れでふと 女医さんがおっしゃった。

「こういう仕事でしょう。長い休みが取れなくてね。そういう時は、世界地図を見るのよ。
あてずっぽうに指さした所に、旅行する想像をするの。今日はどこに行こうかしらって、考えるだけで楽しいのよ。」

窓の外は、ぴかぴかの晴天。
ぽーんと軽く飛び上がって
見知らぬ国に来たみたい。

彼女のほほえみに包まれて、
あたたかいお茶を頂いたように
胸がじんわりした。

私はすっかり安心して
通わずそれっきりに。
でも私の中にずっと残っている。


あんな人になりたいな。

体と心を動かし続け
豊かさを見つめ
日々を旅する人。

こんこんと湧き出る
底からの優しさをたたえた
強く可愛らしい人。

勿論、なりたいな、だけではなくて
何か変えたいなら、動きを変える。

自分と世界を知ろうとし
イメージを大きく羽ばたかせ
小さくでも、踏み出す。

そういうことの繰り返しなんだろう。
きっとそうなんだろう。


* * *

「みっち、私たちさ、
 なんか色々びびりすぎなんだよ。
 あー行動力が欲しい!人間になりたい!
 よし、運気を上げるにはまず掃除だね。」


私たちの長電話は続く。
この時間が必要。



さあ、これから。
ピンクほっぺの ほかほかの、
源泉かけ流しになるのです。