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もう会えなくなるなんて思ってもいなかった。〜最後のクリスマスコンサート〜①

〜2021年に解散した韓国のアイドルグループの推しの思い出を綴るnote〜

2019年のクリスマス。

SHOWBOXの最後の公演の2日後、彼らは都内の某ホールで単独コンサートを開催した。

去年に引き続き、2度目のクリスマスコンサートだ。

翌日には韓国へ帰国してしまうから、しばらく会えないとは思っていたが、まさかこれが推しに会うのが最後になるなんて思いもしなかった。

世界的な感染症のパンデミックが、ゆっくりと日本にも近づいていた。

前回のクリスマスコンサートは、スペシャル特典として推しメンバーとのハグ会があった。
noteにも書いたが、私はハグ会なんてメンバーにさせることに嫌悪感や同情を抱いていたから、特典会には参加しなかった。

2万円のハグ会の特典チケットはあっという間に売り切れ、熱に浮かされたような興奮したヲタクたちの異様な雰囲気が漂っていた。

それまで頑なにファンとの接触チェキを禁止していた運営の突然の方針転換に、私は深く失望した。
この先、推しは他の新大久保アイドルのように接触チェキ会をさせられるのだろうかと、憂鬱な気持ちになった前回のクリスマスコンサート。

しかしそれは私の杞憂に終わり、ハグ会をしたのはその一度きり。
ハグ会の有無でチケットの売れ行きは目に見えて違っていたから、もしかして開催直前にハグ会をやると発表するのではないかと心配していたが、2度とやることは無かった。
一説には、メンバー達がハグ会をすることを拒否したのではとヲタク達の間で囁かれていた。

それ以降のチェキ会もメンバーへの接触行為は禁止のままで、推しが接触アイドルになることは無かった。

ハグ会の無いクリスマスコンサートに、去年とは違い私はウキウキと公演を楽しむことに集中出来た。
(不満タラタラなヲタクもいたけれど、、、)

クリスマスコンサートは1日2公演。
もちろん私は両部のチケットを買った。

SHOWBOXのような小さなライブハウスも楽しいけれど、広いホールのコンサートは格別だ。アイドルとしての推しを実感出来るから。

1部の席は、前から3列目の中央付近だった。
推しはびっくりするくらい目線をくれて、ドキドキしてしまった。
嬉しいけど、恥ずかしい。

推しはよく客席を見ないとか、どこを見ているのか目線がわからないと言われていたが、私はそうは思わない。

こちらが怯んでしまうくらいじっと目を見て歌ってくれる。

そんなことを誰かに言えば、勘違いしてると陰口を言われそうだから、仲のいい友達にしか言ったことはない。

この日も隣に座っていた仲良しのヲタ友が、「推しくん、ハルちゃんのこと見てたね〜」と気づいてくれた。

話は2日前に遡る。
SHOWBOXの最終公演の帰り道、同じ方向に帰る同担さんが一緒に帰りませんかと言うから、途中の駅まで一緒に帰ることになった。

私は仲良しのヲタ友以外には推しの話はしないようにしていたから、自分から推しの話はしなかったが、その同担さんは私に自分と推しの話を聞いてほしいようだった。

今までどんなことを推しと話したか、どんなレスを貰ったか。

私より一回り以上も年下の同担さんの話を聞きながら、可愛らしいなと素直にそう思った。

彼女は、自分のことを少し同担拒否っぽい傾向があると私に言った。だから、推しの話を同担とは話さないのだ、と。

彼女は、私のことを同担として見ていないのかもしれない。一回り以上も年上のおばさんだから、同担として眼中に無いのかも。

そんなことを後でヲタ友に話したら、同担だと思っていないなんて絶対にないよと笑っていた。
同担拒否だと言いながら、どうしてハルちゃんに推し君の話をしたがるんだろうと不思議がっていた。

彼女は古参のファンだったが、コロコロと友達が変わった。いつも一緒に行動していた子達と、ある日突然プッツリと話さなくなっていた。

たぶん、、、お互いの推しの話を自慢し合ううちにだんだん険悪になってしまうのではないかな、と彼女の話を聞きながら感じた。

私は普段、周りと推しの話をしないから、彼女の話が新鮮だった。

彼女は推しとほぼ同い年だ。
話し方がツンツンしていて、推しに対して強がっているような冷めた言い方をするけど、実はだいぶ推しに拗らせているようだった。

堰を切ったように私に推しの話をしたがるのは、誰かにその想いを吐き出したかったのかもしれない。
それとも単に、自分の方が上だとマウントしたかったのか。

彼女の真意はわからなかったが、推しが他のファンにどんな対応をしているのか知ることが出来た。

彼女に対しては少し冷たく対応していたようだ。私に対する対応とは全く違っていて、若いファンにはきっと、そういう対応の方がウケが良いのだろう。
(冷たい=アイドルとしてではなく本音で対応してくれてる、と受け取っているような気がする)

彼女は、こう言っていた。
「推しは目線がどこを見ているのかよくわからないから、近くに同担がいない場所に座るようにしてる」と。

私は「そうだよね」と言いながらも意外な気持ちでその話を聞いていた。推しは、あんなにじっと見つめて歌ってくれるのに、彼女に対してはそういう訳では無さそうだった。推しが目線を送るのはどういう基準なのだろう。

そして、ずっと心の中で疑心暗鬼になっていたことも少し解消された。

私が見に行く日に合わせて、リクエストした曲をソロステージで歌ってくれたことが、少なくとも彼女にはしていないようだ。

自分だけにしてくれたとは思わないけど、顔のわかる誰かの為に同じことをしていたら落ち込みそうだったから、内心ほっとした。
心の中でそんなことを喜ぶなんて浅ましいな、と情けなくなるけれど、やっぱり本音は嬉しかった。

彼女はいつも、推しのソロの日を何とか聞き出して、仕事の休みをもらって聞きに行っていたと言っていた。

そう、やはりファンにとって推しのソロステージは特別だ。
だから、推しが私の為にしてくれたことは言うまいと胸に誓った。

彼女はもちろん、クリスマスコンサートにも来ていた。トイレでいつもより念入りにメイクをしていた。
推しに可愛いと思われたいという気持ちは彼女も私も同じ。

若くてもおばさんでも、ファンという土俵では同じ立場、同じ気持ちなのだ。

そして皆、このクリスマスコンサートが自分の推しに会う最後の機会になるなんて思いもしなかっただろう。

ヲタクたちそれぞれ特別な想いを胸に、コンサートは進行していった。

つづく。

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