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en・nichi(京屋染物店) と刺し子修繕

岩手県一関市で100年続く染物屋さん、京屋染物店が展開するen・nichi。日本人が昔から使ってきた割烹着や野良着、お手拭きなどの日常の「道具」を、100年間培ってきた技術と経験を持つ職人さんたちが、ひとつひとつ手づくりしています。

100年続く京屋染物店

京屋染物店がある岩手県南部に一関市は、世界遺産・平泉の玄関口として知られています。城下町として盛え、浄土思想や伝統芸能など数多くの伝統品が生まれてきた場所です。

京屋染物店はその地で100年の歴史を持ち、デザイン、染め、縫製までを一貫して行える、全国でも数少ない染工場。そこで働く職人さんには、「染色」、「デザイン」、「縫製」、それぞれの工程において、大正時代から技術とこだわりが受け継がれています。

そんな京屋染物店の工房を大槌刺し子のスタッフも覗かせていただきました。

工房には藍染液が入っている、大きな桶がありました。

藍染体験ワークショップ

藍染液が入っている桶に生地を入れて、染めを行います。空気に触れると色が変わるため、色の調節をしながら染めていくそう。

京屋染物店では、本染め・手捺染(てなっせん)・引き染め・藍染めなど、多彩な染色方法を行う全国でも珍しい工房です。

特に、絶妙な力加減で、生地繊維の奥まで染め、色の深みと奥行きを出すことができる手染めにこだわっているそうです。

この日は、en・nichiさん主催の「箪笥の肥やしでものづくりワークショップ」にて、刺し子のワークショップを行うための訪問だったので、実際の体験はできませんでしたが、染物の現場を見せていただくことができました。

京屋染物店の工房の様子

他にも京屋染物店では、デザインや縫製を行う体制が整っており、デザイナーさんや縫製職人さん達の手による「染め」「デザイン」「縫製」の自社一貫生産が行われています。

日常を彩る「道具」 en・nichi                 「お直しのすすめ」と刺し子

京屋さんが101年目の新なスタートに、人の縁を繋ぐ道具や服作りを通し、多くの方々の日常を彩っていきたいという想いで立ち上げたのが、en・nichiというブランドです。

100年もの間、お祭りや伝統芸能の衣装製作で培った、技術やノウハウを活かし、丁寧に職人さんたちが一つ一つ、手づくりしている愛おしい道具たち。かつては家事の定番スタイルだった割烹着、東北の野良着から生まれた、万能ズボン猿袴(さるばかま / さっぱかま)、寒い冬に羽織りたくなる半纏など、たくさんの道具が揃っています。

そして、en・niciがもう一つ力を入れるのが、「お直しのススメ」(永久修繕)です。en・nichiが生まれた東北地方では、刺し子や裂き織り、ボロなど、モノを大切にする文化が身近に根付いています。

職人さんたちの手によって、ひとつひとつ大切につくられた愛おしい道具たちを長く使い、とっておきの道具として育てていくことができるように、ミシン、染め直し、刺し子といった修繕サービスを提供されています。

大槌刺し子では、そんな「お直しのススメ」の刺し子修繕を担わせていただいています。

「刺し子」は、布地を綴り繕いや刺し縫いする針仕事のこと。かつて貴重だった布地を繰り返し補修し、長く大切に使う生活の過程で発達してきました。愛おしい道具たちを長く大切に使い続けていただくために、大槌刺し子でも、一点、一点大切に修繕させていただいています。

穴をふさぐ修繕

修繕前
修繕後

補強する修繕

修繕前
修繕後

en・nichiの道具をお使いの際には、ぜひ修繕サービスもご利用ください。

「箪笥の肥やしでものづくりワークショップ」

12月には、京屋染物店さん主催「箪笥の肥やしでものづくりワークショップ」が開催され、大槌刺し子も講師として参加しました。

「ぶくぶくコース 藍染体験」や「ちくちくコース 刺し子体験」があるワークショップ。ご家族で参加されたり、皆さん、楽しみにしてくださっていました。

参加者の皆さんは、箪笥の肥やしになっているものを持ち寄り、コースを選択。職人さんの丁寧な説明を受けながら、作業を進めていきます。

使わなくなってしまった古着やバッグなど、色あせや汚れなどが藍染することでもう一度復活。

穴が開いてしまったジーンズや、洋服の色あせ、生地の補強には、刺し子を施すことで、かつてお気に入りだったお洋服や小物が生まれ変わります。


参加した方のお直し事例

膝に穴が空いたジーンズをお持ちになった方は、ミシンは使えるものの、手で針を持つことはほとんどなく、刺し子は初めてとのこと。「人と同じではなく、目立つようにお直ししたい」というご希望でした。

赤の糸を使用し、刺し子が目立つように当て布をあて、ちくちく補修していくと、最近ではよく見かけるようになってきた刺し子のリメイク品のような仕上がりになりました。

明るい色や個性的なデザインがお好きという参加者の方。刺し子は初めてで、針も持ったことがなかったとのことですが、「運針でちくちく針を進め、穴を埋めていくという、刺し子ならではの方法を試してみたい」と、真剣なまなざしで針を進められました。

ご自身で手作りしたというエプロンを持ってきてくださった方は、「無地でシンプルなので、どこかに刺し子の柄を刺してみたい」とのこと。均一な刺し子柄を表現するために欠かせない下書き作業も体験していただき、ポケットに米刺しの柄を刺しました。

「刺し子をするのは初めて」という方ばかりでしたが、箪笥の肥やしが蘇り、最後には「またやってみたい!」と感じていただけたようです。

破けてしまったり、古くなってしまうと、すぐに新しいものが手に入る時代ですが、こうしたワークショップを通じて、補修したり、手を加えながら、長く大切に使う楽しみを味わうのもいいですね。

ご案内

今回ご紹介した<en・nichi>のお道具は、ネットショップ「縁日」でお買い求めいただけます。

刺し子をはじめとした「お直しのススメ」も随時受け付けていますので、ぜひ、ご利用ください。



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