嘘は許されない

「どうもー。これから漫才やらせてもらいます。山田と、」

「トムクルーズです。」


「カット。違うよね。見たらわかるし。」

「いや、これは導入のボケで…」

「ダメダメ。詐称はご法度だから、気を付けて。」

「詐称……」

「あとね。これから、じゃないでしょ。「どうもー」って入ってくるところから漫才始まってるんだから。もう一回最初からお願いします。」

「…はい。すいません。」



「どうもー。こうして漫才やらせてもらっています、山田と、」

「あの、僕も山田なんですけど。」

「紛らわしいな。下の名前で紹介しましょう。私が太郎で」

「私はマクアードル。」


「嘘でしょ?カットね。」

「いや、そこは僕がツッコむので…」

「嘘はダメ。」

「嘘というより、芸名がマクアードルなんです。」

「ダメダメ。本名じゃないとうるさい時代なんだから。もう一回お願いします。」

「……はい。すいませんでした。」



「どうもー。こうして漫才やらせてもらっています、山田太郎と、」

「山田一郎です。」

「それにしても最近、歌手になりたくてねー。大きいコンサート会場で歌うってのは憧れますよね。」

「間違いないね、」


「カット。君たちがなりたいのは、」

「いやいや、そんなに事実にこだわったら漫才なんてできないですよ。こんな茶番は続けられない。」

「甘いよ。時代に合わせていくのが人前に出る仕事だろ。なんでそこまでして自分たちの形にこだわるのさ。」

「自分の気持ちに嘘をつきたくないからです。やめさせてもらうわ。」



参考文献:

【ショーンK経歴詐称】本人がラジオ番組で涙声で謝罪 「今回の取り返しのつかない事態の発端と過ちの責任は私にある」 - 産経ニュース



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?