4月5日、17世紀、自由都市ハンブルク流?ゼレのヨハネ受難曲は、ほんわかポップ!
アントニウス・アダムスクの指揮、ゲッティンゲン・バロック管&合唱団、ダンテス・ディヴィアク(テノール)の福音史家、ヤンノ・シェラー(バリトン)のイエス、ヨハネス・オイラー(カウンターテナー)のピラトで、17世紀、ハンブルクの音楽監督、ゼレのヨハネ受難曲。
Coviello Classics/COV92304
17世紀、イタリアで誕生したバロックが、アルプスを越え、ドイツでも受容されようという頃、その北の辺境に生れ、学び、活動したトマス・ゼレ(1599-1663)... イタリアから遠く離れながらも、目敏くイタリアの最新の音楽に反応し、素朴なドイツ・バロックとはひと味違う、色彩豊かな音楽を織り成して、異彩を放つ!いや、ドイツ・バロックの"3S"、シュッツ(1585-1672)、シャイン(1586-1630)、シャイト(1587-1653)の次なる世代ということで、その影に隠れがちなのだけれど、ゼレという異才、もっと注目されていいような... そんなゼレが、1641年、当時も今もドイツ切っての大都会、ハンブルクの音楽監督(後に、テレマン、C.P.E.バッハらが歴任!)に就任。その3年目、1643年に書かれたのが、ヨハネ受難曲。
何だか牧歌的なモテット「大地は主そのものである」(D1.48)を扉に始まる、ヨハネ受難曲... 3つのパートからなり、そこに3つのインテルメディオ(幕間劇)が添えられるという、本当に受難曲?という構成。でもって、当時、最新のイタリアのコンチェルタート様式をしっかりと踏襲し、ゼレらしい明朗さに彩られる!いや、もう、ほんわかポップ!シュッツの受難曲のストイックさを思い起こすと、怒られないか?と、心配になるくらい... が、それくらいなのが、自由都市ハンブルク流なのだろう。受難曲だろうが何だろうが、音楽である以上、お楽しみに忠実な姿勢、後のテレマン(1681-1767)に通じるものあり... 一方で、最後に歌われるモテット「主をたたえよ」(D1.47)では教会らしい壮麗さを響かせ、しっかりと締める。
という、ゼレのヨハネ受難曲を聴かせてくれた、アダムスク、ゲッティンゲン・バロック管&合唱団!まず、ゼレの色彩感、丁寧に引き出すオーケストラの演奏が印象深く... 17世紀の多彩な楽器、ひとつひとつの音色を大事に、ふわっと花やぐサウンドを織り成す。そして、何ともやわらかな合唱!ドイツ・バロックの素朴さとゼレの色彩感、ふんわりとまとめ、聴く者をそっと包んで... そこに、ほのぼのとした風情のソリストたちの歌いが絶妙で、得も言えずハート・ウォーミング!てか、何このやさしい世界!受難というより、もはや降誕?得も言えぬ温もりに満ち充ちていて、癒される... でもって、ゼレ、イイです。
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