人間と妖怪の違い
ある時代のある街に、人間になりたい妖怪がいました。
人間になることができた師匠から教えを請いながら、修行に明け暮れています。
「先生、人間になるために一番必要なことは何でしょうか?」
「それは人の痛みを知ることだよ。」
「人の痛み、ですか。人の痛みとは、妖怪の痛みとどう違うのでしょうか?」
「人間の痛み、ではなく他人の痛み。これを知るということだ。」
「他人の痛みは感じられませんから、知ることはできませんよ。妖怪じゃあるまいし。」
「お前は妖怪だよ。しかしそれを想像できるのが、立派な人間なのだ。」
妖怪はそれから、来る日も来る日も他人の痛みの研究を続けました。
「先生、人の痛みを知ることができるようになりました。」
「よく頑張ったな。それで、人間にはなれたのかい?」
「それが人間認定試験を受けたところ、今回も不合格でしたよー!」
「なんだ、嫌に元気だな。だがしかし、まだまだ人の痛みを分かりきれていないということか。」
「いえ、人の痛みは手に取るように分かるようになりました!ただ自分の痛みを感じなくなってしまったのです!なので不合格でも痛くも痒くもありません!ハッハッハー!」
「…バケモノめ。」
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