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「甘」

「あたったのよ」
もしもしの代わりに聞こえてきた声は決して大きくはなく。むしろいつもよりやや控えめながらよく聞き取れるトーンでした。あたった。このことばと声の雰囲気から。どうやら何かいいことを連想させる勿体のあるウズウズ(渦渦)を感じるわたし。です。

「ホテルのアフタヌーンティーのペアチケットがあたったの」。ウズウズはため息になった。はぁー。私のもらしたため息に包まれているのは。赤毛のアンがダイアナをお茶会に招待するあの健気で明るい場面です。アンはなんとかマリラにお客様用のティーセットを使わせてもらいたいと懇願するも見事に袖にされて。普段のティーセットでおもてなしの準備をはじめるのです。

「一緒にいきましょう」と友人のお誘いが続きます。はぁー。私のもらした2度目のため息に包まれているのは。おとなになったアンとダイアナがお客様用のティーセットでお茶を楽しむ午後のひとときです。

「私、絶対に当たる予感がしたのよ」。絶対の予感とは凄いことです。なぜなら彼女の口癖のひとつに「私は自慢ではないけど直感とか霊感なんて一切無いからね」。と何気に自慢気に話すからです笑。この度のこの予感が直感でも霊感でもないのなら一体何になるのだろう。

夏ぐらいから彼女は2日間我が家に滞在を予定していました。その予定に合わせるかのように「あたった」アフタヌーンティーのチケットです。日頃の彼女の誠実さへのご褒美に違いないのは決まりです。ご褒美のお裾分けって気分がいいものですね。

アフタヌーンティーの後に
ボタニカル・アート展に立寄りました。
イギリスのお茶の雰囲気をたっぷりと味わいました。

アフタヌーンティーのお給仕には若い若いふたりの女の子がついてお茶やお菓子の説明をたどたどしくも丁寧に教えてくれます。ときどき言葉遣いなど間違えながらの説明もどこか微笑ましくなるのは。私に娘がいたらを想像させてくれたからかもしれません。

座り心地のよいソファから見える窓の外は雨。甘い宝石が散りばめられたテーブル。ここは遠くから眺めていた世界です。そこにあたりまえのように座っている私がいます。人生の半ばで大きな波に呑み込まれた私は。生きている幸せを実感しそうになると。幸せそうな自分の姿を少し離れた場所から確認してみたくなります。

ホテルのカフェの片すみに見つけた私の横顔は。ここ10年でほんのりとたくましくなったような気がします。そんな私の隣には甘い宝石を頬張る友人がやっぱり幸せそうです。切り取られたような日常が人生にはあって。スネに抱えた傷は治らなくても。傷を忘れてしまうくらい楽しめるって悪くないな。

日本庭園と雨との相性がいいなぁ

さて、小雨のぱらつく昼下がりの腹ごなしの散策に選んだのは日本庭園です。広がる柴や苔は朝からの雨を吸い込んでいて水墨画の水を思わせます。秋の色が遊ぶ風景から白黒の世界を生み出す水墨画って。改めて肝心してしまいます。

可愛らしい水田

ちょっとカロリー高めな1日でしたが。終盤、水でほどよく薄まった気がします。笑


茶畑ロード🌱



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