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10月30日、若き作曲家、若くして逝った、ハンス・ロットの交響曲を改めて見つめる(涙目... )。

ヤクブ・フルシャ率いるバンベルク交響楽団の演奏で、ハンス・ロットの交響曲に、マーラーの「巨人」、改稿でカットされた2楽章、"花の章"、そして、ブルックナーの交響的前奏曲。

ハンス・ロット(1858-84)。
俳優の両親の下、ウィーン近郊で生れたハンス。実は、両親、不倫関係... でもって、母はハプスブルク家の皇族の愛人という... なかなかに複雑な環境で育ったハンス。さらに、母を早くに亡くし、1874年、ウィーン音楽院に入学した年には、舞台上の事故で父が障害を負い、2年後に亡くなり、両親を失ってしまう。それでも、あちこちからの支援(それだけの才能があった!)を受け、学び続けたハンス... ともに学んだマーラー(1860-1911)とは深い友情を結び、師事したブッルクナー(1824-96)からは、様々に後押しもあった。そうした中、1878年、卒業時の作曲コンクールのために書き始められた交響曲。完成したのは、2年後の1880年... 自信満々でウィーン楽壇の中心人物で、師の好敵手、ブラームス(1833-97)のところへ持っていくのだったが、酷評!そして、精神崩壊... 4年後、自ら命を絶ってしまう...

そんなハンス・ロットの交響曲を聴くのだけれど、師、ブルックナーの影響を受けつつ、ブラームスの古典性にも忠実で、ある意味、いいとこ取りな音楽(そこ、ブラームスの気に障った?)。いや、いいとこ取りして、それを2倍で輝かせてしまうのが、若さのなせる業!でもって、若いからこそと言うべきか、とにかくヒロイック!はっきり申しまして、ヤリ過ぎなくらいに... けど、そのヤリ過ぎに、若い作曲家の、自信満々の表情が浮かび、詰め込まれた音楽の思いの丈の熱量に、圧倒されてしまう。それは、まるで、書ける交響曲はこの一曲しかないと言わんばかり... そうしたあたり、中二っぽさもある... が、その中二っぽさにこそ、ハンスの音楽に対するあられもないほどのピュアさが表れている!いや、もう、切な過ぎる...

さて、フルシャ+バンベルク響は、ハンス・ロットの交響曲(1878-80)だけでなく、マーラーの"花の章"(1887-88)に、ロットやマーラーら、ウィーン音楽院の学生たちの課題用に作曲された?ブルックナーの交響的前奏曲(1876)も取り上げて、これがまた興味深い。ブルックナーから学び書かれたハンス・ロットの交響曲... その交響曲を、ハンスの死後、まるでネタ帳のように利用(引用... )したマーラー... ブルックナー―ロット―マーラーというラインを浮かび上がらせる妙!ハンスがいた教室の風景が見えてくるよう... 夭折の作曲家の若さの発露!尊し... に留まらず、ブルックナーとマーラーをつなぐ一作として、ハンス・ロットの交響曲を再定義するフルシャ+バンベルク響、その構成に、また熱いものを感じてしまうのです。

一方で、フルシャ+バンベルク響の演奏は、どこか、やさしい... ハンスの若いからこその熱をしっかり吸収し、後期ロマン派の音楽として、思いの外、麗しく響かせる。いや、1楽章、冒頭、トランペットにより滔々と歌われるテーマから、鷲掴みにされる!で、もう、すでに、涙目です。いや、ハンスが育った複雑な環境、短い人生を回顧するような、そんな交響曲に仕上げる、フルシャ+バンベルク響。それは、ナイーヴだった若き作曲家を抱擁し、癒すかのよう...

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