見出し画像

3月15日、シルヴェストロフ、『静寂の歌』、そこから溢れ出す、厭世、止めどなく、揺さぶられるのです。

ピアノのヴィルトゥオーザ、エレーヌ・グリモーが、ドイツのバリトン、コンスタンティン・クリンメルとともに、ウクライナを代表する作曲家、シルヴェストロフのソヴィエト時代の作品、『静寂の歌』を取り上げる...
Deutsche Grammophon/4864104

東西冷戦の緊張緩和=デタントの一方で、社会主義の限界が露わとなり始め、閉塞感、深めてゆく、ソヴィエト体制下... 1974年から77年に掛けて作曲された、シルヴェストロフ(b.1937)の『静寂の歌』。"5つの歌"、"11の歌"の2つからなる歌曲集で、ロシア文学を切り拓いた詩人、プーシキン(1799-1837)から、ロシア革命前後を彩った詩人、エセーニン(1895-1925)まで、ロシアの幅広い詩人たちの詩に、キーツ(1795-1821)、シェリー(1792-1822)のイギリスのロマン主義の詩人の詩も歌われる、全16曲。

いや、もう、のっけから、瑞々しいサウンド、うわぁーっと流れ出す!そして、押し流されるような感覚を味わうのです。という『静寂の歌』... 1974年、シルヴェストロフがソ連作曲家同盟から除名された年に書き始められたとのこと... 楽壇からの追放があって、"静寂の歌"、というね... なくらいだから、そこから溢れ出す、厭世、止めどもない。"シルヴェストロフならでは"は、単にシンプルでやさしいのではない、自由の創作が許されなかった状況の重みが生み出すもの... 揺さぶられます。

という『静寂の歌』を、グリモーのピアノ、クリンメル(バリトン)の歌で聴くのだけれど... まず、クリンメルの、クリアにして瑞々しい歌声に魅了される!で、その瑞々しさに浮かぶ、何と言えぬ、憂い... はあ~ ため息... で、グリモーのピアノも瑞々しい!瑞々しさとともに重みを感じさせるタッチが、音楽をより深いものとし、圧倒されさえする。そうして、シルヴェストロフならではのシンプルでやさしい音楽が、深淵を覗くようなただならなさを放ち始める。凄い...

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?