12/4の破壊者
事の発端は結婚してまもなくの事だったが、我慢に耐えられないというほどでもなかった。
お金の切れ目が縁の切れ目だというが、それは正しかった。
生活もひっ迫し始めて、バイトを初めた。
それでも暮らしは一向に楽にならず、夫婦の営みが無くなり、すれ違う日々が続いた。
子供たちが大きくなり、時間に余裕が生まれると、私は正社員となった。
給料は旦那の給料を大きく上回り、いつしか私は離婚を考えるようになっていた。
そして、12月1日。
離婚届をおいて、子供を連れて実家に帰ってきた。
私の貯金もある程度貯まっていたし、実家も頼りに出来る。
子供たちも預けられる。
何よりももう東京という場所に未練が無くなっていた。
仕事は順調だったけれど、日々の生活は楽しくもなかった。
お金のために時間だけが奪われて、人付き合いの愛想笑いもうんざりだった。
良い口実だった。
このタイミングを逃したら、私は変われない。
変わりたかった。
つまらない日常を華々しく、女としてもう一度。
誰かに愛されたい。
過疎化が進行しつつあるこの町。
本当になにもない。
でも、休息するにはちょうどよかった。
人混みに紛れて息苦しさを感じていた日常に比べれば、はるかに暮らしやすい。
私が東京から帰ってきた事はすぐに知れ渡る。
まだこの町に住んでいる同級生は、すぐに駆けつけてくれて、私の話を聞きたがった。
東京にはない鬱陶しさではあるけど、何故か懐かしく子供の頃のように話がはずんだ。
こんなに人と話をするのが楽しいなんて、なんて久しぶりな感覚なのだろう。
自分を世間体という膜で覆い隠す必要もない。
気心知れている間柄。
一緒に悪さもしたし、喧嘩もした。
殴り合って痛い思いをしたことも何度もある。
でも、なんでだろう。また、仲良しになっていた。
田舎だから、話し相手もいなかったから、村社会だったから、そんな理由をつけていた子供の頃が懐かしくもある。
どんな理由があったにせよ。
子供の頃の縁は、簡単には切れないみたいだ。
無愛想な男子の同級生は、自分の畑で育った野菜を手に持って、無愛想に渡してくれた。
都会にはいない土臭いブサイクな男だけど、何故か私は懐かしさとともに恋心を蘇らせてしまった。
なんでこんな男に片思いを抱いてしまったのかはわからない。
どこから見てもイケメンじゃないのに、頭も馬鹿なのに、私の男運の悪さはきっとコイツからだったのだろう。
ドラマみたいなこと言っちゃうと
お金の切れ目が、恋のはじまりになるなんてね。
想像もしていなかったな。
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