見出し画像

3月21日、うめが香に のっと日の出る 山路かな、ギターが芭蕉の句をなぞる... 不思議、スモルカ・ワールド!

ドイツの異色アンサンブル、アレフ・ギター・カルテットの演奏、デイジー・プレス(ソプラノ)の歌で、チェコの作曲家、スモルカのギター四重奏のための作品集、"Moon on the Sea - Sea in the Moon"。
KAIROS/0022007KAI

マルティン・スモルカ(b.1959)。
東側世界が揺らぎ始める1980年代、プラハ舞台芸術アカデミー音楽舞踊学部で学んだスモルカ... ちょうど、西側の"ゲンダイオンガク"が一揃い出尽くした中、それらにしっかり感化されながら、またそこから独自の道を切り拓いて... ちょっと他では聴けないギター四重奏のための作品集です。スモルカが、ドイツの異色のアンサンブル、アレフ・ギターQと出会い、生み出された、アレンジも含む、4作品... 「うめが香に のっと日の出る 山路かな」や「古池や 蛙飛び込む 水の音」など、松尾芭蕉の句を英語訳で歌う『芭蕉』(2012)、ケージのプリペアド・ピアノの作品、マルセル・デュシャンのための音楽(1947)をギター四重奏用にアレンジ(1998)したもの、李白の「独り敬亭山に座す」をドイツ語訳で歌う『李白の歌』(2020)、そして、ギター四重奏のための8つの小品(1998)が取り上げられる。

いや、芭蕉に李白です。東アジア、フィーチャーなあたり、興味深い!で、ギター四重奏が奏でるサウンド、どこか箏を思わせて... 西洋の楽器から、東洋的な佇まい、引き出す、おもしろさ!さらに、絶妙に取られる"間"が印象的で、西洋とは異なる時間の流れが生み出される。その流れの中に、プレスのイノセンス(座敷童っぽい?)なソプラノが、ポっと浮かび出て、浮世離れした雰囲気を創り出す!また、芭蕉と李白の間に挿まれる、ケージのマルセル・デュシャンのための音楽、ギター四重奏版が、アジアン!ケージらしい脱西洋が、アジア的風情を誘引し... 最後、8つの小品では、三味線を思わせる表情も見せ、不思議な味わいが広がる。

という、"Moon on the Sea - Sea in the Moon"、スモルカの不思議な世界を淡々と響かせる、アレフ・ギターQ!いやー、訥々と、味のあるサウンドを放って、ギターのイメージをスーっと解脱してしまう... 解脱して、広がってゆく、水墨画を思わせる瑞々しい詩情... 西洋の楽器たるギターから思いも掛けない空気が流れ出し、何だか狐に抓まれたかのよう。で、プレス(ソプラノ)のピュアな歌声も相俟って、何かの怪異に遭遇しているかのような気分に... 何だ、この不思議さ!ちょっと他に無い体験を味合わせてくれる。で、この不思議さ、ツボ...

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?