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11月1日、崩れゆく時代を"夜"に重ねて... 世紀末から第一次大戦までのウィーンとフランスの歌曲の魅惑!

ベルギーのメッゾ・ソプラノ、コリーヌ・デュティユルが、クナル・ラヒリーのピアノで歌う、シェーンベルクにドビュッシー... 19世紀末から第一次大戦前までのウィーンとフランスの歌曲、"Licht in der Nacht"。

シェーンベルクの4つの歌曲(1899)、ドビュッシーのビリティスの3つの歌(1897-98)、ラヴェルのクレマン・マロの2つの風刺詩(1896-99)、アルマ・マーラーの5つの歌曲(1910)、そして、ブーランジェ姉妹の歌曲... 妹、リリの「反映」(1911)と「もしこれがちっぽけな夢にすぎなかったら」(1914)の間に、姉、ナディアの「暗く果てしない眠り」(1906)を挿み... 最後は、ベルクの4つの歌曲(1910)。いや、秀逸です!選曲、構成、見事!

世紀末のトーンに彩られ、もうたっぷりと幻惑(マーラー―ドビュッシー―ラヴェル)されながら世紀を越えると、ひたひたと仄暗さが忍び寄り(アルマ―ブーランジェ姉妹)、間もなく空気は狂い出す(ベルク)のか... そう、第一次大戦(1914-18)は、目前... という風に時代の流れを見事に捉える、"Licht in der Nacht"、夜の光。夜の雰囲気でしっかりと魅惑しつつ、空気の変化を鋭敏に表現する... いや、この2つを両立できていることに、感服。

いや、ウィーンに、フランスに、後期ロマン主義から印象主義、表現主義まで、しなやかに、多彩な作曲家たちの幅のあるスタイルに対応できてしまう、デュティユル、凄いです。で、その幅をまったく意識させることなく、ナチュラルに全体をつないでしまう妙!それを適える、甘やかにして、ただならなさも漂わす、そのメッゾ・ソプラノの魔法!崩れゆく時代を"夜"に重ねて、ある種のメルヘンに昇華... 魅了されるしかない...

そんなデュティユルの"夜"をより引き立てるラヒリーのピアノがまたすばらしい!伴奏はもちろんだけれど、途中に挿まれるピアノの小品、ツェムリンスキーの「夕べの声」の澄んだ響き、リリ・ブーランジェの「古い庭園にて」の詩情溢れる佇まい、惹き込まれます。いや、歌だけじゃない、"Licht in der Nacht"!

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