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変化を受け入れ学び続ける(その4)

論文執筆には様々な情報収集をすることになると思います。ここでは、研究活動中の情報整理の方法について書きます。

大学院での研究活動ですので研究内容については指導教員の先生に十分にご指導いただけると思います。ところが、そこに至るまでの情報整理の方法のまとまった情報は示されないのではないかと思います。大学(学部生)時代に身に着けている方は別として、意外と困る点なのかな、と感じました。
私自身は大学院入学前にも論文は数本書いておりましたが、今思えば、情報整理はかなり自己流だったように思います。今回、大学院での研究活動を通して自分なりに整理できた部分があるので共有することにしました。

先行文献はどうやって探すの?

研究テーマが決まると、問題意識を整理したり、研究デザインを精査したりしますね。そして、先行文献の調査は論文展開においてベースとなる重要な位置づけとなります。
長年研究をしている方であれば、今回確認すべき文献がどんなものか悩まずともつかめるところですが、初心者にとっては、どの範囲で文献調査をすべきか、どうやって検索をするのか、ということさえ悩みとなる可能性があります。

重要な点として、自分の研究テーマや研究上の問いに対して意味のある文献を見つけましょう。社会人論文にありがちなのが、著名な書籍や著名な先生の書かれた論文を参考文献に挙げるケースです。流石に本文中で参照していない文献を掲載するケースは論外として、当該論文おけるその参考文献の位置付けが不明瞭なケースは良く見かけます。
また、参照する文献は、アカデミックに価値があるものを選ぶ必要があります。研究は、先人の証明した内容をベースに新たな知見を加える、あるいは、異論を唱える活動だからです。

それから、この記事の目的から外れますが、基本中の基本として、『参考文献の引用は正しく表記する』ことが必要ですね。対象の研究分野の引用ルールを確認しておきましょう。

媒体の多様化が進んでいますが、日本国内の文献であれば、書籍はWebcat Plusで、論文はCiNii Articlesでキーワード検索で見つけることができます。また、国内の出版物はすべて国立国会図書館に保管されています(納本制度)。オンラインサービスも充実していますので、大学図書館以外の場所として覚えておくと良いと思います。
海外文献の調査には、エルゼビア社提供のScience Directが使えます。査読済み文献データベースScopusでは引用文献や参考文献の情報も知ることができ効率的に良い文献にたどり着けます。ご自身の研究領域でメジャーな文献データベースを確認するのが良いでしょう。

大学図書館では、OPAC(Online Public Access Catalog:オーパックと読みます)というオンライン蔵書目録の提供しています。まずは、文献タイトル(Title)や抄録(Abstract)からあたりを付け、読むべき、後で読む候補、など分類して、自らの研究にとって意味を考えながらじっくり読むべき文献を絞り込んでいくのがお薦めです。

ところで、文献全文をインターネット上から入手可能なものがありますが、課金発生する文献もあります(大体、1本3000円程度です)。所属する大学の図書館サービスを確認してみましょう。この課金を大学で負担してくれるありがたいサービスがあるかもしれません(例えば、10本ダウンロードしたら3万円、100本ダウンロードしたら30万円にもなります。ありがたいサービスは活用するべし、ですね)。
ただし、論文課金に関しては、いろいろ動きのあるところなので、最新情報を確認してください。大学や研究所などの組織としての課金方式(データベース管理会社との契約と学生や所属メンバーへのサービス提供内容)が見直されたりしています。
また、著者負担型は著作側がお金を払ってジャーナル掲載し閲覧者はフリーアクセスになりますが、広告や読者勧誘目的のオープンアクセスジャーナルもあります。

さらに、最新の文献を見逃さない方法も考えましょう。
自分が研究を進めている間に他の研究者が新しい文献を発表しているかもしれません。論文を書き終わった時点で新規性が無くなるリスク対策として、気になるジャーナルやキーワードを登録しておくこともお薦めします。論文公開時の通知メールを受け取ることができるので便利なサービスだと思います。

文献の整理はどうしたら良いの?

