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【大月書店通信】第175号(2023/8/31)

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8月は戦争の記憶が呼びおこされる季節。メディアでの特集や特別番組、地域でのさまざまな催しが企画されます。戦争体験を語れる人が減り続ける中で、今後の継承に危機感をもつ人も少なくありません。

一方で、今年はもうひとつの大きな節目も。それは、明日9月1日、1923年の関東大震災から100年の日です。

震災の被害に加えて、朝鮮人・中国人やそれに誤認された人、そして社会主義者らが多数虐殺された歴史は消すことができない事実です。にもかかわらず、右派は執拗にこの歴史を否定しようとし、小池都知事は朝鮮人犠牲者の追悼式典への追悼文を2017年以来、頑なに送ろうとしていません。

100年目となる今年、在日コリアンはじめ多くの市民が、あらためてこの事件を記憶しようと取り組み、若い世代にもその動きは広がっています。それは、今風に言えばフェイクニュースによって少数者への差別意識が増幅され、憎悪犯罪(ヘイトクライム)によって罪なき人々が生存を脅かされるという現象が、現代に生きる私たちにも現実味をもって感じられるからではないでしょうか。

8月15日をめぐってメディアや公的な場で語られる言葉の1割でも、私たちは9月1日について語り、記憶しようとしてきたでしょうか。この2つの日付の間にある何かこそ、日本人が無意識に忘れようとしてきたものかもしれません。

9月23日に開催する『ヘイトをのりこえる教室』刊行記念イベントでも、この事件を記憶する意味と、現在も続く差別と歴史修正のバックラッシュについて著者にお話しいただきます。ぜひご参加ください。

◆風巻浩・金迅野[著]『ヘイトをのりこえる教室――ともに生きるための
レッスン』

◆須田努[編]『社会変容と民衆暴力――人びとはなぜそれを選び、いかに語られたのか』


【新刊案内】『これならわかる台湾の歴史Q&A〔第2版〕』ほか8月の新刊4点

8月の新刊です。お近くの書店にてお求めください。(定価はすべて税込)

●注目高まる台湾の通史が1冊で丸ごとわかる
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『これならわかる台湾の歴史Q&A〔第2版〕』
三橋広夫[著]1,760円

中国との緊張関係の一方で、デジタル化やジェンダー平等などの先進性でも注目される台湾。先史時代から日本統治、国民政府から民主化に至る通史に、ひまわり運動以降の変化と現状を増補。複雑な歴史がこの1冊でわかる。

●新型コロナに立ち向かった自治体職員の証言
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『新型コロナ最前線ーー自治体職員の証言 2020-2023』
日本自治体労働組合総連合[編]/黒田兼一[監修] 1,650円

「新型コロナ感染者」確認・発表。自治体のすべての部署が新型コロナと立ち向かうこととなった。保健所、救急、医療機関。福祉、学校、学童や保育所、ごみ収集などの現業、本庁関係。そこから学び、次世代へ現場から生の証言で綴る。

●特集=教師の学びを問い直す
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『月刊クレスコ 9月号(no.270)』
全日本教職員組合 クレスコ編集委員会[編] 550円

中教審でも「主体的に学び続ける教師」「協働的な教師の学び」が推進されているが、そもそも教師の研修権とは何か。官制研修にはない自主的研修の魅力にせまり、公立や私学、若手など、創意工夫した各地のとりくみを紹介する。

●特集=座談会「学生たちがみる テレビ70年」
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『放送レポート 9月号 no.304』
メディア総合研究所[編] 550円

●ドキュメンタリー台本●番組批評●制作者の素顔●ラジオの現場から●スポーツとマスコミ●映画の中のマスコミ●話題の本から●放送をめぐる動き ほか

【話題の本・本の話題】

平和の棚の会ブックフェア開催
関東大震災100年 あのとき何が起きたのか

2023年9月1日は関東大震災から100年になります。震災による多くの犠牲者が出たとともに、流言蜚語が飛び交い、多くの朝鮮人等が虐殺されました。しかし小池東京都知事を始めとして都や区、関東各県などはこの事実を認めていません。あの日、あの空の下で起こったことを忘れないために、より多くの人たちに知ってもらいたいと思い、関東大震災と大正時代の背景の書籍を、また昨今、震災や甚大な水害が多発していることもあり、震災・防災・自然災害に関する書籍もご用意しました。(フェア趣旨文より)

