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アウトプットで話をしよう、あとロゴデザインについてちょっと

アル株式会社で、ちょっと前からCXO(Chief eXperience Officer)という役割がついていて、CxOと紛らわしすぎてアレなのですが、体験全体の責任者みたいな意味合いがあります。

「体験設計がー」「組織課題がー」「QAがー」みたいなことも必要に応じてやるんですが、デザイナーとして手を動かして実際にアウトプットすることもやっています。むしろ軸はずっとそこで、IllustratorとFigmaを行き来する毎日です。ショートカットの違いに日に2回はイラッとしています。

アウトプットとしてわかりやすいのは、UIデザインやビジュアルのデザイン、ロゴデザインあたりの「完成されたもの」なのですが、僕の場合はチームの議論や検討のプロセスの材料としてアウトプットを出すことが多いです。

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たとえば、既存の画面に機能を追加することになって、チームで議論が高まってくると、いろいろな懸念がでてきて、他の機能との整合性が...この機能このモジュールの下に入れればいいんだっけ...そもそもユーザーにとってこの機能...みたいな話がでてきます。

たいていの場合、具体的な話の検討から、抽象度の高い話に戻り始めた時は議論が空転していて、メンバーの想像している完成図がそれぞれ微妙に違うことが多い、というのが経験としてあります。

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みんな完成形が丸いことはわかっているけど、それぞれ完成形だと思っているのが、楕円形だったり正円だったりほとんど角丸だったりする、そういう状況です。

そういう時は、要件がふんわりしている時でも「いったん画面作ってみますね!」と言うようにしています。

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そのアウトプットが正解でなくても、一気に具体的な画面としてアウトプットすることで、微妙な考え方の違いを可視化することができて、同じ方向で議論できるようになること、プロダクトの開発に現実感が生まれるため、メンバーが具体的な開発イメージを持ちやすくなり、その後の進行がスムーズになるというメリットがあります。

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この時点のアウトプットとして大事にしているのが、可能な限り「完成形に近い見た目」かつ「早く作る」です。

完成形に近いという点については、そのままデザインを実装されても問題ないレベルでアウトプットすることを心がけています。

なぜ「完成形に近い」のかというと、ワイヤーフレームや手書きのラフスケッチはプロトタイピングの手法としてもちろん有用ですが、実は受け取り側の「見るスキル」や「脳内補完」が必要で、その能力に差があり、場合によっては認識の差を補正できないケースがあるからです。

もうひとつ「早く作る」と矛盾しているように思うかもしれませんが、「早く作る」はデザインツールでコンポーネントや素材を事前に用意したり、ツール自体に習熟したり、良いアウトプットに日々触れてストックしておくことである程度できるようになるので、日々鍛錬あるのみです。

「早く作る」が大事なのは、議論でメンバーの脳が活性化している、言い換えればコトに集中しているそのタイミングを逃したくないというのが理由です。議論も建設的になりやすく、アウトプットが本質的な深い議論に導く材料になります。

場合によっては無駄になるかもしれませんが「チームの議論や検討のプロセスの材料としてアウトプットを出す」というのを大事にしているので、手を動かすことを大事にしている派です。

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ちょっと具体的なケースを紹介します。

アル社が展開している00:00 Studioというサービスがあります。

漫画家さんやクリエイターが、作業中の動画を配信して、ユーザーはそれを視聴・支援できるサービスで、この記事を書いている時点でそろそろ本格的なリリース...というところです。

開発は数ヶ月かけて進んでいて、そろそろサービス名を決めないとね...という話が持ち上がりました。

余談ですが、サービス開発では、サービス名が決まるのが開発工程が2/3くらい進んだ後、極端だとリリース直前、みたいなケースが往々にしてあります(そういうプロジェクトにアサインされがちという説も)。

で、ブレストを数回繰り返し、いくつかのキーワード、ネーミングが絞り込まれました。

「漫画家さんやクリエイターが、作業中の動画を配信して、ユーザーはそれを視聴・支援できるサービス」なので、キーワードとして

- WiP(Work in Progress) / 作業中を意味する、開発ではよく使う言葉
- Creator / クリエイター向けのサービスというわかりやすさ
- Studio / 何かが生まれる場所
- Party / 何か楽しそうな感じ
- 00:00 / 動画のサービスなので、再生開始前の00:00

というのが出ました。

どのキーワードもサービスの本質を要素として持っている言葉なので、目に見える形にしたほうが議論が進むな、逆にアウトプットがないと停滞しそうだな、という感覚があり、最後のブレストの後、ロゴデザインにささっと落とし込んでいきます。

そのブレスト直後のSlackがこちら。

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ネーミングを考えるブレストから1時間、まだ脳が活性化しているタイミングで、5案出してみました。それぞれビジュアル的な傾向の違うもので、サービスの本質から外れないようにアウトプットしました。

その後の議論の結果、

00:00というモチーフが

・動画の再生
・始まり
・人の目に見える=配信

というようにコンセプトを体現しているという理由で、00:00 Studio という名前に決定したのですが、確か初稿だした当日中に決定に至っていた気がします。

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結構早めに案が絞れたのですが、ロゴデザインについては、

・コンセプトの理解・咀嚼
・アイデアの発散
・アウトプット
・案を絞る
・最終調整

みたいな工程をとることが多く、最初の「コンセプトの理解・咀嚼」が全工程の8割から9割くらい時間がかかるもので、このケースではサービスの開発に初期から参加していたため、その時間を省略できたので早かった、というのもあります。

アルではないのですが、お手伝いしている会社のロゴリニューアルを担当した時は「コンセプトの理解・咀嚼」のために定例に参加させてもらったり、いわゆるヒアリングの工程に2ヶ月くらいかけたりもしました。

話がそれますが、ロゴの最終調整の工程はほとんど製図に近く、ロゴがロゴであるために調整するのは結構困難な作業だったりします。

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ロゴの余白取りとかもはや数学です。ほとんど分からないレベルの調整なんですが、こだわっちゃうデザイナーあるあるです。

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こんな感じで、アウトプットを「完成形に近い見た目」かつ「早く作る」を日々意識しています。

「プロジェクトが停滞してるな」とか「議論の方向性がズレがちだな」というときには、無駄になるかもだけどアウトプットしちゃうのがおすすめです。

それではまた。




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