わりと卑猥な小説の妄想 ショートショート
それは突然始まった。
どうしてそうなったのか、
なぜここにいるのかはわからない。
暗闇の中、消音マスクを付けられ、両手は後に縛られ、イスに座らされ、両足はイスの足に縛られて、目隠しをされ、ヘッドホンを付けられている。
暴れても叫んでも、ヘッドホンから流れてくるせせらぎと風になびく木々の葉音が、ノイズのように繰り返し繰り返し頭の中に木霊している。
ヘッドホンから流れる音が静まり返っても、頭の中にノイズが残り続けているかのように、シーンとした空間にサワサワと聞こえる。
どこか遠くの部屋のファンが動いている音のような、耳の中を流れる血液の音のような、耳鳴りにも似た音だけが聞こえている。
時々、ヘッドホンの聞こえる音に連動するかのように、目の前に川が流れる映像が映し出される。
目隠ししているのはVRマスクのようだ。
というよりも顔全体をなにかのマスクで機械的に包み込んでいる。
視覚、聴覚、味覚、嗅覚を敏感に感じ取れる器官を機械的に覆いかぶされているかのようだ。
時折、映像と一緒に木々の香りを感じたり、冷たいレモン水も口の中に注がれる。
何かの実験をしているのか、定期的にその音と映像と香りと口の中が満たされ、そしてしばらくの静けさが続いた。
それはまるで何かの準備やテストをするかのように、私の五感の内、四つの感覚を刺激していた。
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