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「笑」

思いもよらず笑っている自分の声にちょっと驚いている。可笑しくてたまらない。鉄砲玉のように飛び出した私の笑い声。まさか、こんなに大きな声で笑ってしまうなんてね。でも、気持ちいい。笑うって全身の力が緩んで。今しかなくなることなんだね。今さらだけど。

最近、読み始めた漫画がいくつかあって。おもしろい。どれもこれも私の体に新鮮な水を浴びせてくれるものばかり。もう、びしょ濡れ。しかも染み込む染み込む。人の体の80%以上は何某かの水分だと言いますが。現在、新鮮な水分が体内を循環しているのかと思うと嬉しい限りです。これを健康と言うのじゃない?

昨夏、映画「メタモルフォーゼの縁側」を見た話をしたら。コミックが映画化されたものだからよかったらと友人が貸してくれました。芦田愛菜さん演じるBL好き高校生うららさんと。ひょんなことでBLにはまった宮本信子さん演じる自宅で細々と習字の先生をする雪さん二人の物語です。


メタモルのコミックの入った籠を差し出しながら。「どんな漫画を読んでいます?おすすめとかあります?」と聞かれました。
「エースをねらえ。いいよ」
世代的に知らないだろうなと思ったし。作品の登場人物の個性がまあーよくできていて。どこかの街角で出逢えるかもしれない。そんな期待さえ持たせてくれた作品です。

なんと。メタモルのコミックのなかで。雪さんが少女時代にエースをねらえの愛読者であることを知った時には。きっと、半世紀前から私は「メタモルフォーゼの縁側」を読む運命の道を歩き始めていたのだ。エースをねらえから繋がっている道だったんだわ。運命はこうやって宿命に納まっていくに違いない。などと大きく感動しながら読み終えたコミック。

漫画を描くうららさんに雪さんが話しかけるシーンには静かな共感がありました。

「漫画描くの楽しい?」と雪さん。
「あんまり楽しくはないです。自分の絵とか見ていて辛いですし。」
「そうなの?」
「でも、なにかやるべきことをやっている感じがするので悪くないです」

この時のうららさんはプロの漫画家さんでもなく。はじめて漫画を描くシーンなんだけど。まだ若く限りない可能性のある未来を感じるシーンとして私のなかに残っています。好きなシーンです。

私は作家でもないしものかきでもないけれど。noteに週1回書き上げる為に費やす時間に楽しさでは埋まらないなにかを持っています。うららさんのことばは私の持っていたなにかにとても近い表現でした。

特に最後の「悪くないです」は。このことばの選択がセンスいいなって。「悪くないです」呟いてみた。ことばを繋いでいくうちに表現したいことから離れないように近すぎないように。レンズを覗いて遠近を確認するようにピンとを合わせる。行間を使って息苦しくならないようにしたいなとか。

上手くはいかなかったけど。理想には遠いんだけど。でも。
いつも書き終わると私の中から聞こえてくることば。
「悪くないです」。

うららさんとおそろいのことば。
いいよね「悪くないです」。

春の色


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