ふかふかの毛布で木を巻いて
10月11日、公園での移植の現場にお邪魔した。
この公園は都内でもかなり千葉寄りの場所にある。広報は現在諸事情により運転ができないので、電車で移動した。
現場の最寄り駅に着くまで3時間かかった。
3時間。飛行機だったら福岡に着いている。
しかし、そこまでの時間をかけてでもこの現場に行きたかった。
普段、弊社の仕事は剪定や伐採、除草などが多い。
木を切り倒したり、枝を軽くしたり。逆に言えば、幹までは手を加えても根っこまで触る作業はほぼない。
しかし今回は移植、つまり生えている木をそのまま別の場所に植え替えるのだ。
もちろん植え替えなので、木の根っこをうまい具合に残して移動させなければならない。
どれも立派な木だ。人間の手では動かせないので、ユンボを使った大掛かりな作業になる。植木や花の植え替えとはわけが違う。
これは見たいでしょ。
現場は駅から25分ほど歩いた公園。この地域は道に沿って公園があり、その端の方が今回の現場だ。
到着すると、柵に覆われて職人さんたちがバタバタしているのが見えた。
柵の外から少し眺めていると、社長がユンボで木を引き倒している。
この距離で既に大迫力である。
中に入ると、様々な業者さんがそれぞれの場所で作業をしていた。とても広い公園なので、改修工事もこうして一度に進めていかないと間に合わないのだろう。
作業の邪魔にならないようにそろそろと歩くと、穴ぼこだらけの場所についた。壮観だ。
根の周りの土をユンボで掘り、丸くなったら木に紐を括り付け、移動できるようにユンボで引き倒すという作業だ。ユンボ大活躍。花などの植え替えもスコップでやるし、その規模デカバージョンといったところか。
社長がユンボで木の周りの土を掘り進めていた。
かたい基礎のようなところに当たると、ガンッと音がする。中々の迫力だ。そしてユンボが後ろに傾く度、ど素人の私はそのままころりんといかないかヒヤッとする。
掘られた土は木の周りに積まれ、続々と土の山が生まれていく。
私が子供だったら大はしゃぎだったかも。
木を引き倒すとき、幹を傷つけてはいけないので、毛布を幹に巻き付けた上から紐を括るのだが、職人さんたちがふかふかの毛布を持って駆けていく姿は不思議なものがある。
木も毛布を巻き付けられたことはないだろうな。
人類には毛布ってもんがあってね、これがふかふかなんだよ。
造園業の広報を始めてから、木が経験したことないであろう場面をたくさん見られて嬉しい。空を飛んだり、毛布を巻いたり。
それだけ造園業って木を大切に扱う仕事なんだろうな、と思った。
いよいよ木を引き倒す。
ユンボのショベルの部分に紐をかけ、準備完了だ。
ユンボがゆっくり後退しながら、アームで木を引く。
他の業者の作業の邪魔にならないように、重機が通れるようになど様々な配慮が必要なので、木を倒す向き、角度なども慎重に調整していく。
この角度はだめだ、となるとユンボが移動してまた別の角度から引く。紐の位置がだめだ、となるとまた毛布から巻き直す。かなり大掛かりかつ手間のかかる作業だ。
バタン!と勢い良くいかないように、静かに静かに倒される。
意外と倒れる時の音はしない。伐木の時のような地鳴りほどのものとは言わずとも、もう少し音がするものだと思っていたのでびっくりした。
普段の剪定・伐採や除草の作業の方がいろいろな音がしている。
規模は大きいのに音が静かなのが意外だ。地面掘って基礎に当たる時くらいしか大きな音がしていない。
このあと、さらにユンボで操作しながら、角度の調整などを行っていた。
なんだか終始細やかな作業だ。
木を枯らさないよう、傷つけないよう、移した場所でしっかり育ってくれるようにする。
移植とは実に繊細な作業を大きな重機で行う、難しい作業なのだと実感した。