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編集後記 ゆっくり文庫リスペクト『死刑を…』

『そこにあるのはアイディアと笑いだけ。』

◇この記事について

本記事は2020/02/24にニコニコ動画にて投稿させていただいた
ゆっくり文庫リスペクト『死刑を…』」の後記です。
お時間のある方は上記の動画をご視聴していただければ幸いです。

◇原案について

濁させていただいた動画の原案をここで白状させていただく。

星 新一 著 『進化した猿たち』

である。

この作品は、星先生が趣味としていたアメリカの1コマ漫画を紹介、解説などをしたエッセイ集。新潮文庫より3冊出されたものだったが現在は絶版となっている。一応、The Best版が現在Kindleで電子出版もされているようだが、こちらはあまりお勧めできない。なぜなら、著作権の都合なのか肝心の1コマ漫画がほぼ載っていないからである。また何かへの配慮なのか抜粋されたテーマも若干温和なものが選ばれている。
当然、動画の原案にさせていただいた、
『死刑を楽しく』
は載っていなかった。

◇死刑を楽しく

「死刑を楽しく」は「進化した猿たち」の第1巻の第1章、つまり最初に語られたもので、「死刑」をテーマにした笑いの漫画の紹介である。
話の始まりとして人目を引く趣向のものとして選んだそうだが、やはりショートショートの神様の発想には恐れ入る。
内容は、動画にもさせていただいた電気椅子、絞首刑、銃殺刑などの各種死刑の現場やその少し前の時間を描いた場面の漫画である。しかし、そこに死に関係した陰鬱さや悲壮感はまったく感じられない。囚人、看守、どのシーンも非常にカラッとしている。星先生が『きまぐれ博物誌』でこれらについて語っているのだが、1コマ漫画には「気の毒だがおかしい」の「気の毒だが」がの部分がない。あるのはアイディアと笑いだけ。星先生はこれを「透明なユーモア」と仮称している。

◇透明なユーモア

​日本の1コマ漫画は基本題名があり、また時事ネタだったりすることが多い。またそこには何かしらの思想やメッセージがある。だが、本で紹介されたようなアメリカの1コマ漫画では、題名はなく画中の1人のセリフ、もしくは無題だったりする。つまり、ジョークを絵にしたものなのである。それもパーティーなど和気あいあいの親睦の場で用いる類の。そこに毒やトゲのある物は厳禁。結果、「死刑」という最上のブラックなテーマでもひょうきんな漫画となりえるのである。

◇ゆっくり文庫化にあたって

さて、この作品を動画化にあたって原案が1コマ漫画ということもあり、ルールを設けた。
  ①ナレーションは最初の導入以外つけない。
  ②セリフは1シーン、1人のキャラクターのみしゃべらせる。
   (悲鳴や掛け声は例外。字幕をつけない)
  ③死亡シーンは明確に出さない。

 以上の3点である。
ゆっくり文庫系動画では原案の改変はポピュラーではある。しかし、そこには必ず敬意が存在している。わかりやすさも大切だが、原案の良さを損なっては意味がない。そのためにルール①、②を設けて原案のすっきりとした純粋なユーモアを再現することに努めた。
ルール③に関してはゆっくり(東方Project)を演者した都合である。ゆっくり達自体、それぞれ原作がありキャラが立っている。死んだ場面を出すと途端に暗い雰囲気が出てきてしまう(かつて忌み嫌われた「ゆ虐」を想起させかねない)。作品の題名は「死刑を楽しく」。黒いテーマであっても黒になってはいけない。

例外シーン

↑のシーンはルール①、②の例外。元ネタが1コマ漫画でなく星先生の司法関係者へのインタビューしたときの話のため。

◇ゆっくり動画は楽しい

ここから少し自分語り。
今回初めてゆっくり文庫リスペクトの動画を作成してみたが、非常に苦労した。練習がてら事前に自作のショートショートを1分ぐらいの長さで2本つっくてはいたが、4倍は苦労した。シーンを作っても作っても中々完成しなかったのである。
しかし、不思議と充実はしていた。
私は最初に台本を書いてゆっくり達に演じさせていたのだが、彼女らがアドリブを入れ始めたからだ。
レミリアがウィンクをするシーンでフランも併せてウィンクをした。幽々子様は不思議な死刑囚役だったがゆったりマイペースな言い回しをしだした。結末の話などは後半オリジナルになったが、考えるより先に美鈴が自然にセリフを話していた。小説の執筆で勝手にキャラクターがしゃべりだすのに近いのかもしれない。私はいつしか完全に裏方に回っていた。そして、次に彼女らが何を話し、アクションを起こすのかを楽しむようになっていた。これは実際に動画作りを始めないとわからないものだった。
この記事をここまで読んでくださった方がどれほどいるかはわからないが、私はゆっくり動画の試聴、そしてできれば作成をおすすめしたい。きっと自分では気づけなかった新しくも懐かしい友人に出会えるはずである。

◇最後に

動画の投稿後、約2週間ほど削除される様子が見られず、またいくらかコメントをいただけたため本記事の作成を決心した。
星 新一先生のショートショート作品を原案としたゆっくり文庫リスペクト動画は過去に投稿されていた方がいらしたが、それらは著作権の都合で現在は削除されている。動画や説明文に原作者及び原案を明確に示せさないというのはゆっくり文庫リスペクトとしてどうかとも思ったが、批判のコメントがなくて一安心だった。ただ、やはりこれはあまり良くないものだろう。
次回はしっかり明記できるものを映像化しよう。…まあ、考えているのはまた微妙なラインの作品だったりするのだが。


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