11月3日、いや、ジャケが気になってしまって、聴いてみたら、おもしろかった!ユダヤ風味の擬古典主義、ベン・ハイムの洗練。
ガブリエル・アドリアーンの指揮、バイエルン・カンマーフィルの演奏で、ドイツ出身、イスラエルの作曲家、ベン・ハイムの弦楽のための作品集。
パウル・ベン・ハイム(1897-1984)。
ミュンヒェンにて、弁護士をしていた父の下、ユダヤ系の家庭に生まれた、パウル(当時の苗字はフランケンブルガー... )。ミュンヒェン音楽アカデミーで学び(1915-20)、ワルター、クナッパーツブッシュのアシスタントを経て、アウグスブルクの指揮者(1924-31)を務める。その後、ミュンヒェンに戻り、作曲家として活動を始めるも、1933年、ナチスが政権を掌握... パウルは、ドイツを離れ、後にイスラエルが建国されるパレスチナ、その中心都市、テル・アヴィヴへと渡り、ヘブライ風の名前、"ベン・ハイム"に改名。新たな土地で、ピアノ教師から再スタート... 度重なる中東戦争の厳しい状況の中、地道に活動を続け、ユダヤの伝統音楽はもちろん、中東全般の音楽にも触れ、新生、イスラエルの音楽を模索、楽壇を牽引した。
という、ベン・ハイムの弦楽のための作品集... 弦楽のための協奏曲(1947)に、クラリネット、ハープと弦楽オーケストラのためのパストラルと変奏(1945/1962)、声または楽器と12の弦楽器のための3つの無言歌(1952)、弦楽のための音楽(1955/56)という4作品。弦楽のための、と謳いつつ、多彩なソリストたちが色を添え印象的な作品が取り上げられる。
いや、思いの外、魅力的で、驚いた(これまで、ベン・ハイムをちゃんと聴いてこなかったこと、ここに告白します。反省... )!ドイツ仕込みのしっかりとした擬古典主義をきっちり踏襲しながら、そこに、ユダヤ風(パストラルと変奏のクラリネットは、クレズマーっぽさ見せる!)、時にはオリエント調の香り付けをして、めちゃくちゃセンスを感じさせる!安易なエキゾティシズムで、お茶を濁さない、この絶妙さ、他に探せないかも... 何より、その上質な擬古典主義であります!フランスの擬古典主義のお洒落な雰囲気とは違う、確かな洗練、作曲家の腕が光る。いや、秀逸です。
そんなベン・ハイムの音楽をバイエルン・カンマーフィルで聴くのだけれど... いやー、ドイツの実直さと、"室内(カンマー)"という規模が生む軽快さ、絶妙に織り成して、クリアにして、確かな聴き応えを生む!で、ドイツのヴァイオリニスト、アドリアーンの指揮の、無駄の無さが、聴き応えをスーッといなし、瑞々しい洗練を創り出す!そうして、ベン・ハイムの擬古典主義、存分に引き立てる!
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