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2次関数グラフの複素数拡張

1. はじめに

数学は既存のルールに矛盾さえしなければ何をしても良いというアバウトな学問だ。生活をする上でよく見る数は実数(-5 とか とか 1.2 とか とか)だが、実数は自乗すると負にならないというルールがある。そこで自乗して負になる数を付け足して新しいルールが考えられた。自乗して-1になる数のひとつをiという定数で表す。実数とiの加減乗除で表される数は複素数と呼ばれる。この複素数という新しいルールを2次関数のグラフに適用するとなにがおきるかを考えていく。

Note that:
数学において「新しいルール」は何でも良いが、有用であるほどその体系は発展する。
電子や光は強度と位相の2成分を持つため複素数は現実世界を表すのに有用であり発展したといえる。

2. 2次関数のグラフの意味解釈

多くの人は以下のような問題を通して2次関数に触れる。

問題. 下記2次関数とx軸の交点のx座標を求めよ。

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x軸とは0次方程式y=0を意味するので、上記問題は因数分解なり2次方程式解の公式なりで下記2次方程式を解くと答えが得られる。(答えはx=-1, -3である)

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ここで、もとの2次関数のグラフを描いてみる。

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2次関数のグラフは横軸(x軸)の値から縦軸(y軸)の値を求めるのに有用である。下記グラフはx=2からグラフを通してy=15を求めている。

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一方で、縦軸(y軸)の値から横軸(x軸)の値を求めることもできる。先の問題ではy=0からx=-1, -3を求めることができる。(下記グラフ、いままでのグラフと縮尺が異なるので注意せよ)もっともこのグラフは解を知らないと描けない。

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3. 複素数平面xの導入

中学数学では暗黙のうちにxyは実数であることが保証される。ここでxが複素数だと2次関数のグラフがどうなるかを考えてみる。つまり実数x(1次元)と実数y(1次元)の2次元グラフから、複素数x(2次元)と実数y(1次元)の3次元グラフへの拡張である。xの定義域に複素数が含まれるときyの値域には複素数が含まれるため、素直に表すと4次元グラフが必要になるが可視化しづらいのでyは実数と仮定する。

複素数xを表すにはxの実数成分軸とxの虚数成分軸が必要になるため、x軸に変わってx平面を用いる。xyが実数のまま、もとのグラフを2次元(x軸とy軸)から3次元(x平面とy軸)に描き直すと以下のようなグラフになる。グラフ上の点が赤いほどy座標の値が大きく、青いほどy座標の値が小さい。

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上記グラフではxは実数の範囲の値をとっている。xを複素数、つまり実数成分と虚数成分の和、として拡張した3次元グラフは以下のようになる。


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下部の-10から6までの範囲の数直線がxの実数成分の大きさを表し、-4から4までの範囲の数直線がxの虚数成分の大きさを表す。2個の放物線が1点で交わったような馬の鞍の形状になる。ちなみに交点の座標は(xの実数成分, xの虚数成分, yの実数成分)=(-2, 0, 0)であり、x=-2+0×i, y=0 である。

このようなグラフを描いて何が嬉しいかというと、2次方程式の解の個数に対するグラフ的解釈が与えられることである。以下の式はxが実数の範囲では解を持たない。これは平方完成により(あるいは判別式による解の個数の判定から)明らかである。1項目が実数の自乗であるため、非負であり、そのような実数xは存在しない。

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4. 複素数解の可視化

下記2次関数のグラフはx軸(y=0)との交点を持たない。つまり、y=0としたときの2次方程式が解を持たないことを可視化している。

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xを複素数と見なしたとき、この2次方程式の解は以下の通り存在する。この「実数解は存在しないが複素数解は存在する」という状況をグラフ上で可視化するにはどうしたら良いだろうか。

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3次元グラフで表現すると解は黒い点の位置に存在する。

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つまり2次元グラフには存在しない複素数解の存在が可視化されることが面白い。(2次元グラフの虚数軸方向に解が浮かんでいるとみなすことができる)

5.まとめ

今回は2次関数のグラフのみを対象としてxの値を複素数に拡張した。この考え方は3次関数のグラフにも適用できるためそちらも試してみると面白い。



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