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刺し子の花ふきん

布巾一面に刺し子が施された布巾のことを「花ふきん」といいます。刺し子といえば、花ふきんを思い浮かべる方も方も多いのではないでしょうか。また、実際に刺し子をする人の間で最も多く作られているのが花ふきんでしょう。そんな刺し子の花ふきんについて、ご紹介したいと思います。

花ふきんとは

花ふきんとは、一面に刺し子をされた布巾のことをいいます。台所や茶道具の上にかける飾りふきんとして使われることが多いようですが、もともとは晒しです。吸水性もよいため、ご飯や蒸し料理の湯気とり、茶碗拭きなど、用の美を備えた道具として、用いられてきました。

そして、花ふきんといえば「手仕事」の象徴の一つ。花ふきんの美しい模様は、ひと針ひと針丁寧な手仕事によって施されます。時を忘れて、ひと針、ひと針、針を進めていった先に、愛しさが込み上げてくるような自分だけの花ふきんが出来上がります。

花ふきんの歴史

刺し子はもともと布を補強したり、重ねて暖かくするという保温を目的とした針仕事です。江戸時代、武家の子女たちの行儀見習い、針仕事の手習い、精神修養として奨励されていたそうです。

やがて、布巾に刺し子をした花ふきんは嫁入り道具の一つになり、東北をはじめ各地にみられるようになります。母が嫁ぐ娘のために、木綿の布巾に、縁起の良い伝統模様を刺し子で施し、持たせたといいます。婚家の家の門をくぐったら、二度と戻れないといわれていた時代に、母が思いの丈を針仕事に込めて、娘に伝えていました。

嫁ぎ先では、異なる模様を刺した花ふきんをかけて、家族のお膳を取り違えないようにする役目もあったそうです。

また、花ふきんを水をくぐらせると、刺し糸の色がうっすらとにじみ出て、白いふきんが淡い刺し糸の色に染まっていくことから、「早く婚家の色に染まりますように」との願いが込められていたそうです。

補強や保温という役割をもって生まれた刺し子は、やがて祈りの実践としての役目をもち、母から子へと受け継がれきたのです。

花ふきんを彩る模様

ふきんを彩る刺し子柄には、たくさんの種類があります。昔から伝わる伝統柄から自分の好きなモチーフ柄まで、好みに合わせて刺したり、選んだりするのが楽しいのことも花ふきんの魅力です。

伝統柄なら、七宝(しっぽう)つなぎ、米刺し(こめさし)、麻の葉柄、銭刺し(せんざし)、亀甲花刺し(きっこうはなさし)など、たくさんあって、それぞれに意味が込められているものもあります。

例えば、七宝つなぎは円を重ねてつなぎ合わせた文様のこと。七宝とは金、銀、瑠璃(るり:艶のある青い宝石、ガラス)、玻璃(はり:水晶のこと)、珊瑚、瑪瑙(めのう)、真珠をあらわします。そうした円を重ねてつなぎ合わせた文様は、永遠、円満、調和をあらわす吉祥文様として用いられてきました。

米刺しと呼ばれる文様もとても可愛らしい柄です。縦横斜めに刺した柄が「米」の形に見えることから、このように呼ばれています。お米の豊作を願って刺した柄であると伝わります。

他にも子どもの成長を願う柄など、昔の人たちが針仕事に祈りを込めてきたことがわかります。


今では手芸店に行けば、本当にたくさんのモチーフ柄があり、見ていて飽きません。自分のオリジナルな柄を刺せることも創作意欲を掻き立てる刺し子の魅力の一つといえます。

花ふきんの仕立て方・刺し方

材料と道具
◎さらし
◎刺し子糸と針
 ・刺し子糸
 ・手縫い糸
 ・刺し子糸
 ・まち針
※指ぬきもあると便利です。
◎チャコペンと定規
 ・フリクションペンでも可。
◎はさみとアイロン
 ・糸切りばさみ
 ・裁ちばさみ

