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音からわかること

むかし、あるテレビ番組で

音声だけを頼りに、
ある地点からある地点へ、
どういう経路で移動したか
を考察する

というのをやっていた。

考察したのは、当時の日本音響研究所・所長の鈴木松美氏。
移動する人は、トミーズ雅さん。

路面店から聞こえて来るラジオの声や有線放送のメロディ、
雅さんが歩く靴の音、
歩行者用信号機の案内音、
電車の音と発着音、
駅のアナウンス……

雑踏の奥からかすかに聞こえる音を拾い集め、
どの道を歩いて、
どこの駅からどの電車に乗ったのか、
鈴木氏は、寸分たがわずその経路を言いあてたのだった。

途中、雅さんがアドリブで買ったジュースも、
いくつか並ぶ中の何番目の自販機の
どのボタンを押したかを言い当てた。

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駅の階段の下から何歩進んだかでわかる距離と
ボタンを押してから缶ジュースがポケットに落ちるときの
「ポトン」という音までの時間からの考察だった。

音からわかることはたくさんある。
そんな目線で音に興味を持ち始めたのは、この時からなのかもしれない。

以来、鈴木松美氏は私の心の師匠のひとりにとなった。

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