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【連載②】除斥期間の適用を認めないのはレアケースだ、ということ(旧優生保護法違憲判決)


> この記事について

 初めての連載シリーズ2記事目です。本記事では違憲判決が出されることとなった訴訟事件について、その概要をメモしてみました。

 お済でない方は前回記事 【連載】<気になって調べてみた>旧優生保護法違憲判決について思ったこと①|jim (note.com) もご覧いただけますと、より内容がわかりやすくなるかもしれません。よかったらのぞいてみてください。

 ※本記事の執筆にあたり、参照資料を踏まえ事実に沿う内容を記したつもりですが、第三者の確認等は行っておりません。本記事の内容を引用する場合には一切責任を負いかねますので、<参考>に掲載した情報をご確認いただきますようお願いします。

▶ 事件の概要

> 原告=不妊手術を強制された人々  被告=国

 旧優生保護法のもとで障害などを理由として不妊手術を強制された人々が、精神的・肉体的苦痛を被ったなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を国に求めました

※ 国家賠償法
 公務員の不法行為によって国民が損害を受けた場合に、国または地方公共団体が代わって損害を賠償する仕組み。

 一方、被告である「国」はというと・・・


 不法行為から20年を過ぎると、賠償を求める権利が失われるという「除斥期間」(改正前民法724条後段)が適用されるという考え方を用いて、損害賠償には応じないとの主張をしていました。


> 最高裁判所の判断


 この原告の訴えに関して、最高裁判所大法廷は、旧優生保護法における優生手術を定める規定について、憲法13条、14条1項に違反するものだったと判断しました。

 また国会議員の立法行為は、国家賠償法の適用上、違法と判断されました。

 さらに、国が主張していた「除斥期間」の適用を認めず、原告側の損害賠償請求を認めました。

※ 憲法13条
 すべての国民が個人として尊重される権利を保障しています。
※ 憲法14条
 法の下の平等を定めています。


> 「除斥期間」の適用を認めなかったのはレアケース


 前述のとおり、国は、除斥期間が経過していることから、原告は国に対して損害賠償請求をすることはできないと主張していました。

 しかし、この国の主張に対して最高裁は、「原告の国に対する損害賠償請求権が、除斥期間で消滅したものとすることは、著しく正義・公平の理念に反し認めることはできず、国が除斥期間の主張をすることは信義則に反し、権利の濫用として許されない」と判断しました。

 争点の1つされた「除斥期間」については、「時間の壁」とも言われ、最高裁が例外を認めたのは、これまでで2件しかありませんでした。

 そんなハードルを越えて、「除斥期間の適用を認めない」という例外的な判断がされた点でも本件は注目されました。

 「除斥期間」について、今回が3件目の例外事例ということになります。
ちなみに違憲判決としては戦後13例目です。


> 裁判官の補足意見


 判決の中で、補足意見をふした裁判官がおりました。
 その中でも草野耕一裁判官の補足意見を紹介しようと思います。それは次のようなものです。


 ーー 憲法違反と明白な行為でも、時代や環境によっては誰もが合憲と信じて疑わないことがあることを示唆している ーー


 個人的に、今回の判決の中でも特に重要な部分の1つといって良いと思っています。

> 💬

 前記事でふれたように、今回違憲と判断された旧優生保護法の規定についても、立法当初は社会的要求などの背景から、多数意見では肯定され、制定に至りました。

 本判決を通して、なにをもって「正義」とするのかは、人それぞれ違うことに加え、その時代や環境によっても異なってくるということがわかるのではないでしょうか。

 歴史をたどってみれば司法制度、裁判自体、公平・公正に行われていない時代の方が長かったという印象があります。

 そのような時代を経て、現代において、抽象的な「正義」、「公平・公正」な理想を追求する裁判官の姿勢が垣間見られる判決内容だと思います。


 ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

 次の記事では、本件違憲判決が社会に与えた影響など、自分なりにまとめたいと思います。


<参考>

(1)最大判令和6年7月3日 令和5(受)1323 国家賠償請求事件.
(2)NHK.“旧優生保護法は憲法違反 国に賠償命じる判決 最高裁”.NHK NEWS WEB. 旧優生保護法は憲法違反 国に賠償命じる判決 障害者などに不妊手術を強制 最高裁 | NHK | 憲法(2024-07-17).

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