1  布の裁断

花ふきんは2枚重ねて縫います。そのため、例えば1辺の2倍強くらい(5cm程度)の長さを目安に布を裁断します。

2  下地をつくる

裁断した布の端(裁ち目)から5mmのところに定規で裁ち目に沿ってチャコペンで線を引きます。

次に、布を半分に折って、まち針でとめます。線を引いたところに沿って、手縫い糸で並縫いします。

布を裏返し、片面ずつ両面にアイロンをかけます。


3  下書きをする

チャコペンと定規で方眼線を引いたり、好きな柄を下書きします。

初心者の方は手芸店で売っているようなあらかじめ図案を印刷した布を使用すると、下書き工程を省略して刺し始めることができます。


4  刺し子をする

図案に沿って刺し子をしていきます。


5 仕上げ

最後に低温でアイロンを掛けて完成です。

大槌刺し子のみやびふきんキット

大槌刺し子のみやびふきんキットもあらかじめ下書きがされていますので、ぜひご利用ください。


花ふきんの使い途

美しい刺し子が施された花ふきんは使うのがもったいと思われる方が多いようです。ですが、花ふきんの使い途はいろいろ。ぜひ、これからご紹介する使い途を参考にしてみてください。

かける・おおう

せっかく美しい刺し子が施された花ふきんです。まずは、お膳にかけたり、ティーポットにかけたりして使いましょう。食卓が華やぎます。

また、短時間のために食品用ラップをかけるのはもったいないと感じる時にも食材にかけたりすると便利です。

包む
お弁当箱なども花ふきんで包むと、とても素敵ですね。通常のふきんと異なり厚みがあるので、結ぶのではなく、お弁当用のゴムバンドを用いると使いやすいと思います。

敷く
花ふきんは敷物にも重宝します。台所であれば、滑り止めとしてボールやすり鉢の下に、濡らした花ふきんを敷くと安定します。また、厚みのある花ふきんであれば、小鍋などの鍋敷にも使えるでしょう。台所以外でも花瓶敷などに使うこともできます。

つかむ
熱いお鍋やお鍋の蓋をを持ち上げるときにも、鍋つかみの代わりに厚みのある花ふきんを使うと便利です。

拭く
刺し子が施された花ふきんを台拭きとして使うのは勇気がいります。最初はこれまでに紹介したように飾りふきんとして使い、少しくたびれてきたら、食器拭き、その後に台拭きというように、最後までお使いいただけるのが花ふきんです。

昔から台所道具として用いられてきた花ふきんは用の美を象徴する道具の一つといえます。ぜひ、いろんな場面でお使いいただけたらと思います。

大槌刺し子のみやびふきんとみやびふきんキット

大槌刺し子のみやびふきん~変わり花十字~は、生成りの生地に、草木染めの刺し子糸で刺した、柔らかな風合いが特徴です。

刺し子では、花模様を「十時」で表現します。みやびふきんに施された華やかな柄は「変わり花十字」と呼ばれます。規則的に花模様を刺すことで、華やかさとともに布を丈夫にする役目を果たしています。

仕立てから刺し子まで一つ一つ職人の手によって作られたみやびふきんは、針仕事の精緻さと美しさが目を惹くだけでなく、手間をかけ、人の手で作り出された独特の美しさと温かみが伝わってきます。

霧箱に入っていますので、贈答用としてもお使いいただけます。

「実際に花ふきんを刺してみたい!」という人には、みやびふきんキットがおすすめ。

草木染めの糸の柔らかい色合いが特徴のキットは、針に糸をとおすとき、刺し進めているとき、出来上がったあとに、大切に使うとき、 いつも穏やかで優しい気持ちになりますように。との気持ちを込めてつくりました。

布には下書きがあらかじめプリントされていますので、すぐに刺し始めることができます。

色はいずれもログウッドブルー、ラベンダーパープル、ベージュグレーの3色です。


今だけ、限定カラーも発売中です。


実用性と美しさを兼ね備えた花ふきん。ぜひ日常に取り入れてみてください。

<参考> 

近藤陽絽子(2015)『嫁入り道具の花ふきん教室 母から子へ伝えられた針仕事』暮しの手帖定義。


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