一限が休講になった朝

大学生にとって一限の休講は、祝日が一つ増えるのと同じくらい嬉しいものだ。
普段の朝は学校に行くか、アルバイトをするかのどちらかで、アラームをかけずに起きることは滅多にない。

その日は、あらかじめ休講を知らされていたので、朝ごはんを食べに行こうと決めていた。 

前夜に見つけたそのカフェは、「読書室」と呼ばれる場所だった。 

二季と呼ばれるくらいの北海道だから、ダウンが必要なくらい気温が下がった10月中旬。雨がたくさん降っていた。

 昔から雨が好きで、「悪い」天気だと思ったことがないからあえて言うが、そこは、雨の似合うところだった。

 ものすごく静かで、外の雨音と掛け時計の鳴る音だけが聞こえた。

そこはおひとり様専用のお店で、図書館の自習コーナーにある机のような席がいくつか用意されていた。

椅子に座って前を見ると、何冊かの本と、「雨の日も、どうぞごゆっくり」という紙があった。全席に用意されているメモパッドには、それまで来店した人のおすすめの本が1ページごとに書かれていた。

多読家は私の尊敬の対象である。

そこにある字が、人を表している気がした。

私も書きたかったけど、皆さんに至らず恐れ多かったので、代わりに次のメッセージを書いた。

出会いたい時、出会うべきものに、必ず出会わせてくれる本が大好きです。母のように何千と本を読む人間は皆、心穏やかで、物事の奥を見ることができると思います。

帰り際、伝票を見るとそこに書かれた日付はまだ9月だった。通りで時の進みが遅いと思った。

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