さて、文献は見つけた、パソコンにPDFをたくさんダウンロードした。この状態で研究を進めると、いざ論文執筆となった際に思わぬところで時間を費やすことになります。論文内では先行研究で言及されている内容を記載する際には引用であることを明示する必要があり、どの文献の引用であるかを、論文最後の参考文献(References)に掲載する必要がありますね(一応、確認です)。

文献情報の整理をするRefWorksのようなツールを使ったり、Excelのような表計算ソフトでまとめるだけでも良いと思います。
私の場合はここ2年間の研究活動中に参照した文献(200本程度)については、MS Excelで一覧表を作成し管理していました。RefWorkは文献検索結果の一時的な保管場所として使用したり、参考文献リスト用の情報作成(参考文献の記載方法は、学会、ジャーナルによってフォーマットが決まっていますが、RefWorkで形式を選択すると出力してくれます)に利用するなどの使い方でした。
Excelの一覧表の項目は、以下のようなものです。一例ですが参考にしてください。
通し番号(No.)/出版年・発行年(Year)/著者(Author)/書籍・文献のタイトル(Title)/出版社・論文掲載誌(Source)/何を明らかにしようとしている文献であるか(to be clarified)/抄録(Abstrat)/自分のメモ(Comment)

『ひらめき』はふとした瞬間に・・・

計画的に論文執筆を進めようと思っても、なかなか、うまくはいかないものです。社会人学生にアクシデントはつきものなので、焦る必要はありません。そう思って対処すれは良いのです。
仕事は急遽忙しくなり研究時間がしばらくとれなくなったり、時間が開いてしまったりすることもあります。また、ご家庭の事情により、生活リズムに変化が出ることもあります。いつも、思うように決まった時間に研究活動ができるわけでもありません。

とはいえ、頭の中から研究内容が消えることはなく過ごしているのではないでしょうか。きちんと座って机の上で、あるいはパソコンに向かっての研究活動の時間が取れずにいても、ある時ふっと良い考えが浮かぶこともあります。
歯磨き中や電車移動中や入浴中など、調査作業やメモ書きができない状況の時に「これだ!」と思うような『ひらめき』が降りてくることを誰しも経験しているのではないでしょうか。

さすがに、入浴中には難しいのですが、スマホひとつあれば、いったんメモをする、ということは出来そうです。大方の時間は身近なところにスマホを携帯している方は多いのではないでしょうか。
私は思いついたことをメモしたり、Webサイトで見つけた資料を直ぐに保管したりするのにEvernoteを活用しています。Evernoteの機能強化や類似ツールもあると思いますが、単純にメモ用に使っていますので無料サービスの範囲内です。

とにかく気になることはすぐにメモしておき、後日時間がある際にテキスト編集やチェックリスト・色付けなどで整理します。Webページのリンクを貼ることができますし、PDFはファイルでクリップ(保管)されます。時間が無いけれど、気になる記事を見つけた、という時にはこのそのまま保存の方法は有用です。
私の場合は仮記憶装置的な使い方ですので、前述した方法で先行文献を調査し、情報管理をするための補助的な部分として考えています。PC上でEvernoteの情報を参照して”いつもの”情報整理ができたらメモは消去するようにしています。

研究活動にはクラウドサービスが欠かせない

RefWorkやEvernoteのようなクラウドのサービスは、用途に応じた形式での仮記憶装置として活用できる点をお伝えしましたが、もう一つ。

論文執筆は時間をかけて行う作業ですので、PC上での作業を消失してしまったら大変です。PC上でこまめにバックアップを取っておくことはもちろんですが、論文提出の〆切日間近にパソコンさんが故障することを想像してみてください。

怖いですね。。。

区切りの良い版(例えば、XXX章の完成版、指導教員の確認をもらった版、など)は、大学より割り当てられているストレージへ保管したり、クラウドサービスを情報記録装置として利用すると良いでしょう。複数個所に保管しておくことが重要です。Google DriveDropboxなどのクラウドサービスも有料サービスを利用しなくても十分かと思います。

最後に、
ツールをスマートに利用してすき間時間を効率的に利用することは、社会人学生にとって重要なことですが、ツールを使うことが目的にならないようにしましょう。
自分のスタイルに合わせて、研究活動のどの部分をツールで省力化できるのか、と考えると良いと思います。

社会人学生の方の(そうでは無い方にとっても)研究活動のヒントになれば幸いです。

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