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コネヒトのVI刷新、あるいはロゴ制作のプロセスについて

コネヒトのVI(ビジュアル・アイデンティティー)が新しくなりました。

アートボード 1

今回機会があり、この楽しい取り組みに参加させていただき、アウトプットとしてはロゴやガイドライン、名刺なんかを作りました。

ここではVI決定に至るまでのプロセスや、ロゴの話なんかを書こうかなと思っています。

まずは、CIについて

さて、VIというからにはいきなりビジュアルの話がくるのかな、と思ったみなさん、残念でした。そしてすいません。

VIの話をする前には、CI(コーポレート・アイデンティティ)の話をしなくてはなりません。

CIとは企業の持つ人格のようなものです。

企業が内外から、どんな目的や考え方を持って、どのように立ち振る舞い、どのように見られるかを、まるで人のように定義する考え方であり、手法です。

なぜCIが重要かというと、CIによって企業はその独自性・特性を保ち、社会に認知されることで企業の価値を高めていくことができると考えられているからです。

いつもやってることや、言ってることが違う人と、付き合うのいやだし怖いですよね。そういうことです。

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CIを構成する要素として、

・MI(マインド・アイデンティティ)
・BI(ビヘイビア・アイデンティティ)
・VI(ヴィジュアル・アイデンティティ)

の3つがあります。

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それぞれ、理念・行動・表現(視覚的な)のアイデンティティを指しますが、これらが相互に働き、CIを形成します。

統一された理念が、行動の指針となり、表現を規定する。
統一された行動が、理念の遂行となり、表現を補強する。
統一された表現が、理念の浸透を助け、行動を強化する。

よく三角形の図で表現されたりしますが、それぞれに関連しあって、助けあって、CIひいては企業の価値を高めていくものだと考えています。

なので、VIを考えるときに、その企業の成し遂げたいこと、どうありたいかを理解し、深くCIについて考えなければならないのです。

個人的にVIというのは企業に服をコーディネイトするようなものだと思っていたりもします。

その人に似合っていて、個性を引き立てて、TPOにも合うみたいな服を選ぶような感覚です。

プロジェクト開始 / アイデンティティの理解

このプロジェクトは、僕が参加してからVI決定まで約4ヶ月かかっているのですが、すでにあったMI/BIの理解と自分自身への浸透まで、半分以上の時間をかけています。

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こちらは、チームで振り返りをやったときのタイムラインですが、ロゴを考えつつ、すでにあった企業ブランド分科会の参加、経営チームへのヒアリング、チームでのデザインの検討に多くの時間をかけています。

その企業が何をやりたいのか、どうしたいのか、っていうのをインプットして理解するのは、資料をいただければ1日もかからない、場合によっては30分かからないのですが、それを自分の中へ浸透させて、考えなくても反射的にデザインが降りてくる状態にするのはどうしても時間がかかります。

コネヒトの場合、インプットの過程において、

ビジョン≒MI「あなたの家族像が実現できる社会をつくる」

で、やるべきことは

1.多様な家族像が当たり前に存在する社会にすべく、問を立て続ける
2.みんなそれぞれのなりたい家族像の実現に必要な事業を展開する

ということが理解できました。

またヒアリングや定例の中で、キーワードとして頻出していたのは「多様性」「家族像」「社会」と記憶しています。

ここに、「子育て」「ママ」「女性」のような、旧来のコネヒトのイメージである主力サービスmamariが内包するイメージが含まれていないのがポイントです。

企業の事業ドメインを「ママ」から「家族」に広げ、より中性的、性差を感じさせないVIが必要であるということがわかります。

ロゴ制作 / 発散

さて、ここら辺まで理解を進め、そろそろ反射でデザインが浮かぶ、くらいにの段階でもやもやと手を動かす作業に入りました。

VIのアウトプットとしてわかりやすいのは、ロゴや色彩設計、キービジュアルなどで、そこから手をつけ始めましたが、その時のスケッチが残っていたのですが、元々手書きが苦手ということもあり、我ながらひどい。

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とはいえ、完成形となったビジュアルの元ネタみたいのは散見できるので、「Connehito」のCやOの形状をモチーフにしつつ、無機質ではなく、有機的な表現を指向していたことはうかがえます。

