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満たされぬオンラインライブと、楽しかったヨントンの日々。2023/01/31

〜2021年に解散した韓国のアイドルグループの推しの思い出を綴るnote〜

パンデミック真っ只中にデビューした推しは、デビューから半年経って、ようやく日本向けのオンラインライブをすることになった。

デビュー前は、新大久保での長期公演がメインの活動だったから、会おうと思えば会いに行けるアイドルだった。

オンラインライブの開催はとても嬉しかったけど、果たしてどのくらいのファンが見るだろうか。
直接会えてコミュニケーションがとれるから新大久保に通っていたというファンがほとんどだから、目線やレスが貰えるわけでもないのに、オンラインライブを見るとは思えなかった。

それに、SHOWBOXの特典会はチェキ1枚1,000円でサインを書いてもらいながら会話が出来る。
あまり長く話しているとスタッフに注意されるが、基本的に制限時間は無い。長く話したい人は複数枚のチェキを撮って、その分長く話す。
常識の範囲内であれば、割と緩かった。

オンラインライブの後にヨントン(映像通話)があって、1分から5分までを選択出来た。
ヨントン付きのチケットは、オンラインライブと1分のヨントンで6000円、5分のヨントンは18000円だった。(人数制限あり)

オンラインライブだけを見る人も中にはいるだろうけど、おそらく視聴者のほとんどはヨントン付きのチケットを買うと思う。

オンラインライブは画面の横にチャット欄があり、ファンがライブ中に自由にコメントを投稿することが出来た。

投稿するのは、SHOWBOX常連と思われるヲタクたちだった。
とは言ってもコメントを書き込んでいたのは、10人もいなかったと思う。

オンラインライブはほぼ毎週末あって、コメントを書く人は毎回同じだった。

知り合いからLINEが来て、一体何人くらい見てるんだろうという話になったが、彼女の推測だと「30人もいないだろう、もしかすると20人も怪しいのではないか」と言っていた。

ヨントンに参加しているファンも毎回ほぼ同じだったと思う。
私は推しと2推し両方とヨントンしていたが、画面に待機人数が表示されていたから、おおよその参加人数は推測できた。

最初の頃は、メンバー1人あたり10人前後のファンがヨントンをしていたようだが、それが毎週続くにつれ参加者は減っていった。

あるメンバーは、ヨントンが1人だった時もあったようだ。

そんな状況が数ヶ月続いた。

オンラインライブとヨントンは、SHOWBOXに慣れたファンにはコストパフォーマンスが悪すぎた。
そしてそんな状況は、彼らのやる気も奪ってしまったような気がする。

毎回変わり映えのしないセットリストやトークの内容。なぜもっと工夫出来ないんだろうと、もどかしくなる。
そんなモチベーションの低さは、見てる側に敏感に伝わるものだ。

オンラインライブは、渡航制限下でも活動が出来るというメリットはあるが、致命的に新規のファンは増えない。

ファンでも無いのにチケットは買わないだろう。

他のグループは時々、無料のオンラインライブをしていたが、推しのグループはしなかった。
まぁ、、例えやったとしても、無料ライブを見にくる視聴者が有料ライブを見に来る確率は、ゼロに近かったと思うけど。

オンラインライブだけが、推しを応援する唯一の手段だったけれど、日に日にモチベーションが落ちて行くメンバーたちを見るのは気分が乗らなかった。

トークコーナーは、毎回ゲームばかりでつまらなかった。私はTwitterやインスタを見ながら、ゲームが終わるのを待った。

楽しかったSHOWBOXの記憶が、どんどん遠くなっていった。私は半ば義務感を感じて、毎週のオンラインライブのチケットを買っていた。

いつになったら推しに会えるだろう。
その時まで活動出来るように、ただそれだけを願ってチケットを買い続けた。

唯一の救いは、推しのヨントンは毎回楽しかったことだ。
いつも笑わせてくれて、幸せな気分になれた。

ある時、推しは「ハルさん。コメント読みました。ぐふふ」と嬉しそうに言った。

「え?」と何のことかわからなくて聞き返した私に、推しはイタズラっぽく笑いながら、「○○○○」と私のアカウント名を口に出した。

それはファンカフェ(公式ファンサイト)や、オンラインライブで使っていた私のアカウント名だ。

オンラインライブの前日に、ファンカフェに手紙を投稿したから、そのことを言っているようだった。
(ファンカフェでは、会員なら誰でも見れる形でメンバー宛の手紙を投稿することが出来た)

ほとんどの常連ファンは、自分のアカウントがメンバーにわかるように、本名か本名に近い名称にしていたけれど、私はあまり他のファンに知られたくなかったから、全く違う名称を使っていた。

でも、推しなら私だとわかってくれるんじゃないかな、と期待を込めてつけたアカウント名。
やっぱり推しは、わかってくれた。

ファンカフェではごく稀に、ファンの投稿にメンバーが返信コメントをつけてくれる時があった。

推しは、私のコメントに何度か返信をくれた。

返信がつくのは滅多にないことで、誰かのコメントに返信がつくと、自分も返信を貰おうというファンが相次いでコメントを投稿していた。
良くないとは思いつつも、その時は自分だけに返信をくれたことが嬉しくて幸せだった。

マンネリのライブは退屈だったけど、それ以上にヨントンが楽しかったから、私はチケットを買い続けていたのだと思う。
画面越しの推しは、いつも明るくて楽しくて、グループの将来に対する不安など吹き飛ばしてくれたから。

いつかきっとまた推しに会える。
それだけを信じて私は、あの日々を過ごしていた。

叶わぬ願いだったけれど。
それはきっと幸せな日々だったのかもしれない。



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