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3月2日、レクイエムとしてのゴルトベルク変奏曲、弦楽三重奏版... 3世紀の時を経ての癒し...

ピリオドの弦楽四重奏団、サラゴン四重奏団が、コロナ禍を経て、新たにサラゴン・トリオとして歩み出す... バッハのゴルトベルク変奏曲、シトコヴェツキーによる名アレンジ、弦楽三重奏版で...
ET'CETERA/KTC1780

ソヴィエト出身で、西側へと亡命(1977)を果たしたヴァイオリニスト、ドミトリー・シトコヴェツキー(b.1954)が、ゴルトベルク変奏曲で伝説となったピアニスト、グールド(1932-82)の死を悼み、オマージュとして生み出した、ゴルトベルク変奏曲、弦楽三重奏版(1984)。今、改めて聴いてみると、追悼のアレンジであったこと、じわっと感じられ... 眠りへと誘うための変奏曲が、弦楽三重奏により奏でられると、レクイエムのように聴こえてくる。ただ美しいアレンジではなかったのだなと、感慨...

という、ゴルトベルク変奏曲、弦楽三重奏版と、コロナ禍、あらゆる活動が停止する中、どう演奏しようか、研究を重ねたというサラゴン・トリオ... ピリオド・アンサンブルとしてバッハはど真ん中のレパートリー... が、アレンジは20世紀というもどかしい状況... 出した結論は、バロック弓を用い、モダン楽器で奏でるというもの。折衷と言ってしまえば、それまでだけれど、ピリオドで培ってきたクリアさと、モダンならではの安定感が結ばれて生まれる、ピュアなやさしいサウンドは、圧倒的!

いや、コロナ禍を経ての境地、だろうか?サラゴン・トリオの演奏は、弦楽だからこその麗しさ、存分に活かし、鍵盤楽器では味わえない美しさ、しっかりと響かせる。が、それだけではない、深いもの、あるいは、大切なものも音に乗せ... 変奏が重ねられるごとに、温かなもの、どっと心の内に流れ込んでくるようで、うるっときてしまう。コロナ禍という未曽有の経験の全て包み込み、悼み、癒すのか... 3世紀の時を経て、また癒しの力を発揮する、バッハの音楽も凄い。

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