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教員研修履歴の一元管理を進めるニュース。臨時教員の立場や不足問題はどうなるのだろう?

9月4日、産経新聞から教員免許更新制に関するニュースが発信されました。臨時教員の未来を考える視点で感想を書いてみます。


文部科学省が教員免許更新制廃止後に導入を目指す新たな教員研修制度で、教員個別の研修受講履歴を管理するデータベースを都道府県の教育委員会ごとに整備する方向で検討していることが4日、関係者への取材で分かった。個々の受講実態を把握することで、効果的な教員育成を目指す。令和5年以降の新制度開始後にデータベースの共有を全国的に進め、研修の更なる充実を図る。

誰がどのような研修を受けたのか、記録して読めるようにする形。目的は効果的な教員育成とのこと。

新たなデータベースはまず、新制度開始にあわせて都道府県教委ごとに整備する。市区町村教委に加え、校長や教頭といった各学校の管理職もアクセス可能にする方向で調整していく。特に校長らが個別の受講状況を把握することで、各教員の長所を伸ばし弱点を補強する〝オーダーメード〟な育成を進めることを視野に入れている。

データベースは校長や教頭もアクセス可能にする予定。

これは不安。校長がパワハラ気質だった場合に暴走するのではないかと思います。ほとんどの校長は素敵な方ですが、中には怒鳴るしか人を動かす方法を知らない人間もいるので。


更新制は教員免許に10年間の有効期間を設ける制度で、期限前の2年間のうちに30時間以上の講習を受けて修了する必要がある。しかし、同省幹部が「体育の先生が国語の講習を受けても更新可能」と指摘するように、「30時間」の実績さえ積み上げさえすれば、各教員にとって効果的な講習を必ずしも履修する必要はなかった。

免許更新制で、いかにラクな講習を選ぶかを考える人は身近にもいました。次のような理由からです。

   ①やらされている研修でやる気がない
   ②魅力的な講習がない
   ③時間がないので負担の軽い内容を選びたい
   ④お金を払わされた時点で不満

③と④はまぁ置いておいて、根が深いのは①と②だと思います。教員って「やらされる研修」の他に、自分なりに自主的に研修してるんですよ。本を買ったり、図書館に行ったり、教育時事を追ったり。それこそ日々の授業の準備も研修です。授業準備は、モノや流れを用意する「準備」と、より良い教え方を考えたり調べたりする「研究」の2つに分かれます。準備は業務として行いますが、研究は自分の時間を使った「研修」と言えるのではないでしょうか。
少なくとも自分や周りの人間を見れば、教員は研修を自主的にやっているのです。

教員の自主的な研修は「各論」であり、更新講習で「概論総論」を学ぶことでより理解が深まるのでは?

と、そう考えてみたこともあります。が、10年に一度のペースでそれをやっても効果があるのかなぁというのが、一度更新講習を受けてみての率直な感想です。

知ってることばかりなんですよ。更新講習の内容って。「そのテーマは我々がすでに数年前に知って考えて議論した道だッ!」と言いたい。私にとっての更新講習はそんな時間でした。

同省が今年4、5月、現役教員約2000人に行ったアンケートでも制度のずさんな実態が明らかになっている。講習を選ぶ際に重視する点を聞いたところ、「とても重視する」の割合が最も高かったのは「受講会場」(61・3%)。「受講時期」(57・4%)、「講義内容」(40・7%)と続いた。
アンケート結果からは、資質向上に必要な講習ではなく、場所と時間を考慮して受けやすい講習を選ぶ傾向がみてとれる。「自分にとって本当に必要な講習を受けていない教員が多く、更新制が正しく機能していなかった」(更新講習を行う大学関係者)との指摘は根強い。ただ、更新講習の内容自体には教育現場からも省内からも高く評価する声が多く、長年、更新講習を無駄遣いしてきた側面がある。

場所と時間を考えて受けやすい講習を選ぶ傾向があったようです。

そりゃそうだ。早く更新講習を終わらせたいのですから。せっかくの貴重な夏休み。「やらされる研修」は手早くこなして、自分の研修に戻りたいのです。本を読みたいのです。興味のある講演会に出かけたいのです。

同省は新制度で、各教育委員会に加えて校長や教頭といった各学校の管理職が、期待する水準の研修を受けていない教員に職務命令で研修を受けさせることも想定している。こうした職務命令に背けば、地方公務員法が定める懲戒処分の対象になり、最悪の場合には、懲戒免職で教育現場を追われる可能性も出てくる。

研修を受けないと、受けるよう職務命令を出す。従わないと懲戒処分。

気になるのは、研修がどこからどこまでを指すのかです。例えば大学の講義室に座って話を聞くのと、その講師の本を自分で読んで文章にアウトプットするのと、私の中ではこれは同列なのですが、研修履歴としてはどう扱われるのでしょうか。


臨時教員と免許失効の問題はどうなるのかな?

ニュースを読んで一番気になったことは、現場にいない免許保有者の扱いはどうなるのだろう?という部分。まだ具体的な話は出てきませんね。

いまのような、働いていなくても10年で免許失効!という騒ぎにはならないとは思いますが、別の懸念はあります。

研修履歴のデータベースで人が評価される時代が来るのであれば、研修履歴が白紙の臨時教員は勉強不足と判定されてものすごい勢いで研修を受けさせられたり、職員室いじめの対象になったりする、アホらしい流れになる予感がします。

その臨時教員が、現場にいない間も自分で勉強をしていたとしても、それが研修履歴に残っていなければ、研修していない人間とみなされる。そんな流れになる気がします。

令和5年以降の導入を目指すとされているこの制度については、臨時教員との絡みについて、今後の情報を追っていく必要があるなぁと感じました。


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