慰安婦 稼業婦廃業につき軍の行政権の及ぶ範囲(仮)メモ

①日本人審判令の規定に関わらず契約の準拠法は当事者の意思に拠る。稼業契約の両当事者が日本の法令以外を準拠法としたとは考え難い。契約の法的効果の解釈は民法等に拠る。
②稼業婦は自由廃業、前借金の期限の利益(廃業と同時に返済する義務がない)、あるいは公序良俗違反による債務不存在などにつき民法等に基づき事業者と争うことができるが、戦地には管轄司法機関が存在しないので、戦地にいる限りは司法での解決ができない。
③ 事業者との争いが解決しなければ稼業婦がいつまでも帰国できない不都合が生じる。このため司法解決にかわって軍政部が許認可権の行使によって契約に介入する必要が生じた。軍は債務関係を精算して稼業契約を終了させることができれば稼業婦は帰国できるので、稼業契約も廃業時に軍の介入が可能な内容となるように指導し、その契約内容でなければ営業を許可しないこととした。
④軍の指導した契約の規定により、ほとんどの場合で廃業時には前借金が棒引きになっていた可能性があるが、債務が残った場合も当然ある。軍の許認可権が及ぶのは債権債務額の確定までだから、残債務の弁済方法は最終的には司法で解決する他ないが廃業により稼業婦は帰国できるので、日本あるいは朝鮮の裁判所に提訴して場合によっては民法90条を援用することもできる。
⑤管理人日記から導き出される民法90条の効力についての評価であるが、まず稼業契約は日本法に準拠するからその解釈には当然に民法90条が適用される。仮に事業者が廃業に同意しなかったとしても同条が機能していないとは言えない。同条は裁判所で無効原因として援用されることで機能するものだからである。但しそれには現実的には稼業婦の帰国が必要だから、稼業婦の申請があれば軍の権限で必ず廃業できるという行政権の行使を必要とする。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?