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アイディアは発散させつつ、発散されっぱなしだと決められなくなっちゃうので、こちらも並行して「Do / Don't」を作り始めました。

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インプット期間中に成し遂げた世界感を表現するために、やった方がいい表現、やらない方がいい表現を言語化したものです。

前述のコネヒトの進む方向に対して、例えば一般的に女性的なイメージをもたれがちなピンクや男性的な色は使わない方が良さそうとか、家族のとしてのモチーフも親と子供が手を繋いだような表現は避けた方が良さそうとか、多様性を表現するために抽象的な表現がいいのでは、、、とか

デザイナーに限らず、ステークホルダーの判断の助けにもなるので、ロゴを作るときなどはよく作っています。

ロゴ制作 / 収束

そして、荒い状態ですがロゴ案を数パターン出しました。一気に提出ではなく、Slackのチャンネルに思いつくままに投げていくスタイルで、1日1案とかそのくらいのペースです。

没案含む、その当時のロゴ案がこちらです。

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もちろん一人で捻り出したものではなく、チームメンバーの意見やフィードバック、単純に「こういうの見てみたい」的なアイディアを吸収してアウトプットしたものです。

こういう時は、どのモチーフが採用されても自信を持って出せるモノを作るのですが、だいたい推し案という、これに決まりそう、という肌感はあって、結果だいたいそうなります。

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少し話がそれるのですが、このロゴ案をみていただくと、社名の表記や、ロゴに添えたタグラインが、最終的に完成したものと違っています。

実は社名については、カタカナにするか英語にするか、はたまた社名変更するかまで、じっくり検討しながら作っていたんですね。

タグラインやメッセージも、かなりギリギリまでブラッシュアップして、現在のアウトプットがあります。

何を表現したいか、伝えたいのかをしっかり考えつくしておこなったリブランディングとVI刷新だったので、結果良かったと思います。

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数回の検討を経て、ロゴのベースの形状が決まりました。6案の中の右上のものです。

家族の「多様性」を表現、特定の性別を感じさせない、繋がりを感じる表現としてこの案が選ばれました。

ここから色とグラデーション・書体・形状のパターンを出して検討していきます。

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グラデーションの微妙な違い、書体、太さなどを思いつく限り試していきます。今見ても、どこが違うんだ?と思うほど細かく調整しています。

結果、滑らかなグラデーションを使った、初期案より細めの案に決定しました。

ロゴ制作 / 調整

概ね完成なのですが、ロゴとしての完成度を上げる、最後の調整が始まります。

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これは、最終調整をしている時のデータで、青い細かなラインはガイドと呼ばれるものです。

図としてバランスが取れるように数学的に整合性が取れるように配置をしたり、無駄なパスが無く滑らかな曲線になるようにしたり文字のバランスを整えたり...

僕はこの作業を「製図」と呼んでいるのですが、かなり時間をかけて、丁寧にやります。

当時のつぶやきですが、一つの曲線に数時間かけるくらいやります。

ロゴ制作 / 完成

そして完成したロゴがこれです。

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細かすぎて伝わらない、表現上のこだわりとしては

・安定感より軽快さを表現したかったので、正円をベースにしてはいない
・繋がりの表現として、こっそり「人」が隠れている
・柔らかさを表現するため「コネヒト 」のそれぞれ一部だけカーブしている
・グラデーションは対称にみえるが、左側の方が青-緑の色相が少ない
・∞っぽい形状に結果なったので、グレーの値は88

あたりでしょうか。

VI Fix / ガイドライン制定

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ガイドラインを作り、色やアイソレーションエリア(ロゴ周辺の余白)や、禁止例などをまとめて、一端のアウトプットは完成です。

今回のガイドラインには、個人としては初の試みとして、表紙にバージョン情報を入れています。

VIは規定したらそれで終わりでは無く、浸透や運用の方が大事なので、作ったら作りっぱなしでは無く、常に変化し進化していくものというのを表現したかったからです。

終わりに

あまりVIとかロゴ制作のプロセスって公開されないなあという気持ちと、

新規のロゴデザインは山ほどやってきたのですが、外部のデザイナーとしてVI刷新をやるというのは初めてで、面白い仕事をさせていただいたなあ、というコネヒトへの感謝の気持ちで書きました。

それではまた!

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