よわむし
15歳のあの日、私は高校生になったばかりでした。
友達と女子高生らしく遊びたい。恋もしたい。どんな大人なるのかな?って自分の将来をドキドキしながら明るく夢見てる普通の女の子でした。
あの日、私は意識を失った夢の中で生きるか死ぬかの選択肢を自分に迫りました。
とても不思議な状態でした。少し気を緩めると私の命が消えて行きそうになっていたからです。だから、選択肢を迫る状態だと判断しました。表紙にある「死んでもいいや」という言葉はその夢の中での言葉です。
あの時、その夢の中で生きようと決めました。
それでも私の命は消えていきそうになる。
私は必死に生きたいと叫びました。
いくら叫んでも私の命は消えて行こうとする。
だから「生きろ!」と強く何度も叫びました。
どれほどの恐怖だったか、それを忘れる事はありません。記憶を取り去りたくても取り去る事は出来ませんでした。
あの日、私の心は私を失いました。
私を喪失している感覚がはっきりとあったのです。
信じられませんでした。
レイプによって心が自分自身を失ってしまった事も。
その心の症状を止める事が出来ない事も。
私は自分自身の心が殺された事を知りました。
日常も人生も奪われた事を知りました。
どれほどの怒りと悲しみを抱え、肉体だけが生きている私と過ごしたか、どれほどの苦痛が私を襲ったか、その事も忘れられる事ではありません。
この本を書いたのは、私のような経験をした方々に苦しい状態から抜け出せる日が来る事を知って欲しかったからです。そして、生きる為のヒントに少しでもなれればという思いからです。
苦しかったあの時間、私は自分と同じような経験をしている人を求めていました。
どうやって生きたらいいのか分からない。
どうやったら症状が治るのか分からない。
だから同じような経験をしている人の話を聞きたかった。他の人はどうやって乗り越えたのか知りたかった。
私自身がそれを強く欲していた事もあり、この本を書こうと決めました。
私がAV女優だった過去は特殊な事かもしれません。
けれど、被害者の行動としては特殊ではないのだと思う。
私にとって被害者としての過去もAV女優だった過去も私の人生です。
その私の人生を書く事で、被害者になった一人の人間の人生を一例として表せると考えました。
AV業界にいた自分自身の事は私に起きた事であり、他のモデルに同じ事が起きていると言う訳ではありません。あまりに色々な事があり、それも私が症状と戦っている間の出来事でしたし、それも含めて私の人生です。それを書く事も一例として表すには必要だと考えました。
この本で被害者家族や周囲に被害者がいる方にも、症状やその状態を知ってもらえる事があるのではと思っています。
また、性犯罪について考えた事があまりないという方にも、性犯罪がどんなものか知ってもらえる事が出来ればと思います。
私は性犯罪や被害者の症状を知ってもらう事が被害者を救う事に繋がると思うのです。
少し重たい内容に感じるかもしれませんが、私自身に興味を持ってくれている方にも読んで頂けたら幸いです。
この本は、私の人生でもあり私の願いです。
是非、読んでみて下さい。よろしくお願い致します。
「よわむし」6月23日発売。双葉社さんより。
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