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【10.楽譜のこと🎼】老舗の教本「バイエル」

教本と言えばバイエルと言われるほど今日の日本ではよく知られています。では教本を選択する際に「どのバイエルを選べばいいの?」というくらい様々に出版されているバイエルを紹介いたします。




バイエルってなに?

バイエルとはフェルディナント・バイエル(1803.7.25〜1863.5.14)という作曲家の方が編纂した教則本のことです。明治以降日本に輸入され広まっていきました。以下はバイエルの遺した言葉です。

この本は、はじめてピアノを習う人たちのために、良い奏法が学べるようにできるだけやさしく書かれたものです。特に幼い子供たちにも無理がなく、順序よく進んでいけるように工夫されています。
ピアノ演奏に際してのむずかしい問題は、ここではとりあげられていません。初歩の入門書として、1年か2年の間の教材を集めたものです。
本書のような教則本は、今までにはありませんでした。幼い子供が、先生について学ぶようになるまでの間、音楽に理解あるご両親の入門指導書としても役立つものと思います。
                      フェルディナント・バイエル

引用先:ドレミ楽譜出版社 新・バイエル教本1 「はじめに」より


原書・原著番号による大まかな練習内容

バイエルの原典版と呼ばれる本では106曲(番号がある曲)が収められています。これらの曲を基に拡大・発展させるように校訂された教本や、また効率的に進めるように間引いて練習する形にされた教本、あるいは2〜数巻に分けて編纂されている教本など多種多様なバイエルが存在します。バイエルを幼いお子様が学習するとすれば、106曲を一冊にまとめてしまうのは飽きてしまうでしょう。一冊を数冊に分冊すれば小さな達成感が得られます。バイエルの原書の通り練習するよりも番号を変えて練習することで、ある調性の曲がまとまって練習できることがあります。似たようなテクニックをまとめることも効果が得やすいでしょう。また練習の過程としてヘ音記号が登場するのが比較的遅いので、曲順を変更して早めにヘ音記号を学習するということもメリットと言えます。こういった理由で校訂者がバイエルをもっと現代的に、効率的に、進める為に様々に工夫して出版された結果、実に様々なバイエルが誕生しました。

では実際にどのようなバイエルが出版されているか、実際に私が手にした楽譜をいくつか紹介していきます。(大人の方がはじめてピアノを学習されることを想定してお子様用のバイエルは除外しました)私見ながら特徴をまとめてみましたので参考になさってください。



1.最新バイエルピアノ教則本 応用曲付

  • 原書を基に拡大・発展させている本格派なパターン

  • 1冊、全111ページ

  • 紙鍵盤付き

  • 原書を移調して練習させる曲が出てくる(※1)

  • 原書番号1番に入るまでに丁寧な予備練習がある

  • 音楽用語や解説がクラシックを学習する方向け

  • 新出事項があるときは図や文章での解説があるが、曲そのもののポイント解説のようなものはない

  • 途中で応用曲として馴染みのある曲が挿入されている(※2)

  • 原書番号103番の曲は本書では144番として掲載されているが、変イ長調に移調されており、原調のハ長調の譜面は掲載されていない

  • かなり本格的に学習することができる内容なので学習し続けるには気合いと忍耐力が必要かも

  • 1ページに最大7段のピアノ譜の記載となっている

※1  原書番号17・18番→ヘ長調、19・20番→ト長調、21・22番→変ロ長調
     23・24番→ニ長調、25・26番→変ホ長調、27・28番→イ長調、
     29番→変イ長調、30・31番→ホ長調 に移調されている
※2  短い童謡のような曲もいくつかあるが、巻末の応用曲として「半音階のポルカ」「エリーゼのために」「アザリアポルカ」が掲載されている



2.新訂バイエル・ピアノ教則本

  • 原書を程よく踏襲しているパターン

  • 1冊、全96ページ

  • 楽譜や音符に関する知識を4ページに渡り詳しく解説している

  • 原書番号1番に入るまでに丁寧な予備練習がある

  • 新出事項は短い文章で解説している

  • いわゆる一般的なバイエルとなっているので誰が使用しても問題なく進められる

  • 巻末の付録部分で2オクターブ分の右手、左手、両手の指の練習があり、付録3では併用曲集として22曲が掲載されている

  • 1ページに最大7段のピアノ譜の記載となっている




3.おとなのためのバイエル教本

  • 原書を効率的に間引いているパターン(※3)