開催店舗
小山助学館本店(9月下旬~)ほか

今後の開催情報が分かり次第、大月書店のTwitterにておしらせします。

最近の新刊の書評掲載

●中西新太郎・谷口聡・世取山洋介[著]『教育DXは何をもたらすか』
『教育』9月号

●後藤道夫・中澤秀一・木下武男・今野晴貴・福祉国家構想研究会[編]『最低賃金1500円がつくる仕事と暮らし』
『住民と自治』9月号

●渡辺考[著]『沖縄 戦火の放送局』
毎日新聞8月27日

●関口竜平[著]『ユートピアとしての本屋』
『ジャーナリスト』(JCJ発行)
朝日新聞『好書好日』8月30日

●風巻浩・金迅野[著]『ヘイトをのりこえる教室』
毎日新聞「私たちはどう生きるか ヘイト克服の教材、教育者らが出版」
8月8日

●岡本央 [写真・文]『火のトンネル』
東京新聞『東京すくすく』8月9日

●岡本央 [写真・文]『赤いボタン』
西日本新聞・読書面ビジュアル「本」 8月5日

●重松理恵 [著]『読んで旅する海外文学』
中国新聞 8月29日朝刊

【イベント】

『ヘイトをのりこえる教室』出版記念イベント開催決定

7月に刊行した『ヘイトをのりこえる教室――ともに生きるためのレッスン』の刊行記念イベントを神保町の韓国専門書店「チェッコリ」で開催します。

ゲストには在日コリアン3世でラッパー・詩人のFUNIさんをお迎えします。
アイデンティティに悩んだ青年時代に、金迅野さんから大きな影響を受けたというFUNIさん。世代の異なる3人の経験から、過去と現在のヘイト/差別のありようと、それを「のりこえる」道を語り合っていただきます。昨年、東京都の人権プラザにおいて上映予定だった映像作品《In-Mates》(飯山由貴さん制作、FUNIさん主演)が、関東大震災時の朝鮮人虐殺への言及を理由に都の人権部から上映を禁止された事件を受けて、イベント内で《In-Mates》の上映も行います。ぜひご参加ください。

『ヘイトをのりこえる教室』出版記念イベント
「ジェノサイドの100年後を、ぼくらはどう生きるか」
登壇者:
金迅野(在日大韓基督教会横須賀教会牧師、立教大学特任准教授)
風巻浩(元高校教員、都立大学特任教授)
FUNI(ラッパー、詩人)

日時:2023年9月23日(土)17:30~19:30
参加費:ベント参加券1,650円/イベント参加+書籍付き券3,720円(税、送料込み)
定員:会場20名+オンライン50名
※書籍はサイン入りでイベント終了後に発送します
※会場参加者はイベント終了後、サイン会を行います
主催・会場:韓国の本とちょっとしたカフェ CHEKCCORI(チェッコリ)

詳細・ご予約はこちらから

性教協主催 9.18緊急シンポジウム「多様性と包括的性教育を考える
~あらたなトランスジェンダー・包括的性教育バッシングにストップを」

(開催告知文より)
「LGBT法」をめぐって、あたかもトランスジェンダーは女性の安全を
侵害する危険な存在であるかのようなデマとヘイト言説が、SNSやチラ
シなどによって大量に流布されました。それと歩調を合わせて、「包括
的性教育はトランスジェンダーや同性愛を奨励し、伝統的家族を破壊す
る」などという「包括的性教育」へのバッシングが始まっています。デ
マを打ち砕き、分断を許さず、人権教育としての包括的性教育を推進し
ていくことを願って緊急シンポジウムを開催します。

今年の12月に緊急出版をめざしている「『性の多様性・包括的性教育バ
ッシング ホントのことが知りたい 50のQ&A』(仮題)の共著者が登
壇し、性教育バッシング、トランスジェンダーバッシング、世界と日本の
包括的性教育の展望などをめぐって幅広く、縦横に語ります。

主催:一般社団法人“人間と性”教育研究協議会(性教協)
日時:2023年9月18日(月・祝)14時~16時半
会場:With Youさいたま 埼玉県男女共同参画推進センター 4階視聴覚
セミナー室
会場参加とリモートのハイブリッド開催
参加費(会場・オンライン参加同じ)一般:1000円、性教協全国会員:
500円、学生・ユース(35歳以下)障がい者、障がい者介助者:無料

参加の申し込みは下記リンクから

【編集後記】

夏になると実家の母と電話で恒例の押し問答が始まります。「エアコンつけてる?」「今日は風あるねん」「そやから今何度?」「んー、もう峠越えたわ」(意味不明)7月末に帰省して、リモコンの捜索から開始。さあつけようと思ったら電池切れ。この夏一度もつけていなかったことがバレバレでした。高齢者にとっては冷たい風が身に沁みるのか、はたまた染みついた節約癖か…。夏中繰り返されるやりとりです。今年はひと際長い。我が家の平穏のためにも、秋よ来い!(千)


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