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「挑」

紫陽花ってこんなに種類が多かったことに気づきませんでした。日本の気候風土と合うのかな。曇り空に紫陽花の虹が咲く道。水たまりをよけながら雨粒に滲んだ藍や紫を数える梅雨散歩。桜が散って梅の実を漬けて。ついでにらっきょうも漬けて。1年の半分が過ぎて行きます。追いかけているようで追いかけられていたような時間をちょっとだけ振り向いてみました。

2月、節分の頃から仕事の流れに変化を感じていました。何度も人生の波に呑み込まれてみて思うのは。変化に翻弄されるようにもみくちゃになって。なんてこったと暴れる心もいつの間にか静かになった頃。変化は日常に吸い込まれて見えなくなってしまう。

見えなくなってしまう。なんてサラッとは言ってるけど。変化に溺れかけて日常が見えなくなりそうだったあの頃。藁を掴むようにつかんだことばがあります。

「感情の波をクロールで横切って行こう!
 永遠の河を行くスイマーよ」

B’zの稲葉浩志の叫びが私の体を震わします。なんて歌詞なんだろう。そうだ、私は永遠の河を今泳いでいるんだ。永遠の河なんだよ。私のバタ足は華麗にこの永遠の河を横切って未来の私に辿り着けるはず。

そんなバタ足に夢中になっていると。仕事の依頼についての問い合わせが入ってきました。その依頼は今まで私が意識的に避けてきたことと鉢合わせとなるお話でした。

私の頭なのか心なのかわからないけれど。確かにどこかが動揺していたし。迷ってもいました。目の前を「逃」という字がスイスイーと流れていくと。後から「挑」という字がくっついてまた流れていく。逃げるか挑むか。藁を掴んだその手で「挑」を掴んでいた。

挑戦がはじまるとすぐに。仕事を始めたばかりの頃を思い出しました。忘れていた場面が1枚の写真のように心の額に納まります。挑戦することで足を前に踏み出しただけでなく。今、立っている場所までのプロセスを読み返す初心に還る機会になりました。

この時の依頼は台風の心配もありましたが。奇跡的に遠距離でありながら天候に恵まれ。そのお蔭で交通事情にも難は無く。予定通りに全ては運んでくれました。

仕事が終わりひとり見上げた空に雲の切れ間を見つけました。徐々に広がった隙間から真っすぐな光が一直線に差し込んでいます。台風は東にそれて流れて行ったようです。私の挑戦は私の何かを試すものではなかったようです。むしろ誰かが用意してくれた舞台に躊躇なく乗れる準備があることこそが試されていたような気がしてならないのです。




友人のお庭で育った紫陽花たち^^

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