  • 1冊、全87ページ

  • 原書番号通りではなく比較的簡単なものから、テクニックが似通ったもの、調性が同じものなどをまとめて効率的に並べ替えられている

  • 新出事項は短い文章で説明されている

  • コードネームの理解と伴奏付けの実践を目的としているので和音の解説ではコードが多用されている

  • コードの理解の為、伴奏付けの練習という項目があり、練習曲の一部で譜面上に音符が記載されていない部分がある。その部分の和音は各自で記譜するか実際に演奏するなどしてコード奏が出来るように促している

  • レパートリー的な応用曲としてスタンダードなナンバーが用意されているが、その中で弾き語りの練習ができるような楽譜が3曲ある

  • ポップス系の曲を演奏したい方に向いていると思われる

  • 1ページに最大6段のピアノ譜の記載となっている

※3 全106曲中45曲が取り扱われている




4.おとなのバイエル・ピアノ・レッスン

  • 原書を効率的に間引いているパターン(※4)

  • 1冊、全85ページ

  • 新出事項の場合はかなり大きめに図解されているが、文章による説明は少なめ

  • レパートリー的な応用曲は一切ない

  • 全体的にシンプルで見やすい

  • ピアノ以外の楽器などの経験者で楽譜の見方が理解できている方に向いている

  • 1ページに最大6段のピアノ譜の記載となっているが、6段のページは3曲のみなので大半が4,5段となっている

※4 全106曲中44曲が取り扱われている




5.新・バイエル教本1、2

  • 原書をほぼ踏襲している正統派なパターン

  • 1 巻、全89パージ(原書番号43番まで)2巻、全91ページ(原書番号44番〜106番まで)

  • 図解されている部分はほとんどなく文章での説明も少ない

  • レパートリー的な応用曲は3曲のみ

  • ピアノ以外の楽器などの経験者で楽譜の見方が理解できている方に向いている

  • 1巻は1ページ最大4段のピアノ譜、2巻は原書番号102〜104番のみが1ページ最大6段のピアノ譜の記載となっており、大半は4〜5段のピアノ譜の記載となっている




6.子供から大人まで スピード・バイエル1、2、3

  • 曲数を省略するのではなく、曲の長さを短くするパターン

  • 1巻、全55ページ(原書43番まで)2巻、全55ページ(原書44番〜82番)3巻、全53ページ(原書83番〜106番)

  • 原書番号8番以降で曲の長さが8〜16小節ほどに短くなっている(※5)

  • 新出事項は大きめの図解の場合(主に音符や休符の長さ・リズム)と短めの文章による説明の場合がある

  • とにかくバイエルをやっておきたい方、他の教本を学習しているが併用教本として利用したい方に向いていると思われる

  • 1巻、1ページ最大4段のピアノ譜、2巻、1ページ最大6段(原書44番のみ)のピアノ譜、3巻、1ページ最大5段のピアノ譜の記載となっている

  • レパートリー的な応用曲は3巻の巻末に2曲(ベートーヴェン:トルコ行進曲、エリーゼのために)があるのみ

※5 A-A’-B-A’の形式のような場合、A-A’のように短くされている



7.これならひとりでマスターできる!大人のための独習バイエル上・下巻

  • 痒い所に手が届くほど独習者にやさしい正統派なパターン

  • 上巻、全73ページ(原書43番まで)下巻、全101ページ(原書44番〜106番)

  • ワンポイントのアドバイスや練習へのアドバイスが丁寧にされている

  • 楽典(音楽の決まりごと)の知識も充実している

  • 独習者のための本書なので指導者用伴奏譜は省略されている

  • 付属のDVDには、特に注意したいポイントと参考演奏を、曲を抜粋して収録されている

  • コラムの中でピアノや音楽全般についてや、ミニ知識がまとめられている

  • 弾ける!、弾いてみようという見出しで13曲のレパートリー的な曲が掲載されている

  • 上巻、1ページ最大4段のピアノ譜、下巻、1ページ最大5段のピアノ譜の記載となっている

  • 独習者の方が学習するのに特化しているのでこの2巻を徹底的に学習されるとかなり上達できると思われる

  • DVD付でない楽譜もある



最後に

7種類のバイエルを紹介いたしましたが、皆さんの目的に沿った楽譜はございましたでしょうか?ここでは紹介しなかった他の出版社のバイエルも多々ございますので、是非楽器店などに行かれて実際の楽譜をご覧になってみてください。
今回の記事ではバイエルを取り上げましたが、その他の教本もございますので次回以降で紹介いたします。今回も最後までお読みいただきありがとうございました。次回もよろしくお願いします🙇‍♀️

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