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UN vol.2 “Pieces”を終えて

25日、UN vol.2 “pieces”を無事に終えることができました。ご来場いただいた皆さま、それから気にかけて応援してくださった皆さまへ、改めて感謝申し上げます。

静謐な空間にも春の兆しを予感する淡い光が乱反射する、良い雰囲気の中で演奏することができました。新作と即興というプログラムですが、途中お客様にも即興に加わっていただく一幕も。

今回、私はギターの演奏に加えて新作を2曲書きました。書き切った達成感のあまり入稿直後に数日寝込みましたが(滅多に風邪など引かないのですが…)いまできるすべてを表現できたと思います。

「冬の余韻」はペダルを踏み続けたピアノにフルート・チェロ・エレキギターが寄り添う曲。冬は静かなものの暗喩、冬の神社の静けさの中で、あまねき遠い声に耳を澄ます体験が着想の元になりました。つまり、意味が喚起する感情はないのに心が揺さぶられる根拠を、情緒の余韻が響き続けているのだと考えることにしたのです。メロディーと伴奏のような主従関係に類する構造を持たず、旋律・伴奏・拍子の各要素を抽象化することで(これを音響体と呼ぶことにしています)それを表現しようと試みました。

「夢を花筏に乗せて」はアルトフルートとチェロのデュエット。断片的なフレーズの反復で、過ぎゆく時間の枯れた肌触りを表現してみようと思いました。夢を知るのは醒めたあと、川を埋める花は、すでに散った花。そして音楽はすでに消えた音の耳の記憶なのです。「花ちれる水のまにまにとめくれば山には春もなくなりにけり(藤原深養父)」

ふくいかな子作曲「memory/transformation」は、私たちが垣根と認識する様々なものを軽やかに飛び越える、普段から多様な領域を横断して活動しているふくいさんらしい作品です。私たちの今は、小さな選択の連続の上に成り立っているのだということを想起する、ダイナミックな大作だったと思います。

そしてUNの今井貴子さん(フルート)、ふくいかな子さん(ピアノ)の演奏は言わずもがな、今回ゲストにお迎えしたチェロ奏者、北嶋愛季さんの演奏も素晴らしかったです。新作は2曲とも深い集中力を要求する作品でしたが、これが上演できたことは優れたプレーヤーのご協力あってのことです。楽譜に向き合ってくださる時間と情熱に深い感謝と敬意を送りたいと思います。曲が形になるプロセスの尊さを改めて噛みしめながら、貴重な時間を過ごさせていただいたと思っています。

次回のUNの公演は秋頃に計画中です、今後ともUNをよろしくお願いいたします。


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