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デザイナーはユーザーに寄り添いすぎてはいけない

デザイン・ドリブン・イノベーションという本があり、読んだところ色々と腑に落ちるところがあったので書いてみます。

この本ではスターバックス、任天堂、Apple、ALESSIなどの企業を取り上げながら、企業戦略としてデザイン・ドリブン・イノベーションの必要性を説いています。

これは雑にいうと、ユーザーの意見を吸い上げ、課題解決をするのみでは、真に新しい価値のあるものは生み出せない、という論旨です。

前述の企業の例でいうと、スターバックスはコーヒーショップに居心地の良い空間という価値を生みましたし、任天堂はWiiでゲーム体験の中に体を動かしみんなで遊ぶという提案をし、AppleはiPhoneで世界中の人々のライフスタイルを一新し、ALESSIはキッチン用品に機能性だけではない遊び心や楽しみを付加しました。

これらは、念入りなユーザー調査やマーケティングのもとに発生したアイディアではなく、ユーザーに対する「提案」であり、イノベーションを起こす製品ないしサービスを産み出すのは、提供側の強い意志によるものだとこの本では語られています。

もう1つだけ例を挙げると、Appleはある時期からノートブックに光学ディスクのドライブを搭載するのをやめました。これはMacBookを薄くしたいからでもなく、光学ディスクいらないよというニーズからくるものでもなく、「これからは音楽や映画はデータ配信で」という強烈な「提案」だったことが知れ、結果そのような時代になっています。

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ここまでが前置きなのですが、デザインは課題解決である、とも言われます。課題解決の手法はある程度、一般化してきていて、ユーザーと向き合い、調査し、課題を発見し、施策をたて、測定し、また調査し、要はPDCAをまわすというやつです。

デザイナーはこの考え方というか「課題解決脳」みたいなものが発達しすぎていて、新しい価値を産む、という思考が弱くなっているのでは、という懸念があります。

もちろん、ユーザーの課題解決ができること、そしてその手法を知っていることは重要で、最も大事な仕事であると思うのですが、それが発想の足かせになっていて、よりよい「提案」をできなくなっている可能性もあるのかな、と思うのです。

ユーザーの課題の解決に集中しすぎたために、破綻したサービスをいくつかみています。

ユーザーの声を聞き、課題に向き合い解決するだけでは産み出せない価値もあり、これからのデザイナーはそのレベルの視座を持って「提案」していく能力が必要になるのかな、と思っています。


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