フルサークルモーメント
どうやら来週クリスマス会をクラスでやり、プレゼント交換会が行われるらしい。
アメリカに来て3年が経とうとしていた。当時小学4年生の自分には、担任のミセスジャクソンが言っている事が何となくわかる様になっていた。
帰ってその事を母に伝え、車で15分ほどのところにあるレキシントンで1番大きなモールに向かった。
クリスマスプレゼント交換会をクラスの行事として行う。何を買えば良いのかわからない。
クラスには男子も女子もいる。
つまり両方無難に喜んでもらえるもの。そしてクリスマス感のある物。学校に持って行ってふさわしい物。
この3つをテーマにプレゼントを探す。真冬なので厚着だった上に店内の暖房がガンガン効いているためか?そしてなんとも言えない焦る気持ちも重なり、気がつけば汗をかいていた。
そこで思いついたのがクリスマスツリーに飾るオーナメントならば、性別関係なく喜んでもらえるのでは?
と、思い、アヒルがあしらわれたオーナメントを買うことにした。ラッピングをしてもらい、翌週のクリスマス会はこれで一安心と、ホッとした。
そしてクリスマスプレゼントの交換会が始まった。
ミセスジャクソンが、男女別々になって2つの輪を作る様にと指示をする。
え…男女別々?
GIジョーや、ホットウィールを手に男子がニコニコしながら座る。
僕の手にはちょっと可愛らしいクリスマスツリー用のオーナメント。
なんと言えない汗がまた滴る。
当たった人は絶対に喜ばない自信と確信があった。小4の男子が最も要らないプレゼントだ。
そしてプレゼント交換会が終わりそれぞれの手には他の人が選んだ小さなプレゼントがあった。
僕はアンディーがプレゼントに持ってきたGIジョーを手にしていた。GIジョーが欲しいとは小4になってから親にねだるのは恥ずかしいと思っていたので正直嬉しかった。
次の瞬間「こんなの、おんなのこのものじゃないかぁあっ!」と大声で叫ぶデイブの姿が。手には僕が選んだクリスマスツリーのオーナメント。
周りの男子もこんなの誰が選んだんだよセンスねえなという視線で哀れにデイブを見ている。
デイブは、ケンタッキーに来て一番最初に家に招いてくれたりして、仲良しの1人だった。
その光景はとてもショックで、恥ずかしくてもう消えてしまいたいと、思うほどだった。
男女別々という事を知っていれば、自分だってトランスフォーマーのフィギュアくらい選んでいたのに…
追い打ちをかける様にデイブはみんなにプレゼントを交換して欲しいと頼むが全員に断られていた。オレ含め…GIジョー欲しかったし。
子供って残酷だなぁ。その事は小さな心にチクリと刺した棘の様にクリスマスの時期が近づくと度々思い出していた。
その後デイブとは高校卒業するまで一緒に遊び、現在はシアトルで弁護士として働いている。
2019年に番組の取材でシアトルに行った際に久しぶりに再開を果たした。
そして明日から東京に遊びに来る。
連日FaceTimeなどで打ち合わせを繰り返し、気分がとても高揚している。
そしてその打ち合わせの際に、ウチの母が「小学4年生の時のクリスマスプレゼントにシュンからもらったオーナメントを毎年飾ってる」って言うメールが来たけど覚えてる?
とお母さんとのやりとりをスクショして送ってきた。
あれからもう35年近く経った。これぞまさに英語で言うフルサークルモーメント!ナイス!小4のオレ!
あ、台湾日記の続き書かなきゃ。
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